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2018年度木立ゼミ GFS企業訪問報告書②

テーマ  :豪州の政治経済の一般情報とオーストラリア三菱商事が行う豪州事業について
ゼミ名  :木立真直ゼミ
調査先  :オーストラリア三菱商事―Mitsubishi Australia Ltd.―
調査日時 :2018年9月13日(水)15時00分~17時00分
対応者  :業務・人事・総務担当マネージャー 友田 啓介様
      生活産業部長 谷 博志様
      オセアニア地域戦略室 リサーチ・コーディネーター 武田 久美様
授業科目名:演習Ⅰ・Ⅱ
参加学生数:中央大学木立ゼミナール3年生16名、大学院生1名 計17名

調査の趣旨(目的)

三菱商事は、岩崎彌太郎が創業した三菱を源流とする日本を代表する商社の1つである。地球環境・インフラ事業、新産業金融事業、エネルギー事業、金属、機械、化学品、生活産業の7つの営業グループ体制と傘下の事業投資先が、それぞれの分野において事業展開をしている。また、約90の国・地域に200を超える拠点を持っており、今回、私たちは拠点の1つであるオーストラリア三菱商事を訪問させていただいた。本調査を通して、オーストラリアの市場特性に合わせた大手総合商社の事業展開や戦略について学ぶ。

調査結果

 はじめに友田様より、オーストラリアの歴史や風土、経済情勢などの解説をしていただいたのち、オーストラリア三菱商事が行っている様々な事業について説明していただいた。また、その後の質疑応答にて友田様、谷様、武田様からご自身の業務内容や経験のお話をいただいた。
 現在、オーストラリア三菱商事は、「トレーディング・事業投資・事業経営」という3つの柱のビジネスモデルで事業を展開している。事業投資先は20社あり、その中には天然ガスなどのエネルギー事業や、ガラスや工業品の原料となる珪砂の子会社などがある。機械グループの投資先であるIsuzu UTE Australia Pty Ltd.についてのお話からは、オーストラリアの特徴を踏まえた事業展開について学ぶことができた。
 三菱商事いすゞ事業本部は、タイで生産された乗用車やピックアップトラックなどの自動車を、オーストラリアをはじめとした世界中に輸出・販売している。また、オーストラリアの自動車市場の特徴としてSUVの人気があげられる。オーストラリアの人々は週末にキャンプやバーベキューなどを楽しむため、日常の利用だけでなくレジャーにも対応している車を好んでいる。そのため日本で主流の普通乗用車ではなく、SUVやピックアップトラック、4WDが主流になっている。
 その他の特徴として、オーストラリアは人件費や物流費が高いということが挙げられる。そのため、オーストラリア国内の三菱商事の各事業会社では物流コスト軽減の取り組みが行われており、例えば珪砂の輸出においては輸送船の規模を大きくするなどの工夫がされている。同様に他の産業でもどのようにスケールメリットを生かすかが重要となっている。
 元来、商社の主要な業務は貿易であったが、現在は投資を積極的に行い、事業経営が収益の柱となっている。オーストラリアにおける三菱商事の主な収益源は原料炭事業やLNG事業である。しかし、一方で、その他の事業の拡充も目指しているという。オーストラリアの人口は移民および自然増により、2050年には現在の約50%増の3,759万人になると予想されている。今後は人口増加に対応するためのインフラ整備が進むことが予想されており、インフラ開発分野での事業展開にも注力している。
 その後の質疑応答では友田様、谷様、武田様より、海外でのビジネスで重要なことはその国や地域を理解すること、そして日本人の考えを押し付けないことだと伺った。海外で就労するにあたり、実際に現地の方々と直接話すことが重要となる。なぜなら、その経験からその国での生活や習慣を理解し、尊重することができるからである。そのような基本的なことを大切にされていると聞き、非常に印象に残っている。
 また、就活の時期を迎える私たちに対して、働くことについてのアドバイスをいただいた。それは、「コミュニケーション」と「経験」の大切さである。「コミュニケーション」とは、社内や取引先の人との会話で関係性を生み出すことだと定義されていた。また、国外拠点であるからこそ、他国の取引相手を理解して受け入れ、リスペクトすることも必須である。「経験」については、今後、AIの発展に取って代わられない仕事に携わるためには、現場でどれだけ多くの経験をするか、またその経験をいかに持ち場で発揮するのかが重要とのことであった。社会に出る前の心構えや社会で通用する人材になるために、何をすべきかについてお教えいただいた。
 友田様、谷様、武田様からのご説明や学生の質問に対するご回答から、オーストラリアと日本には、経済面や教育面などで多くの違いがあることも痛感した。そして、その違いがあるからこそ、お話にあった「国の経済や悩みに合わせた事業」の展開が重要なのである。
 最後になりますが、今回私たちの訪問を受け入れてくださり、貴重なお時間を割いてくださった友田様、谷様、武田様に心より感謝申し上げます。誠にありがとうございました。

(文責:石黒彩、鈴木公大、荒井雄大、山下舞子)