Eventイベント

人文科学研究所

人文科学研究所主催公開研究会開催のお知らせ(「英文学と映画」チーム)

日程
2016年6月4日(土)16:00~19:00
場所
政大学市ヶ谷キャンパス ボナソワードタワー5階0501会議室
日程
2016年6月4日(土)16:00~19:00
場所
政大学市ヶ谷キャンパス ボナソワードタワー5階0501会議室
内容

講 師:   末廣 幹 氏 (専修大学 教授)
テーマ:   「ステディカム・ショットによるロング・テイクと 〈見ること〉の前景化
            ――ジョー・ライト監督の『プライドと偏見』と『つぐない』」
         
要 旨:  ジョー・ライト監督の『プライドと偏見』と『つぐない』では、ステディカム・ショットによるロング・テイクが効果的に用いられている。『プライドと偏見』では、ネザーフィールドにおける舞踏会がこの手法で撮られ、カメラは、あたかも小説の語り手のように、さまざまな人物の思いの交錯を映し出すが、その後に挿入されるエリザベスとダーシーがダンスを踊るシーンでは、観察力と洞察力に自負を抱いているエリザベスがダーシーのことを見えていないことが強調される。
『つぐない』では、第二次世界大戦のダイナモ作戦の最中、ロビーが、ダンケルクで地獄のような光景を目撃するシーンがこの手法で撮られている。〈見ること〉と〈語ること〉をメタフィクショナルに主題化する原作小説では、第一部のブライオニーから第二部のロビーへと視点が転換するが、映画では、カメラの視点をロビーのそれに寄り添わせるステディカム・ショットを採用することで、この小説の映像化の際の難題を解決しているようだ。
2つの作品を比較しながら、ライト監督が、技巧を凝らしたカメラ・ワークを通じてどのように〈見ること〉を前景化しているか検討してみたい。


講 師:    小山 太一 客員研究員 (専修大学 教授)
テーマ:    「ジョー・ライト監督の映画『プライドと偏見』お よび『つぐない』」

要 旨:   ジョー・ライト監督の映画『プライドと偏見』および『つぐない』は、それぞれに、大きな家と小さな家を物語の重要なトポスとしてフィーチャーしている。すなわち、『プライドと偏見』においては下級ジェントリ階級の一家庭の住居たるロングボーンから伝統的上流階級の富 (と、エドマンド・バーク流に言えば徳) の象徴たるペンバリーへ、『つぐない』においては上級ブルジョア家庭の住居たるタリス邸からロンドンの下宿/海辺のコテージへという 〈引っ越し〉が物語におけるロマンティック・ラブの (物語内現実/幻想としての) 完成と平行線を描いているのである。エリザベスの場合は経済的上層 (大きな家) への、シーリアの場合は経済的下層 (小さな下宿/コテージ) への〈引っ越し〉が、機能不全の・空虚な行動コードに縛られた家庭からよりよい場所へ彼女らヒロインたちが脱出する契機として表象されていることは興味深い。本発表においては、それらの家 (庭) 表象がヘリテージの概念といかに連関しているかを、原作と対比しつつ探ってみたい。

                                              以 上

 

企画実施名義

人文科学研究所「英文学と映画」研究会チーム