研究

理工学術院教授ホーテス・シュテファンら :消えゆく農地、広がる森と都市 ―日本の土地利用・土地被覆変化を国際査読付き論文158本から分析―

<成果のポイント>

・ 日本の土地利用・土地被覆変化を扱った、過去約30年間(1994〜2024年)・158本の国際査読付き論文を分析。
・ 「都市化・土地集約化」と「農地放棄」の2つの対照的な変化が大きく、特に、農地から自然林への転換が年間684 km²と、その逆方向(森林から農地)の約8倍という速さで進行していること解明。
・ この変化は、経済的・人口動態的要因(農村の高齢化・過疎化)を背景に駆動(拡大)。
・ 一方で、農地から市街地への転換も年間78.5 km²の速度で継続しており、沿岸部・都市近郊を中心とした都市・インフラ整備の圧力が依然として強いことも確認。
・ これらの変化は主に経済的・人口統計学的要因によるが、再植林の傾向には政策・制度的要因が強く影響していた。今後、土地利用変化を予測・説明するための高度な空間モデリング導入が急がれる。

 

【概 要】

日本学術振興会外国人特別研究員のJuliano S. H. Houndonougbo※1(ジュリアーノ・セナン・ミ エルマン・ウンドヌグボ)と中央大学理工学部(論文投稿当時)※2教授のStefan Hotes(ホーテス・シュテファン)らの研究グループは、日本における土地利用・土地被覆変化(LULCC: Land use and land cover change)注1)とその主要な変化の軌跡と要因を扱った過去約30年間(1994〜2024年)・158本の国際査読論文を収集し、PRISMAガイドライン注2)に基づくシステマティック・レビューによって定量的に分析しました。
分析の結果、日本におけるLULCCには、「農地放棄」と「都市化・土地集約化」という2つの傾向があると明らかになりました。最も顕著な点は、農地から自然林・二次植生への転換です。この変化は、年間684 km²に達しており、その逆方向(森林から農地への変化)の約8倍という圧倒的な速さで進行しています。この結果は、経済的・人口統計学的要因、具体的には農村部における人口高齢化・過疎化を背景に駆動(拡大)していました。
また、農地から市街地への転換も年間78.5 km²の速度で継続しており、沿岸部・都市近郊を中心とした都市・インフラ整備の圧力が依然として強いことを確認しました。
これらの変化は主に経済的・人口統計学的要因によって駆動されていましたが、再植林の傾向は政策・制度的要因に強く影響されており、戦後の国家的な緑化推進政策が重要な役割を果たしていることも示されました。
今後の研究においては、分析方法や技術的課題を解決するために、将来の土地利用変化を予測・説明するエージェントベースモデルや機械学習など高度な空間モデリングの導入が急がれます。
本研究成果は、2026年3月11日(スイス時間)に国際学術誌『Land』でオンライン公開され、中央大学理工学部(2026年4月1日より理工学術院に改組)とウンドヌグボ博士が所属するベナン共和国のUniversity of Abomey-Calavi(アボメ-カラビ大学注3)学部等とのMOUを基とした共同研究によって生み出されました。

※1 Juliano S. H. Houndonougbo(ジュリアーノ・セナン・ミ エルマン・ウンドヌグボ):現所属はアボメ-カラビ大学。独立行政法人日本学術振興会の外国人研究者招へい事業・ 外国人特別研究員制度を通じて、2023年11月23日~2026年1月22日まで客員研究員として中央大学に在籍。専門は、自然資源管理学、応用生態学。
※2 中央大学理工学部:2026年4月に改組し、現在は、中央大学理工学術院。基幹理工学部・社会理工学部・先進理工学部の3学部構成。


【発表論文】
雑誌名: Land (MDPI)
題名: Three Decades of Land Use and Land Cover Change in Japan (1994–2024): A Systematic Literature Review of Trajectories, Drivers, and Sustainability Implications
著者名:Juliano S. H. Houndonougbo, Stefan Hotes,* Florent Noulèkoun, Sylvanus Mensah, Achille E. Assogbadjo
DOI: 10.3390/land15030448

 

用語解説


注1)土地利用・土地被覆変化(LULCC: Land use and land cover change)
土地利用(Land Use)は、人間がその土地をどのように使っているかを指します。例えば農地、住宅地、工業用地など、人間の目的・活動に着目した分類です。土地被覆(Land Cover)は、その土地の表面を実際に何が覆っているかを指します。森林、草地、水域、コンクリートなど、物理的・生物的な状態に着目した分類です。LULCCは、土地利用・土地被覆が時間の経過とともにどう変わったかを意味します。

注2)PRISMA(Preferred Reporting Items for Systematic reviews and  Meta-Analysis)ガイドライン
 システマティック・レビュー(SR)やメタアナリシス(MA)の報告品質を向上させるために策定された、国際的な報告基準。2009 年に公表されたSRとMAの優先報告項目のステートメント「PRISMA statement」では、SR が行われた理由、著者が行ったこと、および発見したことを透過的に報告できるように設計されている。その後、SR の方法論と用語の進歩により、「PRISMA 2020」ガイドラインとして更新された。これは、研究を特定、選択、評価し、統合する方法の進歩を反映した、新しい報告ガイダンスです。和訳については、下記の参考出典をご参照ください。
参考出典:上岡 洋晴・金子 善博・津谷 喜一郎・中山 健夫・折笠 秀樹、『「PRISMA 2020 声明: システマティック・レビュー報告のための更新版ガイドライン」の解説と日本語訳』、薬理と治療(ライフサイエンス出版)、49(6)、pp.831–842(2021)
 https://www.lifescience.co.jp/yk/jpt_online/PRISMA.html
 https://www.lifescience.co.jp/yk/jpt_online/prisma/j20210831.pdf

注3)University of Abomey-Calavi(アボメ-カラビ大学)
1970年8月21日に南アフリカのベナン共和国にUniversity of Dahomeyとして創設され、1975年にniversity of Benin、2001年に現在の名称へと改称。アボメ-カラビ大学(UAC)のビジョンは、スキルへのアクセスを促進し、起業家精神とイノベーションを育み、人材育成における役割・教育の質・研究の有用性において地域および国際レベルで認知される開発の牽引役として機能する学術的卓越性の拠点となることです。7つの大学センターで構成され、それぞれに複数の学部、スクール、研究機関および講座を設置しています。
中央大学は 2021年9月に駐日ベナン共和国大使館とのMOUを、また、本学理工学部とは2020年7月にUACの農学部・工学部・水学部と機関間協定を結んでいます。2024年5月には、国際ワークショップ「持続可能な発展に関する教育・研究を中心とした日・ベナン交流」を開催しました。


お問い合わせ先


<研究に関すること>            
Stefan Hotes (ホーテス・シュテファン) 
中央大学理工学術院 教授(社会理工学部人間総合理工学科)
お問い合わせフォーム https://c-research.chuo-u.ac.jp/mailform?uid=100003233&lang=ja

<広報に関すること>
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TEL: 03-3817-7423 FAX: 03-3817-1677
E-mail: kkouhou-grp[アット]g.chuo-u.ac.jp ※[アット]を「@」に変換して送信してください。