日本比較法研究所

2015年度 講演会・スタッフセミナー 概要

テーマ:ヨーロッパへの留学案内

 学部生、大学院生向けに、ルクセンブルク大学の紹介とEUに加盟するヨーロッパの大学制度全般の紹介を行った。

テーマ:精神機能の障害に関する日本法と英米法の比較:成年後見、ネグリジェンスおよび憲法の分野における判例研究

 高齢化社会は、認知症を含め、多くの社会問題を生じている。 本講演は、比較法的および学際的研究を通じて、認知症の社会的影響を緩和することを含め高齢化社会への適応を容易にする法の役割を明らかにするものである。

テーマ:EUにおける国境を越えた企業活動と規制

 EUにおける国境を越えた企業活動と規制について、国際企業関係法学科基礎演習の授業時間を利用して講演した。

テーマ:EUの行政法とガバナンス

 発展の著しいEU行政法とEUのガバナンスについて、行政法総論の授業時間を利用して、講演した。

テーマ:EU行政手続法のモデル案―歴史・概念・原則・範囲

 EU行政手続法のモデル案につき、歴史・概念・原則・範囲の観点から講演が行われた。
 EU行政法は、近年、急速に発展し、そのうち、EUの共通法としての行政手続法の制定が講演者等のグループによって欧州議会に提案されている。
 講演では、その内容について説明があり、EU行政手続法の法的性格や制定運動の実態について活発な議論がなされた。

テーマ:Race Judrisprudence of the Robert Court

 Professor Greene spoke about cases related to race that have been decided by the Supreme Court of the United States, during the tenure of Chief Justice Roberts. She said th Ccourt chose not to protect minorities in those cases. 

Examples: 

a) Weakening the Voting Rights Act. In Bartlett v. Strickland, the Court made it more difficult for minorities to challenge legislative districting that divided minority voters into separate districts (in order to prevent them from exercising their collective voting strength together in one district).

b) In Northwest Austin Municipal Utility District No. 1 v. Holder, the Court weakened the application of the Voting Right Act in Texas (where discrimination had occurred in the past). It allowed an exemption for local governments that could show they had never discriminated.

c) In Shelby County v. Holder, the Court struck down part of the Voting Rights Act as unconstitutional. It said that Congress had gone beyond its constitutional power in deciding which states would have to submit their election plans to the federal government in advance of an election.

After the Shelby County decision, about 10 states passed laws that made it difficult for minorities to vote. These changes put the burden on minorities (and the federal government) to prove that a state election law is unconstitutional each time. (Before the Shelby County decision, the assumption was that states that had discriminated in the past had the burden of proving their new plans were constitutional.)

テーマ:Sports Law and Everging Leal Issues in College and Professional Sports

 Professor Greene spoke about the legal status of student athletes and the employment-related claims of professionals. For student athletes, the issues included: oversight of the NCAA for the benefit of colleges and universities; whether student athletes are entitled to labor law rights as workers; whether student athletes are entitled to legal control of their right of publicity and exploitation of the value of their names and images; whether colleges and universities bear legal responsibility for failure to warn student athletes of health dangers of competitive sports (football, in particular). For professional athletes, the issues included: whether sports institutions (such as the NFL) are legally responsible for warning athletes of the health dangers of their employment activities; whether sports institutions (such as the NFL) have a legal responsibility to minimize, or at least reduce, the risks; whether sports institutions (such as the NFL) are legally responsible for health problems that do in fact arise after athletes have ended their playing careers.

テーマ:環境破壊をめぐる親会社の責任

 親子会社間であっても当然子会社の行為について親会社が、無関係、無関心であることは許されない。 親子関係の状態、子会社の行為、及びその影響等を分類しつつ、多様な責任のあり方を分析された。

テーマ:KLM・エールフランスの法的戦略・資金調達戦略

 KLMとエールフランスという文化そのものが異なる航空会社が、大競争時代を乗り切るための、経営戦略をどのように確立していったか、様々な資金調達方法について分析を行なわれた。国境を越えた資金調達は、わが国においても大いに参考になると思われる。

