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2018年度木立ゼミ GFS企業訪問報告書⑧
テーマ :メルボルンにおける倉庫業務とコスト削減のための工夫
調査先 :オーストラリア日本通運株式会社 メルボルン物流センター
NIPPON EXPRESS (AUSTRALIA) PTY. LTD. Melbourne Logistics Center
調査日時 :2018年9月18日(火) 10時00分~11時30分
対応者 :General Manager, Melbourne Branch & Oceania Sales Division 森山 秀隆様
Sales manager 山田 友之様
Operation&Sales Manager Mario Spagnolo様
授業科目名:演習Ⅰ・Ⅱ
参加学生数:中央大学木立ゼミナール3年生16名、大学院生1名 計17名
調査の趣旨(目的)
私たちの生活と切り離せない物流・倉庫業についての理解を深め、今後の業界の課題や動向について考察する。また、日本のみならず海外でも成功を収めている要因を探り、海外展開の戦略や考え方を学ぶ。
調査結果
初めに森山部長よりNIPPON EXPRESS (AUSTRALIA) PTY.LTDの会社概要をご説明いただいた。NIPPON EXPRESS (AUSTRALIA) PTY.LTDはシドニーでの1つの支店、メルボルンでの2つの支店と物流センターから構成されている。今回訪問させていただいたMelbourne Logistics Centerの倉庫面積は8220㎡の広さを誇り、大創産業、良品計画、伊藤園といった日系企業を顧客対象として倉庫・配送業務を行っている。従来NIPPON EXPRESSの専門業務は輸送であったが、現在は会社の方針として販売業務や物流業務に力を入れている。今後は日系企業だけでなく現地企業からも選んでもらうことを目指している。また昨年、人件費の高さによる多大な製造コストを理由として、メルボルンにあるトヨタの工場が閉鎖された。その際使われなくなった設備の約半分(3000トン)もの輸送業務をメルボルン支店が担った。トヨタの他にもホンダ・スズキ・三菱等の自動車関連、さらにシドニー支店ではキャノン等の電気・精密機器系の海上・航空貨物輸送に強みを持っている。
安全面に関しては、製品の輸送、保管中の紛失、盗難を防ぐためのセキュリティといった、物流にかかわる安全対策の基準であるTAPA(Transported Asset Protection Association)の最高水準であるCLASS A認証を取得している。倉庫内には火災報知器や煙探知機の他、36カ所に24時間年中無休の監視カメラが取り付けられている。このようにMelbourne Logistics Centerは倉庫・輸送において高い安全水準を保っている。
次にSpagnolo様に倉庫のご案内と英語による解説をしていただいた。倉庫業務については、製品を入庫、検品したのちにラックに入れ、1つ1つの製品の場所をデータ登録する。その後顧客から発注を受けて製品をピックアップし、パレタイズを行い出荷する、という大まかな流れである。パレタイズとはピッキングを終えた商品を箱詰めした後、大きさの異なった箱を組み合わせ、テープを巻いて固定する梱包方法である。この作業はいかに隙間を作らずに箱を組み合わせるかが難しいため、OJTのような方法を用いて日々訓練しているとのことであった。また、月の売上は10~12月が最も多い。その理由はハロウィーンが終わったらすぐクリスマスモードへと切り替わるため、10月頭からデコレーション用品等のクリスマス関連商品を配送し始めるからである。
オーストラリアの物流水準は日本と比較すると低いとされている。上記の通りNIPPON EXPRESS (AUSTRALIA) PTY.LTDの顧客は日系企業であり、日本と同等の高い物流・配送水準が求められる。そのため現地スタッフの教育は難しいが、いかに落とし込みうまく馴染ませるかが1番重要である。水準を高めるための具体的な取り組みとしてまずSOP(Standard Operation Procedure、標準作業手順)が挙げられる。これは作業手順に関する注意書きを壁に提示し、現地スタッフが繰り返し目にすることによってミスを防止し、作業精度を上げるためのものである。また受領書はシール状で製品に貼れるようになっており、顧客(オーダー)番号・場所・店舗登録番号・ジャンコードが一目でわかる仕組みである。さらにピックアップの手順においてもミスを減らすための工夫が為されていた。ピック方法にはストアピックとトータルピックがあり、前者は1つの店舗で注文された全ての商品をピックしていくのに対し、後者は複数店舗の総注文数をピックしてから店ごとに分けるという方法である。NIPPON EXPRESS (AUSTRALIA) PTY.LTDは当初、時間短縮の観点からストアピックを採用していたが、誤出荷が多くなってしまうためトータルピックに変更しミスを減らすことに成功した。このように日々苦労されながら現地スタッフの作業の質の向上に努めておられた。
さらに森山部長のお話によると、オーストラリアで企業の経営を行う中で特に苦労されているのはオーストラリアの人件費の高さである。それを補うためにコスト削減に注力している。上記のように作業工程を見直し簡素化に努めたり、1パレットあたりの配送料を下げてもらえるよう交渉したり、段ボールの再利用を行ったりと様々な面から削減を図っている。質疑応答の時間を設けていただいた際、「人件費のコストダウンのために機械を導入する予定はないのか」という問いに対し、機械の初期投資と人件費では前者の方がよりコストがかかってしまうため後者を選ぶとご回答いただいた。また作業面のみならず働き方の教育も難しいとのことであった。オーストラリアの従業員は他のスタッフとの関係性や給与体系、忙しさ等を理由にしてすぐに会社を辞めてしまう傾向にあり、1年続くスタッフは約2割程度である。いかに長く働いてもらえるかが課題であり、そのために組織形態の見直しを図っている。
山田様からの「海外に出るための土台づくりをしっかりとしないと結局中途半端になり、失敗してしまう。しっかりとした目的を持つ必要がある。」というお言葉や、森山部長からの「人間力を鍛えることが大切だ」というアドバイスも大変印象的であった。今回のGFSや今後の就職活動においても土台づくり・目的意識・人間力は重要である。実際に海外でご活躍されている方からこのようなお話をお伺いでき、今後に繋がる大変貴重な経験となった。
最後になりますが、今回このような訪問を受け入れてくださった森山様、山田様、Spagnolo様に心より感謝申し上げます。私たちのために貴重なお時間を割いていただき、誠にありがとうございました。
(倉庫見学にて)
(オフィスにて集合写真)
(文責:山下舞子、鈴木公大、荒井雄大、石黒彩)