研究

理工学部准教授 奥井 学:ジメチルエーテルの燃焼エネルギーで動く人工筋肉を開発

【概 要】

 中央大学理工学部の奥井 学准教授らの研究グループは、燃焼エネルギーを活用した新しい人工筋肉アクチュエータ「HADEC(High-Response Artificial muscle using Dimethyl Ether Combustion)」を開発しました。
従来の空気圧人工筋肉が抱えていた“応答速度の遅さ”という課題を、可燃性ガス「ジメチルエーテル(DME)」*)の燃焼によって解決し、瞬時に大きな力を発揮することに成功しました。HADECは、マッキベン型のゴムチューブ構造にDMEと空気の混合気体を充填し、着火によって急激な内部圧力を生じさせることで収縮運動を生じさせる人工筋肉です。この構造により、補助機構(ラッチやブレーキ)を必要とせず、わずか数ミリ秒で力を発生させることが可能です。DMEはクリーンな燃料としても知られており、ススをほとんど出さず、環境負荷も低いという特長があります。
 実験では、駆動指令から平均約4ミリ秒で力を発生開始し、約40ミリ秒で最大出力に達するという、従来の空気圧システムでは達成困難だった高応答性が確認されました(図1)。HADECは、内径16 mm、長さ120 mmの試作機において約180 Nの力を発揮し、開発した空気圧回路によって10 Hzまでの安定した繰り返し駆動が可能です(図2)。また、高頻度での繰り返し駆動に際しては冷却措置や耐熱性の高い材料の採用すること、適切なインターバルを設けることで安全な運用が可能であることも実証しました。本研究成果は、ソフトロボットの動力源としてだけでなく、介護支援ロボットや建設現場における打音検査装置など、高速・高出力な動作が求められる幅広い分野への応用が期待されます。
 本研究成果は、2025年5月23日(米国東部時間)に国際学術誌 『IEEE Robotics and Automation Letters』のオンライン版に掲載されました。

注)ジメチルエーテル (dimethyl ether : DME)
 DMEは、分子内に酸素を含む含酸素燃料で、常温では無色の気体。完全燃焼しやすく、燃焼時に黒煙や微粒子をほとんど排出しない。また、自然発火温度が350℃と低く、メタン(650℃)と比較して容易に燃焼を開始できることも特徴である。さらに、低圧で液化が可能であり、液体として軽量な容器内で保存・輸送できる利便性を持つことから、エアダスターなどの日用品にも利用されている。

 詳細は、大学ホームページの「プレスリリース」をご覧ください。

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