テーマ:国際海洋法裁判所を通じた海洋法の発展

テーマ:イギリスにおける法廷弁論術の歴史的変化

テーマ:韓国刑事法の最近の動向

テーマ:サイバー攻撃の性質の変化:サイバー犯罪とインターネット

 サイバー攻撃の性質の変化とそれに応じた対応の必要性・限界について、技術者の観点からの講演が行われた。

テーマ:2015年労働組合法案―労働組合に対する新批判

 講演は、現在イギリスでも問題となっている保守党政権による2015年労働組合法案(Trade Union Bill 2015)およびそれに伴う他の法案について、その背景・内容・問題点をそれぞれ解説するものであった。 これらの法案の特徴は、①公的部門の労働組合運動を抑圧し、②労働運動の政治的影響を削減させ、③ストライキ以外の労働法上の手段による効果的な組合活動を制限させるという3つの点に集約すること、および労働組合の実体的権利だけでなく、その行使手続をより厳格化するという手続上の規制も図られている。 講演では、同法案がいくつかのILO条約に違反することが指摘されたが、最終的には、裁判所意ではなく、政治的な領域において解決を目指すことが示唆された。
 講演に対する質疑応答において、同法案に労働組合が対抗できない根拠とは何かという質問に対しては、たしかに欧州人権条約において、結社の自由が保障されており、これには判例上ストライキ権を含むものと解されているが、欧州人権裁判所は、イギリス政府からの強い政治的圧力の下にあり、イギリス政府が望まない結論が導かれることはないであろうから、法案が何らかの権利を侵害しているものとして、法的救済を得ることは実際には期待できないから、むしろ労働組合の政治的な圧力が必要とされているというのが、教授の回答であった。
 次に、本法案について、基本権ないし人権の役割をどのような役割を有しているのかという質問に対しては、結局のところ、人権が保障されるのは、その都度の政治的・経済的状況が求めるからであるに過ぎず、裁判所の判断も、そうした政治的・経済的状況に左右されるもので、人権によるものではないと回答された。
 以上の質疑応答のなかで、裁判所への不信からそのような主張にいたるのであれば、一般に法理論を形成することが無意味になってしまうのではないか、政治的な圧力が重要であるというのは一面的ではないのかとの質問が出されたが、経験則に基づく判断しかできない、経験則に照らして、裁判所が法的に満足のいく判断をしてきただろうかを検討すれば、私の主張は理解されるであろうと回答された。

テーマ:国際取引分野における紛争解決と比較法的研究

 法廷弁護士の役割について、一般的に強調される「依頼人」に対する責務の他に「裁判所」に対する「責務」も重要であることを強調された。 とくに、依頼人に不利益な証拠であっても、法廷の前で開示しなければならないというのは、二当事者対審構造のもとでは、重要な責務である。 依頼人に対しては簡潔な説明が必要であるとともに、いくら依頼人に不利な供述であっても、証人尋問では、裁判所をミスリードするような行動をしてはならない、という責務が導かれることが重要である。 法曹養成教育とりわけ法曹倫理において、この二つの責務をどのように調和させるかを教授するのはたいへんな困難が伴うが、この点が法曹養成において最重要な課題である以上、つねにわれわれが考え、工夫していかなければならない。 中央大学はミドルテンプルと関係が深く、法曹養成の点でも、今後ますます交流が発展していくよう期待している。

テーマ:近時における守秘義務の争点

テーマ:アジア諸国における社外取締役の役割

 現在、バウム教授が行っている「アジアにおける社外取締役の研究」の進捗状況を紹介した後、アメリカ法における社外取締役制度の発展について、判例と学術研究の影響を強調した。 しかし、イギリス法では、そのような影響は見られず、むしろ産業界からの要請に応じて、「ベストプラクティス」というソフトロー的発展をしていったことは、アメリカ法と対照的である。その後EUや日本、さらにアジア各国でも、イギリス式の"Comply or Explain"ルールが、会社法改正等によって取り入れられている。 法文化の違いを超えて、実務ベースのソフトロー的発展が共通している点で、比較法研究にとって、きわめて興味深いテーマであることをお話しいただいた。 その後、参加者との間で、社外取締役選任の実務や経営判断における影響力といった問題について、活発な議論がなされた。

テーマ:シンガポールの刑事訴追制度

 シンガポールの刑事訴追制度の概要、特徴、課題について、1時間ほどご講演いただき、その後30分程度質疑応答を行った。シンガポールでは、検察官は捜査には関与せず、追訴のみを担当すること、起訴不起訴に関しては、日本と同様広い裁量を有していること、訴追裁量をいかに規律するかが重要な課題となっていることなどの報告があった。 また、条件付き起訴猶予制度など日本にはない制度も運用されているなどの報告もあり、日本の訴追制度の改善を考える上でも示唆に富む内容の講演であった。
 参加者からは、起訴・不起訴の決定の際の内部的なガイドラインの存在の有無、その内容についてや、条件付き起訴猶予の際の条件となるプログラムの内容について質問が出て、それに対してアミサリンガム教授よりさらに詳しい説明がなされるなど、質疑応答も活発に行われた。

テーマ:ドイツにおける非典型雇用をめぐる近時の展開

 このたびの講演は、パワーポイント資料を用いて行われたが、そのタイトルは、「ドイツにおける非典型雇用と請負自営業者(Aypische Beschäftigung und Selbstӓndige mit Werkvertrӓgen)」とされており、当初の講演テーマに若干の形式上の修正が加えられたものであった。 このような修正から分かるように、本講演では、ドイツにおける、①非典型雇用をめぐる最近の展開と、②そうした展開と密接に関連しているが本来的には雇用労働者ではない請負自営業者の問題が、それぞれ扱われた。 本講演は、具体的な統計的数値を提示して行われたところにも特徴があった。

