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2018年度木立ゼミ GFS企業訪問報告書③

テーマ  :ヤクルトの概要及びオーストラリアにおけるマーケティング戦略について
ゼミ名  :木立真直ゼミ
調査先  :オーストラリアヤクルト株式会社Yakult Australia Pty. Ltd.
調査日時 :2018年9月14日(金) 10時00分~11時30分
対応者  :Managing Director 大野 謙二様     Production Manager 橋本 昌大様
      National Sales Manager 寺木 康浩様   Senior Sales Advisor 内田 琢等様
      Senior Technical Advisor 坂田 崇裕様  Sales Advisor 松尾 優香様
授業科目名:演習Ⅰ・Ⅱ
参加学生数:中央大学木立ゼミナール3年生16名、大学院生1名  計17名

調査の趣旨(目的)

海外市場に盛んに進出している乳酸菌飲料のトップ企業「株式会社ヤクルト本社」の全世界で変わらない理念や国際事業、オーストラリアにおけるマーケティング戦略について学ぶ。

調査結果

 はじめにプロダクションマネージャーの橋本様より工場の案内、施設の説明をしていただき、次に事務所にて代表取締役社長の大野様、ナショナルセールスマネージャーの寺木様より会社概要についてプレゼンテーションをしていただいた。
 ダンデノンにある工場ではヤクルトを1日に約40万本生産することが可能である。ヤクルトを生産している世界の工場の中では最小規模ではあるが行なっている業務内容は日本と同様である。
 日本でいう品質管理課では様々な検査が行われており、原料から最終製品が完成するまでの各段階においてサンプルを抽出し異常がないかどうか検査を行なっている。中でも微生物検査といわれるものには2種類あり、1つ目は雑菌検査、2つ目は乳酸菌数検査である。1つ目の雑菌検査では雑菌が混入していないかどうか、2つ目の乳酸菌数検査ではヤクルトの中の乳酸菌が適正な数量であるかを確認する。オーストラリアで製造・販売しているヤクルト1本には65億以上もの乳酸菌が含まれており、65億ひとつひとつ数えることはできないため、ヤクルトを段階的に生理食塩水で薄めていき、希釈したものと乳酸菌が育つ培地と混ぜて培養している。微生物検査では検査中に雑菌が混入しないよう細心の注意を払って行なわれている。実際の検査の様子も見学させていただき、工場では高度な技術によって綿密な検査が行なわれていた。各部屋は無菌状態が保たれており、徹底された品質管理体制を拝見することができ、大変貴重な機会となった。
 その後、寺木様によるプレゼンテーションではヤクルトの事業概要等についてのお話を伺った。1920年代、感染症や食糧不足による慢性の栄養失調から多くの子供たちが命を落とした。そのことから京都帝国大学(現京都大学)の代田稔博士は「強化した乳酸菌を摂ることで腸を守り、病気を予防する」考えのもと乳酸菌シロタ株を発見し、世界の人々の健康を守りたいという強い想いから活動を開始した。
 全ての事業は代田イズムを基に展開されており、オーストラリアにおいてもこの代田イズムは普遍である。代田イズムは3つの柱から成り立っており、1つ目は「予防医学」、2つ目は「健腸長寿」、3つ目は「誰もが手に入れられる価格で」である。1つ目は病気にかかってからではなく病気になる前に予防することが大切であるという考えから、2つ目はヒトが栄養素を摂る腸を丈夫にすることが健康で長生きすることに繋がるという考えから、3つ目はヤクルトを1人でも多くの人に気軽に飲んでもらいたい想いから生まれた。この3つの柱がしっかりと成立しているからこそ多くの海外市場に進出でき、それぞれの国においてヤクルトが支持されているのではないかと推察した。
 また、生産を開始した1994年当時、オーストラリアに乳酸菌マーケットは無く、菌に対してネガティブなイメージがあったが、店頭サンプリングや広告、また医師や栄養士などのキーオピニオンリーダーの組織作りを行ない、市場を育成していった。オーストラリアのヤクルトの販売対象人口比は約1%であるためヤクルトの普及は発展途上である。そのため今後は新たな顧客の獲得に向け、小、中学校等に出前授業を行ない、ヤクルトの価値訴求などを行なっていきたいと仰っていた。
 今回の訪問では工場を視察させていただきながら橋本様より製造設備等のお話を伺い、寺木様によるプレゼンテーションでは会社概要やオーストラリアにおけるマーケティング戦略について深く学ぶことができ、大変有意義な時間を過ごすことができた。
 多くの方々に対応していただきお話を伺うことができたため、ヤクルトについて詳細に理解することができた。また、現地での生活に慣れることに苦労したが、オーストラリアにヤクルトを普及していくことにやりがいを感じているというお話を伺い、海外で働くことについて考えるきっかけにもなった。 
 最後に、今回このような訪問の機会を設けていただいた大野様、内田様、寺木様、橋本様、坂田様、松尾様およびヤクルトのスタッフの皆様に心より感謝申し上げます。ありがとうございました。

(文責:赤野雅章、山口柊平、岡本花奈、杉本優佳、陳嘉瑾)