人文科学研究所公開研究会開催のお知らせ（「ルソー研究」チーム）

講 師：飯田 賢穂（イイダ ヨシホ） 氏　（東大・グルノーブル大博士課程修了）

テーマ：『社会契約論』第４編第８章「市民宗教について」の論構造

要 　旨：ジャン＝ジャック・ルソーが『社会契約論』第４編第８章で説明した「市民宗教（religion civile）」は、宗教の政治的役割を考察する上で興味深い概念である。しかし全３５段落からなる同章のうち、わずか３段落のみが「市民宗教」の説明に割り当てられているに過ぎない。そのためルソーがこの概念を使っていったい何を構想していたのかという点については今日においても多くの議論がなされている。一見するとバランスの悪い第８章の論展開の構造を私たちはどのように解することができるだろうか。また、ルソーはこの論展開に基づきつつreligion civileという語でどのようなreligionを構想していたのだろうか。第８章の内在的読解を通じて、これら二つの問いに答えることが本発表の目的である。そのために、先ず同概念に関する近年の代表的研究の主張を確認し、次いで第８章の論展開の構造に関する本論の解釈（修辞的構造）を示す。以上を踏まえて、最後に、「市民宗教」概念に関する本論の考えを示す。具体的にはこの宗教の本質を指す表現である「社会性の感情（sentiments de sociabilité）」に関する解釈を示す。
 

主 催：人文科学研究所共同研究チーム「ルソー研究」