経済研究所

2019年12月1日(日)開催 公開研究会開催報告 (主催:現代資本主義分析研究会、共催:日本科学者会議東京支部(第20回東京科学シンポジウム))

2019年12月01日

2019年12月1日(日) 公開研究会を開催しました。

【日   時】   2019年12月1日(日)13:15~15:30

【場   所】  多摩キャンパス7号館4階 7412教室

【共通テーマ】 「現代日本資本主義の性格と変革の課題」

【内 容】 鶴田 満彦 客員研究員(中央大学名誉教授)

       「歴史的な岐路の日本資本主義」

      佐久間 英俊 商学部教授(企業研究所研究員)
       「現代日本における流通支配と変革の課題」
   
      野村 康秀 氏(特許庁)
       「成長戦略に組み込まれた科学技術政策のキーワード『イノベーション・
        エコシステム』の狙いと大学・国研の危機」

【要 旨】

 

 第1(鶴田)報告では、日本経済の停滞と格差拡大の実態を踏まえ、高度成長期以来の日本産業・経済の動向と国際関係・世界経済の変容の中での日本資本主義の現状と課題について報告された。とりわけ90年代、バブル崩壊不況からの脱却策としての新自由主義的構造改革の失敗によって、経済停滞と格差・貧困の広がりに直結した。今日の日本経済は、長期停滞の発端となったバブル経済の発端となった米国追随を続けるのか、国民本位の経済への転換か、岐路に立っている。

 第2(佐久間)報告では、グローバル資本主義下の現代日本での格差拡大・消費低迷・低価格志向が深まる中で、いわゆるGAFAを含む商業独占資本の支配による影響とそこからの変革の課題について報告された。日本でも大規模商業資本の独占的利益が拡大し、中小小売業や製造業の利益を圧迫し、卸売市場改革など規制緩和・独占支援的政策もあり地域経済が疲弊している。独占を制限する規制強化・公正取引・地産地消により市民生活優先の流通への転換が図られるべきである。

 第3(野村)報告では、安倍政権の成長戦略に含まれる「統合イノベーション戦略」といわれる科学技術政策の概要を踏まえ、こうした科学技術政策が大学・研究機関に及ぼす影響と課題について報告された。経済危機克服策=成長戦略に含まれる「統合イノベーション戦略」では、企業の国際競争力強化に資するための大学改革・国立研究所改革が打ち出されている。日本の科学技術の現状は、政府・企業とも研究開発費は停滞、大学での基礎研究比率が横ばい、日本企業の研究開発投資の過少であり、「選択と集中」戦略への反省も指摘されている。日本の論文・特許数が停滞する中で、とりわけ企業研究の研究が顕著である。最近の科学技術政策の動きの中では、大学・研究所が営利追求型外部組織の創設・企業との共同出資を可能とさせる動き、人文科学の取り込みやイノベーション創出の目的化をはかる科学技術基本法の見直しの動きが紹介された。こうした動きは、科学技術をイノベーションの下位に置くものとして批判的見解が提示された。

 討議を通じて、新自由主義の定義、日本経済の課題として成長を追求するべきか、設備投資の質の変化、「働き方改革」と科学技術政策との関連、科学技術政策と財政支出との関係、グローバル独占規制のあり方、についての議論が深まった。