学部・大学院・専門職大学院
木立 真直ゼミナール
■雪印オーストラリア
訪問日時 : 2017年9月7日15:30-17:30
訪問先 : 雪印オーストラリア有限会社
ご対応者 : 代表取締役社長 福迫 忠己様
Senior Manager グラハム・マレル様
Manager - marketing division 三浦 晋様
テーマ : 豪州の酪農や乳業事情,雪印の豪州での事業戦略について
参加学生数 : 中央大学木立ゼミナール3年生17名
ゲスト・東京大学矢坂ゼミナール4年生1名 計18名
調査趣旨(目的)
酪農はその土地や気候に大きく左右される。日本とは異なる気候条件の中で事業を行い成功している雪印オーストラリアを訪問することでその難しさを知るきっかけとなる。また、人件費・物流費が高くビジネスをするにあたりその制約条件が厳しいオーストラリアで成功している雪印オーストラリアの事業戦略から、成功要因を探る。
調査結果
豪州の酪農や乳業事情,雪印の豪州での事業戦略について伺った。
世界における乳製品の需要は増加している。これは、ミルクを飲む習慣のなかった国の人々がミルクを飲むようになってきているためであり、今後は世界でミルク資源の取り合いになるだろうと予想される。また、ミルクの味や風味が国によって異なるのは、乳牛の育て方や消費者のニーズの違いによるものだそうだ。日本では、脂肪分が多くなる冬のミルクの風味が良いとされる。
雪印はオーストラリアでの販売はナチュラルチーズのみ、それも雪印ブランドとしてではなくユニコーンというブランドで販売している。これは、チーズが雪印のコア商品であることに加え、オーストラリアは販売先ではなく主に原料調達先としての役割が大きいことが理由である。製造にあたってはフランスのチーズ工場を買収しており、利益のためのみというわけではなく雪印のポリシーによるものである。企業の買収にあたりその企業の文化を相互に理解しあうことが重要である。それが買収先の従業員のみならず企業全体の円滑な運営に役立つとのことだった。日本ではチーズというと6Pチーズなどのプロセスチーズの印象が強いが、オーストラリアではナチュラルチーズの消費がほとんどのためオーストラリアでの販売はナチュラルチーズが主となっている。
オーストラリアではウールワースとコールズという二大スーパーの力が強く、値段交渉が非常に難しい。また二大スーパーのみに商品を置くのはリスクが高いことからウールワースと小さなスーパーに商品を置いている。
質疑応答では、日本で阿見工場を建てたようにオーストラリアでも工場をまとめてしまった方が効率がいいのではないかという質問に対して、オーストラリアは国土が広すぎて阿見工場のように統合してしまうと費用対効果が得られない、との回答をいただいた。広い国土であるゆえ、日本で効率がいいと思っていたことも通用しないということから、どの国でも当てはまるような戦略を見つけることの難しさを感じた。
また、乳児用の粉ミルクを東南アジアに輸出する際、なぜ日本からでなく、オーストラリアから輸出するのか、という質問に対しては、次の2つの理由があるとのご回答をいただいた。1つ目の理由としては、オーストラリア産の製品として販売することで売り上げが増加するからであり、2つ目の理由として日本はガラパゴス化が進み、日本と海外で基準の差が生まれたことで、日本からの販売が難しくなっているからである。日本と海外の規格の違いによって商品を販売できないということは他の製品でも起こっていることであり、深刻な問題であると感じた。
会食では雪印についてだけではなく、オーストラリアの就職活動の実態や労働事情についてもお話を伺うことができた。オーストラリアの就職活動では大学名は関係なく、大学での実績が重要視される。また、日本の労働制度はオーストラリアに比べてかなり遅れており、オーストラリアでは育休は1年間とることができる上、残業もほぼ必要ないということ、週末は家族と過ごすことがほとんどであることを知り、非常に新鮮であると同時に驚きを感じた。
また、何か1つでも自分の強みを持つことが、新たに人とつながるための接点になる、グローバルな世界で戦える人材になるためのアドバイスをいただいた。今後、グローバル化が進み世界で活躍できる人材がより求められていく中で、現在海外で活躍されている方のお話を伺うことができたのは、大変貴重な機会であった。
グラハム様のプレゼンを聞くゼミ生
(文責:中山安優)