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小田 悠生ゼミ 国外実態調査報告

調査の趣旨(目的)

本ゼミでは「現代アメリカ研究」をテーマに、アメリカの医療保険制度と雇用主提供保険、企業の社会的責任、税制とフィランソロピー、日本の食品企業のアメリカ市場への進出といったテーマについて各自でレポート執筆を進めてきた。実態調査では「グローバルシティにおける労働」を共通テーマとして、博物館での調査によって20世紀初頭における労働問題を歴史的に考察するとともに、ニューヨーク白門会との交流を通じて21世紀の現在における働き方について調査する。

調査結果

グローバルシティ・ニューヨークにおける労働を、歴史的見地から考察するため、まず足を運んだのはニューヨーク湾内のエリス島に位置する国立移民博物館・史料館である。これは、19世紀末から20世紀前半にかけて約1200万人のヨーロッパからの移民が審査を受けた入国管理施設を博物館・史料館として保存・公開した国定史跡である。当時の移民たちが残した文章などを読みながら、トランスナショナルな移動の様々な要因について学んだ。その後に、マンハッタン島南東部のロウアー・イースト・サイド地区にあるテネメント博物館を訪れた。ロウアー・イースト・サイドは、エリス島で入国を認められた移民たちが集住した地区であり、テネメントとはスラム街の安価なアパートを意味する。そのほとんどが現存しないが、テネメント博物館は19世紀半ばの建物だけでなく、室内まで保存された希少な歴史遺産である。 同館では、世紀転換期のスウェットショップについてのワークショップに参加し、移民の家族労働と問屋制手工業、児童労働問題と労働法制の発展といった問題について学び、そのほかの参加者とともに質疑やディスカッションを行った。
続いて、ニューヨーク白門会を通じて、ニューヨークに暮らす5名の同窓生と交流した。在米歴は数ヶ月から数十年、渡米のきっかけも駐在から起業と様々であり、保険・証券・銀行など商学部学生の関心と深い業界の方々とお会いすることができた。学生は、各自のレポートで取り組んできたテーマについての質問をぶつけるとともに、国境を越えて働くための学生時代の過ごし方・キャリア形成、日米の労働慣習の違いなど多岐にわたるお話を伺い、多くの刺激を受けた。