ビジネススクール

2022年度 ケース企業:株式会社カスミ

フィールドラーニングとは、現実の企業を事例とし、受講生一人一人が経営者の立場に立って課題を発見し、それに対する戦略を構築し、実行するためのアクションプランまで作り上げる実践的なCBSオリジナルのプログラムです。
フィールドラーニングは、伝統的なビジネススクールで行われてきたケース・スタディとは本質的に異なる「学び」を提供しています。

①フィールドラーニングの魅力~受講生・教員・協力企業の体験談「座談会」

実際の企業に赴いて現場の話を聞き、課題抽出・設定を行い、戦略とアクションプランを作り上げるCBSオリジナルの総合科目「フィールドラーニング(戦略1)(戦略2)」。2022年度は、株式会社カスミにご協力をいただき実施いたしました。今回は、その魅力を実際にフィールドラーニングに取り組んだ受講生たちだけではなく、同じグループの一員として戦略立案に取り組んだ株式会社カスミの店長と、担当教員であるCBS遠山亮子教授にも座談会にて語っていただきました。

フィールドラーニング受講生・教員・協力企業の座談会
フィールドラーニング受講生・教員・協力企業の座談会

座談会 参加者プロフィール

【受講生】
  • 小石 祐太朗さん
    エネルギー・素材系企業で、機能化学品の営業・マーケティングに従事。グループの中期経営計画策定も担当。
  • 飯塚 洋平さん
    小売系企業で商品企画をリード。グループとの連携、新規企画立案、MD業務プロセスの改善などを担当。
  • 小野 祥太郎さん
    鉄道・不動産系企業で経理統括、新規事業や大規模開発プロジェクトの投資や収支管理サポートを担当。
【協力企業担当者】
  • 佐々木 康成さん
    2022年度の協力企業、株式会社カスミ「Food Market KASUMI」鹿嶋スタジアム店店長。
【担当教授】
  • 遠山 亮子
    2022年度のフィールドラーニング担当教授。知識創造戦略、イノベーションマネジメント、国際経営が専門。

株式会社カスミについて

北関東一円にスーパーマーケットチェーンを展開する企業。店舗には、新業態「BLANDE」の他、「Food Market KASUMI」、「FOOD SQUARE」、「FOOD OFF ストッカー」がある。オリジナル商品「MiiL(ミール)」や、ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社のプライベートブランド「eatime(イータイム)」を展開する。ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社とは、株式会社マルエツ、株式会社カスミ、マックスバリュ関東株式会社の経営統合により、共同持株会社として設立されたもの。

最終提案「MiiLのコーナー化」を振り返って

絵に描いた餅にならない、実現性の高いプランを目指したお店で検証し、売り上げアップの成果も

(司会※以降略) 私も最終報告会(戦略とアクションプランのプレゼン)の録画を拝見しましたが、グループによって全く異なる提案で驚きました。課題抽出から自分たちで行うのですね。自由度が高いが故に、意見をまとめるのが大変ではなかったですか?

小石:かなり自由度が高い中、私たちのグループは早くから論点を絞ることができていたと思います。お互いに協力しあって話を進めることができ、恵まれていました。

新規事業の提案に特化していたグループもありましたね。皆さんのグループは、経営に関する各分野について広く言及しつつも、カスミオリジナル商品「MiiL(ミール)」にフォーカスされていました。それはどういう経緯で決まったのですか? 飯塚:小売業なので、やはり商品イメージは差別化においても大切ですし、お客さまとの絆を生むものなのではないかと考えました。佐々木店長もMiiLに課題があるとおっしゃっていましたし、プランも具現化しやすいので絞り込んだという感じでしょうか。やはり、成果をしっかり出したいと思っていたので。

小石:絵に描いた餅のような、実現性の低いプランはやめようと話していたんです。アクションプランに落とし込んでいける戦略を意識しよう、という方針がありましたよね。

小野:そうでしたね。あとは、「不採算店舗を閉めよう」といった方向ではなく、「どうやったら商品で価値を出せるか、お客さまに楽しんでいただけるか」といった、ポジティブな点にアプローチした方が楽しく取り組めそうだなと。それも理由の一つかもしれません。

MiiLをコーナー化して販売するという検証をされて、売上アップの成果が出ていましたね。佐々木店長はMiiLの提案についてはいかがでしたか?

