商学部2018年度木立ゼミ GFS企業訪問報告書⑨

テーマ  :Dairy Country Australia ―酪農国オーストラリア―
      ①雪印オーストラリアの概要 ―オーストラリアの酪農産業―
      ②オーストラリア市場におけるマーケティング・営業戦略
ゼミ名  :木立真直ゼミ
調査先  :雪印オーストラリア SNOW BRAND AUSTRALIA PTY.LTD.
調査日時 :2018年9月18日(火)15時30分~17時00分
対応者  :Managing Director 福迫忠己様 Manager-Marketing Division 三浦晋様
      Sales Manager-Cheese Division Paul Napolitano様
      Sales Executive Chad Livings様 Trading Officer David K. Okamura様
授業科目名:演習Ⅰ・Ⅱ
参加学生数:中央大学木立ゼミナール3年生16名、大学院生1名 計17名

調査の趣旨(目的)

ビクトリア州に製造拠点を置く雪印オーストラリアの事業展開をお伺いし、海外市場におけるマーケティングと加工乳製品の貿易について見解を深める。

調査結果

 雪印オーストラリアでは、代表取締役社長の福迫様とマーケティング部門部長の三浦様から雪印オーストラリアの事業概要について、セールスチームのNapolitano様、Livings様からオーストラリアにおける自社ブランド製品の事業展開について、それぞれプレゼンテーションをしていただいた後、ゼミ生の質問に応じていただいた。
 初めに、三浦様からオーストラリアでの事業概要についてお話をしていただいた。オーストラリアでのチーズ生産は年間930万トンで、そのうち66%(約613万トン)はビクトリア州で生産されている。ビクトリア州では大陸沿岸部の温和な気候と汚染のない牧草地で酪農が盛んに行われており、国内生乳生産量の半分以上を占めている。日本においても、国内生乳生産量の半分以上が北海道であることから、特定の地域における生乳生産量の割合が高い状態は日本と類似していると感じた。ビクトリア州では、生乳利用のうち、牛乳など乳飲料に使用されるのが約10%に対して、チーズやバターなど加工乳製品として利用されるのが約90%を占める。加工乳製品は乳飲料に比べ輸出しやすく、臨海部であり温暖な気候という立地の良さもあるため、ビクトリア州は加工乳製品を事業の基幹にしている。
 次に日本の乳業における輸入依存についてご説明いただいた。日本のチーズ輸入に関しては、国内チーズ総生産量に対し国内チーズ総消費量が多いため、国内消費量の20%しか補うことができない。そのため、残り80%を輸入で補わなければならない状態にある。また、全体的な日本の生乳需給(年ベース)をみると、日本の生産量が790万トンであり、400万トンを輸入に依存している。これに対し、オーストラリアは生産量が900万トンであり、生産量の33%にあたる約360万トンを輸出している。両国が生乳生産量でさほど大きな差はないにもかかわらず、オーストラリアが輸入国、日本が輸出国になる理由は、両国の人口規模と1人当たりの年間の生乳需要量の違いにある。日本は一人当たり年間生乳需要量が100Lと少ないが、人口は約1億3,000万人である。他方、オーストリアの一人当たり年間生乳需要量が325Lと日本の3倍以上であるものの、人口が約2,500万人と日本の5分の1にとどまるからである。ただし、乳は液体としての貿易は難しいので、チーズなどの各種加工品に調整してからの輸出に大きく依存していることが分かる。
 概要の最後として、雪印オーストラリアの将来の市場について、乳児用調合製品を例に挙げてもらい、ご説明していただいた。Bellamy’s OrganicやA2Platinumは、国内市場と中国で販売を行っているが、オーストラリアで既に販売している商品は中国においても高い人気を誇っている。これらの商品には販売チャネルの特徴がある。Bellamy’s Organicでは、主にEコマース等「代購」による販売チャネルを通じて中国の消費者に購入を促している。A2Platinumでは、小売店に対する直接販売によって消費者に提供している。中国をはじめとするアジアでは乳製品市場の拡大が続いているが、競争に勝ち抜いていくには、自社製品の差別化が必要な要素となっている。
 次に、ビクトリア州でのUnicorn Brand Cheese販売を担当しているNapolitano様、Livings様から自社ブランド製品の販売についてお伺いした。Unicorn Brand Cheese、Flinders Estates、NOWRAという国内市場に流通する3つのブランドの紹介をしていただいた。Unicorn Brand Cheeseはオーストラリアの伝統的なブランド、Flinders Estatesはプレミアムブランド、NOWRAは製造を行っている地方の名前を前面に押し出したブランドである。様々なブランドの中でもターゲットは決まっていて、ブランドの特徴も分かれていることが理解できた。
 雪印では、スーパーマーケット等で消費者に自社ブランド製品の魅力を発信することに尽力しており、特に印象に残ったことは、Unicorn Brand Cheeseの陳列の工夫である。日本では通常、チーズは6ピースを円型の箱に入れて販売しており、オーストラリアでは主に、円形で販売している。それに対し、Unicorn Brand Cheeseは従来とは異なった方法をしている。それは三角のチーズを縦に並べることである。消費者に選んでもらうための細かい工夫の重要さを学ぶことができた。
 質疑応答では、今後、ヨーロッパ市場に輸出する戦略はあるのかお伺いした。白カビチーズにおいては、シンガポールを拠点に輸出を行っているが、賞味期限が短いために航空輸送を用いざるを得なく、コストがかかり高価格になってしまう。賞味期限が長いチーズを開発できれば、低価格でヨーロッパ市場を拡大できるとご回答いただいた。また、なぜ人件費の安い東南アジアで乳加工工場を持っていないのかという質問に対し、乳製品の原料をしっかり調達することができる国は少なく、コストは高くなるものの、衛生面を考慮するとオーストラリアで作らざるを得ないと仰っていた。例として、インドは生乳生産量が世界1位であるが、加工できるほどの衛生面のレベルに達しておらず、使用することができないというお話があり、乳製品を取り扱う難しさや品質管理に対する理解が深まった。製造拠点を海外に進出させる際に、「物流条件」と「酪農条件」どちらを重要視するかお伺いしたことは大変勉強になった。衛生状態や牛の管理がしっかりした国が少ない中、加工乳製品という品質管理が求められる商品を輸出するためには、酪農が発達していなければ安定的に供給が行えないからである。雪印オーストラリアの海外事業戦略についてお話をしていただいたことは大変貴重な経験となった。
 最後に、今回このような訪問の機会を設けていただいた福迫社長、三浦様、Napolitano様、Livings様、Okamura様に心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

(雪印オーストラリアにて)

(文責:木下剣一、冨田浩史、大鷹りか、菊地柚香)