ビジネススクール

研究科長から令和4年4月入学生へのお祝いメッセージ

2022年04月10日

令和4年入学者への祝辞

みなさん、中央大学ビジネススクールへのご入学おめでとうございます。入学に際して、みなさんを励まし、背中を押し、支えてくださっているご家族・ご友人・パートナー・職場関係者のみなさまにも、心からのお慶びを申し上げます。今日こうしてこの場に一同に会して、みなさんの入学式を挙行できること、準備を整えてくださったすべての関係者の皆様に感謝したいと思います。

中央大学ビジネススクールは、2008年に設立され、この4月で15年目を迎えます。この間で入学式を開催できなかったのは2回あります。東日本大震災の起こった2011年と新型コロナ禍に見舞われた2020年です。この2年間、世界ではこの未知のウイルスのために、人と人との接触や行動が制限され、社会や経済に大きな混乱と不安をもたらしてきました。みなさんも、職場やご家庭で、今までにないご苦労をされてきたとお察しします。このような状況のなかで、CBSに入学することを決断されたみなさんの勇気と学ぶ意欲に心より敬意を表します。 

CBSでは2年前の最初の緊急事態宣言後、5月の連休明けから、オンライン双方向で授業開始しました。そして、在学生の協力を得て実証実験を積み重ねた結果、9月末から一部対面授業も開始しました。しかし、対面で実施しようとした多くの授業やセミナーも、直前になってオンラインに切り替えざるを得ないことがほとんどでした。従来、CBSの授業では、グループワークやディスカッションが頻繁に行われ、対面で受講生同士が対峙することで学習効果が高まります。オンライン授業にも数々のメリットはありますが、対面での教育効果に及ばない部分もあり、全面オンラインの授業を続ける意思決定をすることは、教員としては残念で悔しい思いでいっぱいでした。この4月からは、2年間の試行錯誤から学んだことを活かし、平日は通いやすさを優先したオンライン授業、土日は学生相互のディスカッションを中心にした対面授業が始まります。この試みは、われわれCBSの新しいチャレンジです。

 CBSのミッションは、ユニバーシティメッセージでもある「行動する知性」、すなわち、変化の時代を先導するチェンジリーダーの育成です。そして、チェンジリーダーに必要な能力として、7つの力を具体的にあげています。この7つの力は、必ずしも豊富な知識を蓄えることだけで達成できるものではありません。学んだことを職場で実践して、そこでの結果を振り返る、アクションアンドリフレクションによって達成されます。キックオフセミナーで、多くのみなさんが新しい知識を身につけたい、人を説得できるロジックを身に着けたいという目標をかかげていましたが、それだけは十分ではないのです。ビジネススクールでは最新の知識やロジックを教授すると思われがちですが、それを現場でいかに使うか、いかに目的・目標を共有して周りを巻き込み、実践に結び付けられるかが、より重要です。今後のMBAホルダーには、まさにこの「行動する知性」が求められているとわれわれは考えています。

 「行動する知性」の第一歩は、まずは「自分を変える」こと。それではどうすれば自分を変えることができるのか?CBSでは、まずは行動の変化を促します。小さなことでいいから、今までとは違う言動を自らとってほしいのです。みなさんの小さな変化から、波紋のように職場の変化が生まれます。なぜなら、みなさんの行動の変化によって、職場の関係性が変わるからです。このことの実例をお話ししましょう。

これは、みなさんの先輩が経験した実際の話です。その方は自分で会社を経営しています。30歳を過ぎてから自分で立ち上げた会社です。CBSに入学して受けた授業で、「何か日常の行動を変えてください」と言われ、毎朝、社員の顔をみて「おはよう」と挨拶することにしたというのです。今までは、社員が「おはようございます」と挨拶しても、パソコンに向かったまま生返事をするだけ。それが、顔をあげてちゃんと相手の顔をみて「おはよう」と言うようになった。そうしたら、社員が話しかけてくるようになり、そういう社員を集めてCBSで出た課題の話や授業で習ったことを共有するようになって、職場の雰囲気が変わっていったと言います。そして最近になって「先生、すごいことが起こっています。うちの会社、今年の3月期は最高益です!」と報告してくれたのです。そんな小さな行動の変化で、最高益というのは出き過ぎと思われるかもしれませんが、これは本当の話です。 

われわれは変化を起こそうとするときに、自分のことは棚に上げて相手を変えようとします。でも人を変えることは簡単ではありません。できるのは自分を変えることだけです。みなさんの先輩は、意識して小さな行動の変化を起こしました。そして、その小さな変化がきっかけになって、大きな変化が生まれていったのです。

みなさんは、今のような何が起こるか先行き不透明な状況であるからこそ、自分のいた世界からいったん抜け出して、CBSという場に身をおいてみようと思ったのではないでしょうか?CBSに集う、多様な視点・多様な価値観と触れ合うことで、きっと新しい気づきがあります。しかし、チェンジリーダーに必要な本当の変化とは、自分自身を変えることです。それは小さな行動の変化から始まります。それが波紋のように広がって大きな変化へと結びつきます。組織を変えようと思わなくても、組織が変わっていくのです。このような変化を生み出す原動力になることが、「行動する知性」=チェンジリーダーとしての入り口に立つということです。どうぞこれからの2年間の自分自身の変化を大いに期待してください。

最後に、みなさんにお願いしたいことが一つあります。われわれは、互いに学びあうコミュニティです。みなさんにも「単なる教育サービスの受け手」ではなく、一緒によりよい学びの場をつくることに協力してほしいのです。みなさんを、共に学びあう「仲間」としてお迎えしたいと思います。

さあ、今日から新しい学びの始まりです。CBSへようこそ!
 

令和4年4月3日 

中央大学大学院戦略経営研究科 研究科長 露木恵美子