佐々木:MiiLは会社の課題でもあり、私自身の課題でもあったんです。お客さまに浸透していない中、皆さんのお知恵を借りながらコーナーで販売し、実際にお客さまから「こういう商品があるんだね」というお声もいただきました。課題はまだまだあるのですが、各店でMiiLのコーナー化が進んでいます。もし今回の発表がコーナー化の後押しになったのであれば、会社にも貢献できたのかなと感じます。

小野:最初は佐々木店長となかなか対面でお会いできなかったのですが、回数を重ねていくうちに、店長の方から「これがいいんじゃないですか」とか、「お店で検証しますか」といった話を積極的にしていただいて感謝しています。

佐々木:お店の中でも、「フィールドラーニングというものに参加させていただきますよ」ということは共有していました。皆さんの力になりたいという思いがあったので、従業員に説明をして、実際に売り場を作って検証しました。

現場でのヒアリングはどのように進めたのですか?

飯塚:まずはお店で実際にMiiLが売られているところを見て、従業員の方々の声を聞き、グループで「こういうことが課題なのではないか」と話し合いました。先生のアドバイスでカスタマージャーニー(※)を作ろうということになり、改めて佐々木店長ご協力のもと従業員の方々にアンケートを取りました。従業員の方々も仕事が終われば一人のお客さまなので。ヒアリングをして、先生にアドバイスをいただき、また現場の声を聞いて…という繰り返しができてよかったと思います。
※顧客が製品・サービスを認知し、購入に至るまでのプロセスを旅に例えたマーケティング用語のこと

佐々木店長のご協力が大きかったんですね。教授は、どのような点に気をつけながらご指導されていましたか?

遠山:具体的な戦略提案と、そのアクションプランにまで落とし込むことが最終目標なので、机上の空論ではないものをどうやって作っていくのかという点ですね。あとは、最後に社長プレゼンをするので、第三者に分かってもらえるプレゼンになっているかどうかです。皆さんいろいろと思いはあるのですが、その思いもきちんと言葉にしないと伝わりません。また、提案に説得力があるかどうかも重要です。アイデアが財務の数値も含めて、どれだけ根拠があって、説得力のある提案になっているかという点にも目を配っていました。

②フィールドラーニングの魅力~座談会その2「半年間の授業を振り返って」

フィールドラーニングの魅力~座談会その2「半年間の授業を振り返って」

「同じ釜の飯を食った仲」で生まれた絆
違う業界の仲間からの学び、違うグループからの学びがあった

(司会※以降略)振り返って、一番大変だったことや楽しかったことは何でしょうか?

小石:大変だったのは、いろいろなアクションプランが出てくる中で、「どういうふうにストーリー立ててアウトプットするか」を考えることですね。ですが、しっかりと1本の戦略の柱を作っていくと、自然と「こういうふうに肉付けしていこう」という話になり、形にすることができました。

小野:楽しかったことは、やはり鹿嶋スタジアム店にお伺いしたことです。佐々木店長の他にも、次長や従業員の方々とお話しさせていただき、MiiLの話や「私だったらこういうやり方をする」といった本音も聞くことができました。現場が抱いている課題感を間近に感じることができて楽しかったですね。戦略に盛り込むべき点につながる内容を聞くことができ、ありがたかったです。

飯塚:半年間同じグループとして一緒に過ごし、「同じ釜の飯を食った仲」という感覚も芽生えてきましたよね。鹿嶋スタジアム店に行った際には、佐々木店長が車で鹿島神宮に連れて行ってくださり、みんなで提案がうまくいくようにお祈りをして、絵馬も書いて(笑)。そういう小さい思い出も含めて楽しかったです。

佐々木:本当はもっと鹿嶋の魅力をお伝えしたかったんですが、時間も限られていたので、由緒正しい神社である鹿島神宮へ行きました。皆さんをお連れしたいなと思っていたんです。 最初は、この授業に参加することを重いものなのかなと想像していました。けれども回数を重ねていくとだんだんと楽しくなって…。今日もそちらに行きたかったのですが、都合がつかなくてオンラインになり残念です。もっと皆さんと話がしたかったですね。

遠山:カスミさんには本当に全面的にご協力をいただきました。他のグループでもアンケート調査をしていただいたり、実験をさせていただいたり。学生からの「こういう情報・データはないか?」といった要望にも最大限応えていただきました。

他のグループの最終提案を見て、どんな感想を持ったのでしょうか?

