ビジネススクール
イノベーションの実践において、株式会社カミノバ グループホールディングス 代表取締役CEO髙橋進氏による授業内講演を実施
2025年12月19日
2025年12月11日(木)、中央大学ビジネススクール(CBS)MBAプログラム 専門科目「イノベーションの実践」(担当 生稲史彦教授)において、株式会社カミノバ 代表取締役会長の髙橋進氏を招聘し、講演を実施しました。
●概要
アフターマーケット戦略について、作り上げられた過程と背後にあった考え方を含めて、説明して下さいました。生産財のビジネスでは、自社の利益だけではなく、顧客に取っても「使用の信頼性」を高めることが重要であり、その手段としてICTが利用できることを、KOMTRAXと農業機械の事例に基づきながら理解する機会となりました。さらに、AIなどのICT利用が進む中で、製造業や農業などの分野でどのような取り組みなのかを考える機会にもなりました。受講生との質疑応答も活発に行われ、アフターマーケット戦略の応用可能性を考える充実した時間になりました。
●受講生の感想(一部抜粋)
・髙橋様の実際に体験された話に説得力があり、どのようにイノベーションを起こされたのかが良く理解出来ました。
・先生のお話の熱量がとても印象的で、幾多の時代を乗り越えてこられた経営者としての暗黙知に深く触れた時間でした。
・新規事業や新しい技術ではなく、アフターマーケットに着目するという方法もひとつのイノベーションといえると知ることはできたから
・アフターマーケットと言う考え方を作るにあたり、「消費材ではなく生産材を作っている」と考えを転換をする部分がとても学びになりました。この発想の転換が出来るようで出来ないもので、イノベーションの入り口だと感じる事が出来ました。
・自業界との違いなどを考えながら気づきを得られたことや、髙橋様と自社に接点があったことなども分かり非常に満足度が高かったです。
・単なる経営理論の解説にとどまらず、世界トップクラスの製造業であるコマツが、実際にどのようにして「不況に負けない高収益体質」を作り上げたのか、その裏側にある「生々しい数字」と「再現可能な経営ロジック」が惜しみなく公開して頂き、とても満足できました。
・髙橋様のコマツでの実体験からの話だった事で、とても実感の湧く講義でした。また、「アフターマーケット」は今まで深く考えたことが無かったので、自社に照らし合わせた時に何が起こせるのかを考える機会となり新たな学びとなりました。
・製造業におけるアフターマーケットが単なる修理対応(コストセンター)ではなく、企業の収益を支える重要な柱であることを、コマツの具体的な数値や事例を通じて論理的に学ぶことができたため 。特にリーマンショック時など、新車販売が低迷する中でも部品・サービス事業が経営を支えたという事実は非常に説得力がありました。
・コマツのアフターサービス事業におけるKomtraxは非常に有名ですが、その事業に直接携わった責任者の方から話を聞けたことは貴重な経験でした。製品販売に劣らず、アフターサービスが事業として収益を生む構造を理解できた点は大きな学びです。自社もメーカーとしてサービスは販売店が担っており、収益面で厳しい状況にあるため、どのように見直すべきかを考えるうえで参考になりました。
・製造業におけるアフターマーケットを「製品販売後の付随業務」ではなく、「企業収益を支える中核的な事業領域」として体系的に整理されていた点です。生産財のサプライチェーンにおいてアフターマーケットが長年欠落してきた背景と、その結果としての収益構造の歪みが明確に示されており、理解が深まりました。
・製造業については、現職で関連する機会が少ない業種でしたが、製造をして既存のマーケットに売るだけではなく、アフターマーケットというあたらしいマーケットにたいして、IoTなどの技術を用いられ成長されたプロセスをお伺いしました。製造業のイノベーションのプロセスの理解と、業種を問わずに、汎用的に活かせる内容があるかという観点で、講義を聞かせていただきました。
・製造業という全く知らない業界のお話を伺うことが非常に勉強になりました。
アフターサービスのマーケットは、その当時の最先端の技術を使って、いわゆる暗黙知を形式知化する作業を回し続けている歴史と感じました。
一方で、そこにどのように人が関わっていくかを試行錯誤した歴史であるとも感じました。
さらに、盗難防止や修理効率化などの情報収集の本来目的と異なる方向に情報を活用する視点の転換に面白みがあるとも感じました。
・本日は貴重なご講演、誠にありがとうございました。「なぜ自動車業界はコマツのような収益性の高いアフターマーケット・ビジネスモデルを展開できないのか」という疑問が解消され、大変納得いたしました。髙橋様から、自動車が「耐久消費財」に分類され、車検制度という「国による保護」が存在することで、メーカーや販売店が自ら「使用の信頼性」を追求し、それを収益の柱とする文化を築く必要性が低かったという構造的な違いをご説明いただき、理解が深まりました。また、建設機械には中古市場がある中、KOMTRAXを標準搭載し、機械の稼働状況や位置情報、エラーコードなどを遠隔で「号機管理」することで、ダウンタイム削減だけでなく、機械のライフサイクル全体を通じて顧客価値を最大化し、バリューチェーンビジネスを確立されている具体例を拝聴し、大変勉強になりました。さらに、単なる修理ではなく、メーカー基準に基づく「定期整備への文化転換」を推進されている点や、使用済み部品を再生するリマニュファクチャリング事業を展開されている点 は、資源循環やサーキュラーエコノミーが世界的に重要視される現代において、コマツのアフターマーケット注力戦略が、他社との強固な差別化と安定的なプロフィットセンター化を実現する中核であることを強く感じました。大変示唆に富むご講演でした。ありがとうございました。
●CBSについてもっと知りたい方へ
CBSで開講されている「イノベーションの実践」では、理論だけでは捉えきれないイノベーションに関する実践知(のピース)を獲得し、現実的な「勘どころ」をつかむことを目指しています。加えて、講義で得た情報や知見をきっかけにし、履修者自身がイノベーションへの関与を増すよう勇気づけることを狙って、イノベーションの実践者を招聘しています。理論と実践の架橋教育であるビジネススクールならではの、理論と実践を積極的に結びつける試みです。
CBSのカリキュラムの全体像は、以下のリンクをご覧ください。
https://www.chuo-u.ac.jp/academics/pro_graduateschool/business/mba/
また、2025年度のシラバス(各科目の詳細)については、こちらをご覧ください。
https://www.chuo-u.ac.jp/academics/pro_graduateschool/business/info/class/#mba_syllabus