研究

理工学部助教 李 一帆ら:「水の同位体」を用いて地球の水循環を精密に可視化 ――国際モデル比較プロジェクト WisoMIP による世界初の標準化解析――

※本プレスリリースは、東京大学、千葉大学、中央大学、気象庁気象研究所との共同発表です。

【発表のポイント】

◆気候変動研究の課題の一つとして地球規模での水循環の解明があり、「水の同位体」を指標に大気中の水循環を探る気候モデルが、世界中で複数開発されてきた。
◆各モデルの開発者と連携した大型国際プロジェクトを進め、世界で初めて、同一条件で8つの気候モデルの比較に成功した。その結果、個々のモデルよりも複数のモデルの平均が観測と最もよく一致することが判明した。
◆本成果は、地球の水循環過程の理解を深化させ、気候変動予測・古気候復元・衛星観測の高度化のための基盤データとしての活用が期待される。

【概 要】

 東京大学生産技術研究所の芳村 圭 教授、奉協力研究員、コクワン特任助教、千葉大学環境リモートセンシング研究センターの岡崎淳史准教授、中央大学の李一帆助教、気象庁気象研究所の田上雅浩主任研究員らが参画する国際研究チームは、地球上の水循環を追跡可能な「水の同位体」注1)を組み込んだ気候モデル注2)を用いて、10年以上前に行われたモデル間比較研究よりも規模が格段に拡大した国際モデル比較プロジェクト WisoMIP を実施しました。水の同位体とは、地球上の全ての水に僅かに含まれる「見えない水の色」のようなものであり、過去の気候変動の原因解明や将来予測の高精度化のための最重要の手がかりのひとつです。本研究では、8つの水同位体気候モデルを同一の再解析データ(ERA5)による風の場で駆動し、地球大気に存在する水同位体比の3次元空間分布の、1979年から2023年までの日々の変遷の様子を再現しました。その結果、単一モデルでは再現が難しかった全球的な水同位体分布が、マルチモデル平均によって高精度に観測と一致することが明らかになりました。本成果は、地球水循環過程の理解を深化させるとともに、気候変動予測・古気候復元・衛星観測の高度化に資する基盤データとしての活用が期待されます。

注1)水の同位体: 水素や酸素の重い同位体である2H(重水素)や18Oを含む水分子のこと。蒸発や凝結といった水の相変化が生じる際に、気体側よりも液体側に、液体側よりも固体側に重い同位体をもつ水分子がより多く分けられるという特徴(同位体分別)により、相変化を伴う地球上の水の循環過程の指標となる。
注2)気候モデル: 地球全体の大気・海洋・陸面・雪氷圏の状態とそれらの相互作用を、力学・熱力学・放射などの物理法則に基づいて数値的に表現したコンピュータプログラム。観測データで検証しながら、過去の気候変動の理解や、温室効果ガスや土地利用変化を仮定した将来予測に用いられている。物理過程や表現方法の違いにより、世界では数十種類の気候モデルが開発されている。

 

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