小石:私たちの考えとは全く異なる提案をされていたグループもあり、非常に勉強になりました。自分ではこういう考え方はしないなという点を、あえて深く掘り下げ、提案にまで落とし込んでいましたよね。

小野:ハードルが高い戦略にチャレンジしていましたよね。どうやってゼロから作り上げるか、どうやったらマネタイズできるかを考えていた点は、非常に勉強になりました。

飯塚:自分だったら絶対に目をつけないところにフォーカスするというのは、違う業界の人たちが集まっているからこそかもしれません。自分が勤めている企業も、フィールドラーニングをしてもらったら、きっと新しい発見があるんだろうな、と思いながら聞いていました。

グループ分けも提案内容に影響しそうですよね。

遠山:グループ分けは私が決めましたが、同じ会社の受講生お二人を別グループにするくらいで、あとはランダムでしたね。皆さんさまざまな業界からいらしているので、どういう組み合わせでも大丈夫だと思っていました。

小石:私は全く小売と関係のない業界なので、その道のプロの飯塚さんがいらっしゃってラッキーだなと思いました(笑)。頭が切れる小野さんも一緒でしたし。

小野:小石さんは本当に優秀な方なので、ロジックやストーリー立てだけでなく、提案する上でこういう展開の方が伝わりやすいとか、いろいろと勉強になってありがたかったです。飯塚さんはもうMDのプロですから、戦略を作る上でこういう観点があってここがポイントであるとか、いろいろなお話を聞けて参考になりました。

飯塚:私はカスミさんと同業他社なので、秘密保持契約を個別に結んだ上で参加させていただきました。小石さんは1年先輩、小野さんは半年先輩ですが、2人ともとてもフレンドリーで、グループの一体感がありましたよね。他のグループの方からも、「優秀な2人がいてラッキーだね」と言われました(笑)。

いろいろな業界の方々が集まっているわけですが、小売業ではない方の意見はどう感じていましたか?

飯塚:私は同じ小売業だからこそ、最初は細かいところに目が行きがちだったんです。ですが、違う業界の方がいるからこそ、広く経営視点で考えることができました。また、「カスミさんのようなケースは、もし小石さんの会社だったらどうだろう、小野さんの会社だったら…」という会話になるので、業界が違うからこそ「なるほど」と思えるところもありましたね。

佐々木:課題というのは各社で違うとは思うのですが、「本部と現場」という点にフォーカスすると、皆さん同じような課題感を持っているんだなと通じるものがありました。

遠山:今回はカスミさんにご協力いただきましたが、だいたい2年に1回くらいでご協力いただく企業が変わります。カスミさんの前は不動産賃貸仲介業の企業でした。

フィールドラーニングを振り返って、教授のご指導にどんな感想を持ちましたか?

小石:私は遠山先生のゼミにも入っているので、フィールドラーニングも遠山先生が担当してくださるということで嬉しかったです。前半はマーケティングであったり財務であったり、CBSのスター教授たちがいろいろと教えてくださって…。遠山先生だけでなく、CBS総出でオーガナイズされた授業なのがすごいですよね。

飯塚:前半はCBSのいろいろな教授にインプットしていただきましたね。アウトプットのときも、考えたことに対して、意味づけや理由づけをしながら軌道修正をしてくださいました。私たち学生はすぐ結果を出したくなるんですよ。でも、「そうなんだけど、もうちょっとここを…」とアドバイスいただいて。そのアドバイスも、フレームワークなど学術的なことを背景にしたものなので、自分の仕事にも活かせそうです。

小野:短期間の中で、遠山先生の的確なご指導、ご指摘をいただけて、本当にありがたかったです。他の先生方もそうですし、CBSの先生方の魅力を感じますね。

③フィールドラーニングの魅力~座談会その3「得られた学びの活かし方」

フィールドラーニングの魅力~座談会その3「得られた学びの活かし方」

戦略を作っても、実行することが難しい
それぞれの組織に共通する課題と向き合っていく

(司会※以降略)フィールドラーニングで学んだことは、今後ご自身のお仕事にどのように活かせそうでしょうか?