テーマ:韓国法科大学院の現状と課題

 「韓国のロースクール制度の現状と課題」をテーマに、韓国のロースクール制度の導入の経緯、韓国のロースクール制度の現状、韓国のロースクール制度の課題等について、講演いただいた。
 弁護士試験の合格率が初年度は9割近かったのが、年を経ることに前年までの不合格者の受験により受験者が増加することにより減少している状況などが、具体的な数字を上げた上で説明された。 また、我が国の予備試験がかかえる問題と同様の問題が、司法試験の存続という形で生じていることなどの説明もあり、日韓両国において同種の問題に直面していることも明らかになった。 また、学部時代に法律学を専攻していなかった学生の弁護士試験合格率が、我が国に比べると高い数字を示しているなどの説明もあり、我が国での未修者教育に関して参考になる講演内容もあった。
 講演は日本語で80分間行われ、その後、40分ほど質疑応答が行われた。 ロースクール関係者の参加もあり、我が国との差異についての細部にわたる質問も含め活発な議論が行われた。

テーマ:アジアにおける取引法改革とUNCITRALの役割

 今般の講演会において言及された点は、「比較法(comparative law)」と「統一法(uniform law)」との関係である。 統一法に関する実体規定の構築において推進力を発揮するUNCITRALにおいては、その前提として比較法の理解が極めて重要となっているとしている。 統一法を構築する際に、単にいずれか一国の法体系(モデル)に依拠するわけでも、単純な法移植をするわけでもなく、比較法という「姿勢」の下で実現する方向性は留意すべきであるとする。 もっとも、地域的な統一法の実際の法執行(エンフォースメント)の場面においては、関係各国での司法判断となる。 その意味においては、いかに統一法の理念と解釈運用を「統一的」にマネージメントしていくのかという課題は残されていると言える。

テーマ:日本企業の弁護士が国外で国際仲裁を行うための実務上の留意点

 講演は、前半1時間は、国際仲裁手続きの入門的な解説を行い、学生・留学生にもわかりやすい基礎的講義を行った。 後半1時間は、応用編として実際の実務の仲裁手続きにおいて問題となる重要名事項、最近の動向等を取り上げて講義を行った。 また国連UNCITRALのカステラーニ氏がジュネーブから来日しており、彼が同機関において国際仲裁の担当であったことから、同氏からも20分程度講義を賜った。

テーマ:国際刑事裁判所における裁判手続の現状と課題

 講演者の講演内容は、実際の実務経験に基づくものであり、国際刑事裁判所の目的、構成や機能、適用される手続や規則のみならず、理論と現実の相互作用、実際上の問題とその解決方法等の実態につき理解を深めることができた。 特に、常設的な裁判機関として設立後まもなく、集団殺害罪等の政治的にも極めて難しい事案について直接個人を裁くという歴史的にも前例のない試みであること、また、裁判官の出身国に応じ、司法制度・理論や言語・文化・歴史は異なり、その専門性、職業上の経験も様々であることから、裁判所を円滑に運営し、手続や刊行を定着させていく上で、業務遂行の植野様々な配慮、工夫、努力が必要とされていることが伺われた。
講演出席者には、22大学から准教授及び教授32名、弁護士・官僚等の実務家7名が含まれ、参加者のレベルが極めて高いものとなり、講演者及びそのテーマに関する学界及び実務担当者の強い関心を示すものとなった。 特に、国際法と刑事法の2つの異なる学問領域に誇るテーマであることから、双方の分野の研究者が交流する貴重な機会を提供することともなった。

テーマ:現代国際法の文脈における一帯一路政策

 22日に開催されたスタッフセミナー「現代国際法の文脈における一帯一路政策」においては、従来のWTOとの関係で、一帯一路政策がどのようなスタンダードを設定しうるのか、その政策の成功のために、参加各国間の法律だけでない文化・宗教的な相互理解も必要であるとの立場から、興味深い講演がなされた。 講演の対象とする範囲は広く、大変多岐にわたる有意義名議論ができた。

テーマ:韓国刑事手続における証拠開示制度

 本講演は、韓国の刑事証拠開示制度について、自身の検察官としての経験に基づく紹介と考察を内容とするものである。
まず、検察実務において取り扱われる捜査記録等についての詳細な説明があったあと、証拠目録の開示、証拠開示命令への不服申立てに関連する韓国刑事訴訟法における制度と憲法裁判所の判例等を紹介したのち、主に判例に対する批判的考察が加えられた。
最後に、今後、問題となることとして、E-Discovery制度、公訴提起前の閲覧謄写、閲覧謄写の効率化を指摘し、若干の考察が加えられた。

テーマ:予想医学と法

 生命倫理と法に関する研究会において、「予想医学と法」と題する報告ならびに「承諾の有効性」を取り上げた報告を行った。

テーマ:1.ロボット工学と法 2.過失解釈における民間規格の意義 3.善き刑法とは?

 本学駿河台記念館において「ロボット工学と法」、「過失解釈における民間規格の意義」、ならびに「善き刑法とは?」と題する3つの講演を行った。 当日は多数の参加者を得て活発な議論がなされ、講演会は盛会のうちに終了した。 日本とドイツの学術交流が大いにすすめられたといえよう。 今回の招聘を通して本学との関係も一層深まったことは、大きな収穫であった。