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研究科長から令和3年3月修了生へのお祝いメッセージ

2021年03月21日

  研究科長祝辞

 みなさん、本日は、修了おめでとうございます。みなさんをお支えくださったご家族・ご友人・関係者のみなさまにも、心からのお慶びを申し上げます。
 みなさんにとってこの特別な日を、一緒に過ごすことができることを、本当にうれしく思います。
 さて、2年前の入学式の日を思い出してみてください。あの時のご自分の思い、何が起こるかという期待や、本当に続けられるかという不安などが入り混じった、それでいて、前向きで明るいワクワクした気持ちを。それから2年が経ちました。アッという間だったと思う方も、長かったなと思う方もいらっしゃると思います。たぶん、みなさんに共通しているのは、本当に大変だったという思いと、やり切ったという充実感であり、2年前には想像しなかった新しい自分との出会いだと思います。
 2020年は新型コロナという感染症に全世界が翻弄された年でした。本来であればオリンピックが開催され、華やかな雰囲気であったはずの東京も、人々の感染に対する不安から相互不信が顕在化し、人々がステイホームで引きこもった年でもありました。
 12期のみなさんは、最初の1年間は対面授業が中心のCBS生活を送りました。そして2年目は、オンライン中心の1年になりました。それでみなさんが得たもの、失ったものはなんでしょうか?
 今振り返ってみると、私は、みなさんが得たものはたくさんあったけれど、失ったものはほとんどなかったのではないかと思います。みなさんは、コロナ禍での新しい働き方の可能性と限界を知り、CBSで学ぶことの意味を考え直し、そして、CBSを修了してからの自分自身の生き方を深く再考したと思います。コロナ禍は人々の内省=リフレクションを促しました。今まで忙しい日々にまぎれて置き去りにしてきた「大切なこと」に気づいたものも、新型コロナ禍のおかげだったかもしれません。人と人との出会いや、人と人の中で揉まれることで得た自分自身の成長も、コロナ禍でそれが「日常ではなくなったからこそ」気づいた大切なものであったと思います。
 新型コロナは20世紀に築かれた文明社会への大きな警告です。自然の営みを無視して開発を進めてきた結果が、新しい感染症の蔓延であったと考えれば、われわれは、今までの生活や経済のあり方を根本的に見直さなければならない時期に来ているといえるでしょう。地球温暖化も世界的な格差の問題も、ネットワーク化された社会におけるSNSによる犯罪も、新型コロナの急速な世界への拡大も、すべては、われわれが盲目的に利便性や自己の利益を追求し、グローバル化を進めてきた結果でもあるのです。
 これからの経営者には、自己中心性から抜け出した場所中心性と表現すべき、地球的な観点、言い換えれば、われわれが「生かされている場所」を謙虚に意識し、常にその制約から自由ではないということを肝に銘じる姿勢が求められます。
 そこで問われるのが、われわれはどのような未来を作りたいかという大きな課題です。 それはみなさん一人一人に対する問いかけです。その未来はみなさんの夢や野望のなかにあります。私はCBSの修了生には、「誰のために」、「何のために」をよく考えたうえで、自分の意志で決定する本当の戦略経営リーダーであってほしいと願います。そして、みなさんの選択は、今までの延長線上にあるものではなく、今の大きな変化の中から新たにつかみ取るものであるとも思います。そこでこそ、自分を変え、組織を変え、社会を変えるチェンジリーダーの真価が問われます。
 新型コロナウイルスによる社会不安は、これからもしばらく続くと思いますが、その不安は自分たちがどのように生きたいかという「意志」でしか乗り越えることはできません。怖れる気持ちは「行動」でしか克服できません。コロナ禍が過ぎ去っても、今日のこの「思い」、この「感覚」、この「決意」を忘れないでください。
 今日の修了式はみなさんにとっての通過点でありゴールではありません。「行動する知性」、チェンジリーダーとしてのスタートの日です。われわれは、これからも、みなさんが迷った時や羽を休めたくなった時に、いつでも気軽にもどってこられる学びの「場」でありたいと思います。
 みなさん、本日は、修了おめでとうございます。

 

 

 

 

  令和3年3月20日 
  中央大学大学院戦略経営研究科 研究科長 露木恵美子