小石:先ほど佐々木店長からも少しお話がありましたが、どこの組織でも抱えている課題は深く探ると同じだなと感じています。今回のフィールドラーニングでも、「戦略をどう実行していくか」という課題が出てきました。戦略を作ることも大切ですが、やはりその後に実行していくのが本当に難しくて。 自分の組織でも、みんなで戦略を作って実行していこうとなったときに、実行フェーズでひっくり返ってしまうことがあります。まさにそこをどうやっていくかが非常に重要ですよね。まだ自分の中で明確な答えは出ていないのですが、この経験を活かして今後も深く考え続けたいです。絵に描いた餅になってしまわないよう、実行しやすいプランにするとか、伝え方を変えるとか、やり方はいろいろあるのだろうなと感じています。

飯塚:小石さんのお話と同様、私も自分の組織で戦略の実行には課題を感じていました。カスミさんも、社長や常務のご講演でも伺ったとおり、すばらしい戦略があるのですが、組織の仕組みや内部の情報伝達など、実行フェーズでの課題はやはりあって…。自分の組織でも課題について多面的に検討していきたいです。 また、同じ小売業として学んだことは、お客さまが目の前で商品を買ってくださるというリアルな1対1の勝負の中で、物が置かれている現場の最前線の小さな変化で変わることはたくさんあるということです。今回も、佐々木店長のお話を理解して、パートナーさんがMiiLの売り場を作ってくださったわけですよね。小さいことの積み重ねが非常に大事だということを、企画する上で忘れないようにしたいと思いました。

小野:お店で現場の方々の声を聞く中で、本社で考えていることがどういう風に現場に伝わっているのかよく分かりました。戦略を実際に実行に移して実現することがいかに難しいか身に染みて感じる一方、「お客さまの目の前まで戦略とアクションプランをつなげれば、利益を上げられる」ということを経験したのは大きかったです。私は入社してからずっと経理財務で、利益率をどう高めるとか、資産効率とか、本社側でいわゆる机上の空論みたいなところをやってきました。ですが、実際に営業など売上を作る方々にプランが伝わり、理解して行動していただくためには、そのためのアプローチが必要だと実感しました。 また、売上や営業利益を上げていくために、周りとどういう関係性を持てばよいのか、どういう説明の仕方がよいのかという点にも、学んだことを活かしたいです。

佐々木:弊社について分析し、課題に対してどういう戦略を立てていくのか、内側からでは見えない視点を学ばせていただきました。また、外部の方から見ても、自分たちから見ても課題であり、分かっているのに発信できなかった点もあって。皆さんと一緒に戦略を立てて発表し、最後に山本社長のコメントをいただいたことは、私の中では非常に勉強になりました。

小石さんは、フィールドラーニングがあるからCBSを選ばれたのですよね?

小石:はい。CBSといえばフィールドラーニングというくらい、明らかに他のビジネススクールとは異なるポイントだと思います。ケーススタディはどのビジネススクールでもやっていると思うのですが、実際に企業に入り込んで課題抽出から行う「生きたケース」である点が非常に魅力的です。

飯塚:私も、CBSのカリキュラムの特徴として認識していましたし、必ず受けようと思っていました。今回は同じ小売業のカスミさんが協力企業でしたが、そうでなくても受けたと思います。社長からお話を伺い、プレゼンして、社長から直にフィードバックをいただけるのも貴重な経験ですよね。

小野:私の場合は、1年ほど基礎理論を学んだ上でフィールドラーニングを受講しました。課題抽出から戦略立案までを形にしていく中で、これまで学んだ理論を「ここでこういうふうに使えるのでは?」とリンクできたところがよかったです。より実践的で使える学びができたのかなと感じています。

遠山:中央大学は“Knowledge into Action”をユニバーシティメッセージとして標榜しています。知識を学ぶだけでなく、実践に移すことを非常に重視しているんです。ビジネススクールとしても、振り返りも含めて“Knowledge into Action and Reflection”を大切にしています。それを体現しているのがフィールドラーニングです。いろいろな理論を学ぶと、普通は皆さんご自身の組織に当てはめて考えますよね。ですが、それでは今までの自分の考え方に縛られてしまう面もあります。他社に入っていくことによって、自分の組織についても知る。それが今後、自分の組織でのアクションに結び付いていくとよいなと思います。

