日本比較法研究所

2010年度 講演会・スタッフセミナー 概要

テーマ:アメリカ訴訟手続入門(Erichson Howard)

法科大学院において、アメリカの裁判制度および民事訴訟手続について入門的説明を行い、弁護士の役割・弁論前手続(証拠開示手続)・弁論と証拠法則等の各論点につき、解釈上の問題をとりあげ、日本法との比較を行った。とくに実務的な関心から、活発な質疑応答がなされた。


テーマ:アメリカにおける大規模訴訟形態(Erichson Howard)

トヨタのケースを例に、全米規模で多数提起される民事訴訟が裁判所においてどのように扱われるか、併合・クラスアクション・広域継続訴訟の実務を紹介しつつ、理論上の問題を分析し、参加者と活発な議論が展開された。とくに、訴訟をリードする弁護士の役割、クラスアクションや広域継続訴訟を担当する裁判官の権限、連邦管轄・州管轄の取扱い等について活発な議論が展開され、今後の比較法的研究への示唆を得ることができた。


テーマ:遅れてきた私法法典化―新しいハンガリー民法典(Lajos Vegas) 

Ⅰ はじめに―法典化小史 
Ⅱ 基本的諸問題 
1.21世紀における国家レベルの法典化? 
2.改革のモデル? 
3.一元的アプローチ 
4.EU消費者契約法の体系的編入 
Ⅲ 新民法典の構造 
Ⅳ 制度的新規制の例 
1.一般的人格権 
2.債務不履行の損害賠償 
Ⅴ おわりに


テーマ:危険社会と刑法(柳 仁模)

いわゆる「危険社会論」の興隆が言われる昨今、同説がもたらす刑法的議論への影響について、韓国における社会状況を紹介しつつ、講演者である柳教授の見解が提示された。 これについて、参加者からも発言が得られ、活発な議論が展開された。


テーマ:ヒト胚研究についての刑法的議論(柳 仁模)

臓器移植等、高度に発達した医療技術の実用化の場面において、いわゆる「ヒト胚」の実験使用について、刑法的にこれをどのように枠組み付けるか。 この問題につき、各国の状況、韓国の状況等をとりあげつつ、柳教授の見解が示された。


テーマ:台湾と香港における憲法の過去30年の発展(Albert H.Y. Chen)


テーマ:多文化主義と人権

英国のクィーンズ大学からブライス・ディクソン教授(同大学人権センター所長)と小保方智也講師および韓国の漢陽大学校からパク・チャンウン教授の3人をゲストスピーカーとして招聘した。
本研究テーマは、今日のグローバル化が進行する国際社会において、国際法が各国の固有の文化との関係においてどのような役割を果たしうるのかという側面からの研究に関心を置いている。特に、様々な国や民族に固有の伝統や文化多様性の保護という観点からグローバル化に対する異議が主張されている中で国際法の果たす役割が注目される。ワークショップでは、わが国の外国人の受入れの在り方または在住する外国人との共生社会の実現のためには何が求められているかを、外国からのゲストの報告を交えて考えようとする企画であった。ワークショップの内容については、ニューズレター「ひかくほう」41号において紹介した。


テーマ:最近の韓国の刑事訴訟法の動き(申 東雲)


テーマ:中国における法曹養成制度と近年におけるその改革(李 道剛)


テーマ:企業防衛策に関する日米比較法上の問題(Carl. F. Goodman)

敵対的企業買収に対する標的会社取締役の企業防衛策について、基本的に利益相反が生ずることを理由に、経営判断原則適用のための前提条件について当該取締役に証明責任を負わせるアメリカ判例法理と、そのような主張立証の問題にまったく触れない日本の判例とを比較し、日本の判例に必要な司法審査のあり方についての示唆を明らかにするとともに、そのような違いが生ずる背景、今後の展開についても、参加者と活発な議論が行われ、比較法上の課題を相互に認識できた。


テーマ:オーストラリアの陪審制度(James Stellios)

オーストラリアの刑事陪審制度の現状をふまえ以下の内容で報告を行った。 
Introduction 
Ⅰ The Australian Federal Legal System and Jury Trials 
Ⅱ Criminal Jurisdiction and The Jury System in Australia 
Ⅲ Constitutional Rules for Jury Trials in Australia 
Ⅳ Section 80 The Constitution 
Ⅶ What is the Purpose of a Jury Trial in Australia? 
Conclusion


