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2018年度木立ゼミ GFS企業訪問報告書①

テーマ  :オーストラリア及びビクトリア州の概要について
ゼミ名  :木立真直ゼミ
調査先  :在メルボルン日本国総領事館
      Consulate-General of Japan, Melbourne, Victoria, Tasmania and South Australia
調査日時 :2018年9月13日(木)13時00分〜14時00分
対応者  :Consul 堀籠 勝史様
授業科目名:演習Ⅰ・Ⅱ
参加学生数:中央大学木立ゼミナール3年生16名、院生1名 計17名

調査の趣旨(目的)

領事館への訪問という貴重な機会を通じて、経済関係や文化交流について学び、今後の日豪関係を考える。また、領事館は私たちから見えないところでどのような業務を行っているのかを知り、一般企業との仕事の違いを理解する。

調査結果

 領事である堀籠様から、オーストラリア及びビクトリア州の政治・経済を中心とした概要を伺い、その後日豪関係やメルボルンにおける日本企業の投資例や進出について、具体例を交えながら詳しくお話をしていただいた。
 まずオーストラリアの人口については、東海岸付近の極集中が顕著であり、特にシドニーがあるニューサウスウェールズ州、メルボルンがあるビクトリア州に多く集中している。さらに2018年度はシドニーが一番人口の多い都市(503万人)であるが、メルボルン(472万人)は地形の有利性から2053年にシドニーを抜き豪州最大の都市(791万人)となることが予想されているという。イギリス「エコノミスト」誌調査において、2018年は惜しくも2位であったが、2011年以来7年連続でメルボルンは「住みやすい都市」世界一位に選ばれている。
 経済について、ビクトリア州の2016/2017年州総生産額(GSP)は3,990億豪ドルであり、国内全体の23.6%とニューサウスウェールズ州の33.0%に次ぐ数字となっている。かつてはビクトリア州にトヨタ、GMホールデン、及びフォードの本社工場があり、自動車製造業の中心地であったが、フォードが2016年10月に、GMホールデンが同年11月に工場を閉鎖し、トヨタも2017年10月をもって自動車製造を終了した。これらの大きな要因としては人件費の高騰が挙げられるという。今後は医療、IT、食品、観光、教育等の分野での成長が期待されている。実際、私たちが小売視察に伺った際にも、スーパーの食品や外食店の多くが日本より値段が高くメルボルンの物価の高さを痛感した。これも人件費の高さに起因している。
 ビクトリア州の農業生産額は国内全体の24.1%を占め第1位となっている。特に降雨の多い沿岸部や灌漑設備の整った北部を中心に酪農が盛んで、牛乳の生産量は豪州全体の64%を占める。ラトローブ・バレー地域は褐炭の埋蔵量が豊富である。ビクトリア州で消費される電力の約80%の発電に褐炭が利用されており、その多くが火力発電に使用されている。褐炭は石炭の中でも石炭化度が低く、水分や不純物が多いため、重くてかさばり輸送コストがかかる上、エネルギーをあまり生産することができず、燃料としてのエネルギー効率は悪い。しかし、未利用エネルギーの褐炭から水素を製造し貯蔵、輸送、利用まで一体となった液化水素サプライチェーンを構築するプロジェクトがあり、2020年代までに商用化を見据えて実証する計画があると伺った。
 次にメルボルンにおける日本企業の投資例や進出について教えていただいた。トヨタはアルトナに工場を有し国内販売及び中東等へ輸出していたが、上記の通り2017年10月に自動車製造を終了した。その後会社機能をメルボルンに集約し研究開発や販売事業を行なっている。三菱商事と三井物産はシドニーにあった本社をメルボルンに移転した。NECは豪州本社をメルボルンに置き、連邦・州政府を含む幅広い顧客を対象にICTビジネスを展開している。また大手小売業の進出も活発であり、大創産業、良品計画、ファーストリテイリングといった企業が続々と進出している。直接投資の例として、住友商事が2011年にABA(メルボルン港輸出ターミナルと内陸サイロ)、2014年にエメラルド(穀物売買)の株式を取得した。また、日本郵便は2015年5月に豪州物流大手トール・ホールディングスの発行済株式を取得し100%子会社化したという。
 堀籠様は政治経済の情勢に関する情報収集を行い、在豪邦人へ向けて情報発信をする中で、英語の大切さを身にしみて感じるとともに、現在の私たちへ英語の大切さを教えてくださった。さらに「自分に投資する」という言葉を用い、将来のために今自分ができることを行うことが大切であると仰っていた。目先の楽しさなどに目を取られがちな私たちにとっては、非常に印象に残るお言葉であった。また、仕事の中で特に難しい部分は何かと伺った際には、難しいというよりは逆に仕事の中でいろいろな情報や経験など得るものが多いと語ってくださった。
オーストラリアに到着してから最初の訪問先にて、オーストラリア及びビクトリア州の概要について詳しく教えていただいたことで、オーストラリアについての知識が深まり、その後の訪問がより有意義なものとなった。また私たちが普段あまり関わることのない、領事館という特別な場所で領事として働いていらっしゃる堀籠様のお言葉はどれもが新鮮であり、非常に貴重な経験であった。
 最後にお忙しい中、私たちのために貴重な時間を割いていただいた堀籠様には心より感謝申し上げます。

(文責:田中翔、廣拓磨、安部はるき、常盤真菜)