最後に、入学を検討されている方にメッセージをお願いします。

飯塚:CBSのもう一つの特長として、社会人経験がある方しか在籍していないという点があります。皆さんある程度経験を積んで、自分の会社、業界の中で課題感を抱き、目的を持ってビジネススクールにいらっしゃっています。ここでは違う業界の方がいるからこそ触れられる価値観があって、外に出てみないと分からないことも多く、魅力的だと思いますね。学生同士で学び合える面が非常に大きいです。

小石:私も平均年齢が高いことは魅力でした。もちろん若い方から学ぶこともありますが、それなりの役職に就いていらっしゃる方も多く、視座を高められると感じています。普段だったら気を遣う目上の方とも、ここでは同級生なので気軽に話すことができます。

小野:社会人経験のある方々だからこそ、「理論ではこうだけど、実際はこうだ」といった話がぽつんと出てきたりもしますよね。皆さんの実務経験を聞いて、自分の仕事にも活かせる面は多いです。

飯塚:CBSは2022年にAMBAによる国際認証も取得しましたし、キャンパスはピカピカに新しくなりますし(笑)。ビジネスパーソンにとってはますます魅力が高まってきているのではないかと思います。

④フィールドラーニングの魅力~協力企業 株式会社カスミ 山本社長からのコメント

フィールドラーニングの魅力~株式会社カスミ 山本社長からのコメント

株式会社カスミ 山本社長
株式会社カスミ 山本社長

フィールドラーニング 最終プレゼンテーションにて株式会社カスミ     山本社長(中央左)とCBS遠山教授(中央右)、および当日対面参加した履修学生」
フィールドラーニング 最終プレゼンテーションにて
株式会社カスミ 山本社長(中央左)とCBS遠山教授(中央右)、および当日対面参加した履修学生」

フィールドラーニングのお話を頂いた際に、すぐに想起したのは「現場に棲みこむ」という言葉です。我が国の優秀な経営者は机上の空論ではなく、現場の息遣いの中から、暗黙知を共有、実践を通じて知識として結晶化をしてきたという、CBSで学んだ知識創造についてです。現場第一と言っても、そこにダイナミックな知識創造プロセスがあるのかというと、決してそうではないのが当社の現状だと認識していましたので、是非そのような気質を持った店長に講義に参加してもらい、様々な視点で自分たちの仕事の本質を再認識してもらいたいという思いで、参加・協力を申し出ました。

学生が現場に参加したことによって、全社でのFACT共有ができた

発表頂いたレポートの内容の一部を店長会で共有させていただきました。「お客様のために、お客様の立場に立って」と言いながら、本当のお客様の声、特に隠れた声を聴くことは困難です。戦略視点・マーケティング視点による分析や実際の現場での調査は、とても具体的で、すぐに現場で実行することができる内容でした。特定の現場の課題は、別の現場でも類似の形で応用できます。なによりもFACTが共有できたことはとてもよかったと思います。

学生の提案で、業界内外の様々な観点からの自社の現状に気づきを得た

同一業種の学生の方の発表は、当社の現状の水準が他社と比べてどうかという点で、とても参考になりました。また他の業態の学生の方の視点については、通常目がいかない部分に対する気づきを与えてくれました。学生の皆さんもそれぞれの企業で、自社の課題と格闘されている方々だと思いますので、現実感がありとても有意義でした。

CBSやビジネススクールで学ぼうと思っている人たちへのアドバイス

私自身本学の修了生ですが、社会人になっての学びは、どれも現実感が伴うものであり、日々の業務や、中長期のビジネスを考える上で、とても有用だと思います。特に異業種のメンバーとの交流は、その後の人生を有意義なものにしてくれます。知識をリフレッシュするとともに、社会で学ぶという得難い習慣を身に着けることができますので、是非挑戦していただければと思います。

株式会社カスミ 代表取締役社長 山本 慎一郎氏について

1959年生まれ。中央大学法学部出身。福島県いわき市に本部を置くマルトに在籍し、その後、コンサルティングファームのエイジテックアンドブレインズ(株)に所属し、2013年カスミに顧問として入社。2014年常務取締役、2017年専務取締役を経て、2020年3月に代表取締役社長に就任。2022年ユナイテッド・スーパーマーケット・ホールディングス株式会社代表取締役副社長に就任(兼任)。