テーマ:ローマ法における法発見の方法について(Rolf Knütel)


テーマ:Internaionales Unternehmensrecht (Ingo Seanger)


テーマ:Aktuelle Entwicklungen im internaionalen Kaufrecht (Ingo Seanger)


テーマ:Die Herrschaft der Toten über die Leben (Ingo Seanger)


テーマ:ドイツにおける裁判官の倫理(Jan Grotheer)

「裁判官の倫理」というテーマは、決して昨今にわき起こった新しいテーマではない。 それは、たとえば、弁護士や医師といった専門職の場合と同様、古くから問題とされ、様々に議論されてきた。 しかしながら、価値観の多様化といったことも、司法がいわゆる価値観紛争に巻き込まれる可能性を増大させている現在、裁判官の公平・公正性の確保を、各裁判官に委ねておくことには問題がある。 そこで、昨今では、裁判官の行動基準を明らかにし、一方では、各裁判官が問題の所在とその解決の必要を日々確認できるようにし、こうして他方では、公衆の司法にたいする信頼を確保しているとする動きが活発化してきている。
この際問題は、その行動準則の内容をどうするかに止まらず、そのフォームをどのようにするのか、そしてまた、誰がこれを定立するのかという点にもある。 本講演は、国連のグループが作成したモデルと、ドイツで考えられているモデルを対比しながら、議論の材料を提供するものである。


テーマ:フランスの公務員制度改革(Dreyfus Francoise)

最初にフランスの公務員制度の概要、改革の変遷についての説明があり、本題に入った。当日配布されたレジュメは以下のとおり。 
1.ウェーバーモデル 
* 一般公務員制度:カテゴリー、採用、昇進 
* 高級職団 
* 制度の問題点 
2.パラダイムチェンジ 
* 新公共管理:民間的手法の導入 
* 「結果重視の文化」 :職業能力の重視・・・採用方法の変革 
流動性向上措置・・・職団の再編成、契約職員制度 
実施重視・・・新しい評価制度 
* 問題点


テーマ:陪審制度と裁判員制度の比較分析―コモンローの視点から―(Sarah Chen)

本講演は、日本の裁判員制度と香港・アメリカの陪審制度を比較法的に分析するものである。まず、各国の犯罪率・起訴率・有罪率・司法取引の有無について、統計的データを紹介し、憲法上の裁判を受ける権利と陪審制度・裁判員制度との関連を論じた。次に、陪審員・裁判員の構成とそれぞれの職務(事実認定・法適用・量刑など)を比較し、その法的意義について、アメリカでは自由剥奪および刑事処分に対する政治的支持、香港では自由剥奪と更正を目的にするという差異を明らかにした。これに対し、日本の旧制度の下で、刑事裁判の目的は真実発見と更正であるとしていたが、裁判員制度の導入により、民主主義の拡大を目的とするようになった。司法制度改革に対しては抵抗があったと聞くが、この点について実証的な研究が望まれる。さらに、陪審評決に対する上訴可能性や陪審員の守秘義務、自由の取り扱いについての問題点を取り上げ、裁判員制度との詳細な比較分析がなされた。参加者との質疑応答においても、活発な意見交換がなされ、それぞれの国における文化的背景や制度の歴史的発展にまで議論が及び、今後の日米香港における刑事裁判の比較法的研究にとって、たいへん有意義であった。


テーマ:EU法の諸原則と国内司法の発展-EU加盟申請国としてのクロアチアの例(Tajana Josiopvic)


テーマ:憲法と国際条約―フランスにおける死刑廃止の域外効果―(Thierry Renoux)

死刑に関する法制度がどのように変換し、死刑禁止に至ったかを、欧州人権条約、国際人権規約、欧州基本権憲章、欧州人権裁判所判例、フランス憲法改正を通じて考察する。


テーマ:2008年7月の第5共和政憲法改正(Thierry Renoux)

フランスの違憲審査制が従来の法律への審署前の事前審査から、それに加えて法律実施後の事後審査をも含むものに変わった。このことをめぐる憲法改正について論じたもの。


テーマ:中国第12次5カ年計画の主導的戦略(蔡継明)


テーマ:韓国の検事の不合理な不起訴処分に対する規制(金 一權)