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木立真直ゼミナール国外実態調査報告書(2016年度)
訪問日時:2016年9月2日(金)10:00~12:00
訪問先:CP ALL PUBLIC COMPANY LIMITED
1 Convent Rd., Sivadol Bldg., 5th FL. Silom, Bangrak, Bangkok 10500 THAILAND
ご対応者:Section Manager International Business Networking Management
Natinee Potigul 様
Nirada Jutagasut 様
テーマ:・タイにおける小売業の運営形態
・日本のコンビニエンスストア(セブンイレブン等)との比較
参加学生数:中央大学商学部木立ゼミナール 3年生 17名 教員 1名 計 18名
調査結果
9月2日(金)のCP ALL PUBLIC COMPANY LIMITED(以下 CP ALL)訪問では、まず初めに、Section ManagerのNatinee Potigul様とNirada Jutagasut様にCP ALLグループの概要を説明していただき、その後ゼミ生の質問にお答えいただいた。なお、今回の訪問に際し、内容はすべてタイ語ではなく英語でのご対応であり、質疑応答もすべて英語で行われた。
CP ALLは、タイでコンビニエンスストア(以下、CVSと略記)業態である小売店であるセブンイレブンを運営しており、また様々な会社をグループ傘下に置く有力企業である。代表的な子会社としては、CP ALLの店舗で品揃えするベーカリーや弁当、冷凍食品などを製造するCP RAM Company Limitedや、工場で使用する機材や店内の器具などを生産するCP Retailing、カードやネットワークシステムを担当するGosoft (Thailand) Company Limited、広告制作会社であるMAM Heart Company Limited、あるいは人材育成のためのAll Training Company Limitedなどがあげられる。要するに、タイでCVSを運営するための全ての機能が自社の子会社やグループ企業により内部化されている点が特徴的といえる。
CP ALLは1989年6月1日タイにセブンイレブンの1号店を開店し、現在9,359店舗を国内に構えている。CP ALLが設定している1店舗の1日に対応できる限界顧客数は1,400人であり、この人数を超える来客が同エリアにおいて新たな店舗を出店する目安となっている。品揃えでは、安定した商品調達を確保するため傘下のブランドが多くを占めている。またタイには親日家が多い、日本産品の品質への信用も高いといった理由から日本産の商品の取扱いも多い。CP ALLの職員が日本を訪問した際に日本の商品を試食したりすることで、日本産食品の取り扱いを検討することもある。
近年バンコクの経済発展により労働環境が変化し、食事にかける時間が減少傾向にある。
このため、日本のように中食による食事の代替が進展しつつある。こうしたニーズを基礎に、弁当などの中食を多く取り扱うCVSの需要は伸びてきている。元来、タイの食文化には屋台で飲食する習慣が深く根付いており、一見すると飲食物の売り上げが店舗全体の7割を占めるセブン‐イレブンにとっては大きな競争相手であると考えられる。しかし、同じ中食とはいっても、屋台が提供するのは立って食べられる、いわば即食ニーズに対応する軽食や飲み物が中心であるのに対し、セブンイレブンでは弁当などのより本格的な食事に対応する中食の提供に重点を置くことで、屋台との競合ではなく共存を目指しているという。とくに印象的だったのは、現在、タイで屋台が伝統的な店舗として定着しているように、セブンイレブンもタイの伝統的な店として消費者から支持されるような会社となることを目指してCP ALLの社員は働いている、とおっしゃられたことである。
質問の時間には、ゼミ生から日本のCVSとの相違点についての質問が多く出された。日本のセブンイレブンの手法で参考にしたものについての質問に対しては、冷凍食品やコピー機が挙げられた。それまでは、タイにおける冷凍食品のイメージは家庭内食での利用であり、小売店舗で温めて食事として提供する発想がなかったとのことである。また、コピー機については、一度導入をしたものの、消費者が使用方法を熟知しておらず失敗に終わったという。日本のCVSでよく見られるような店内でのフライヤー調理によるフライフードの取り扱いがない理由については次のような回答であった。基本的には、スタッフの作業量が増加すること、あるいはスタッフを増やす必要があることから、導入しても採算が採れない点がある。人件費や労働環境に関する日本との考え方の違いもあるように思われる。また、揚げ物については、タイの町中の屋台で一般的に売られていることもある、とのご説明があった。
ビジネスのグローバル展開にあたって、進出先国の文化や習慣を十分に理解する必要があることと同時に、逆に、日本で当たり前に行われていることが他国にとっては新鮮なサービスとなり得ることを感じた。そのほかに、タイの消費者の志向性として、店舗で商品を購入したらその場で商品を選び購入後すぐに持ち帰ることを重視する傾向があるという。流通事情に関しての質問に対しては、タイ、特にバンコク周辺は車の交通量も多く渋滞がひどくなりがちなため、1回につき2~3店舗しか配送ができないのが現状であるという。
個人商店が小売業の大きなシェアを占める東南アジアの地域においてチェーンストアを運営・経営する際に、消費者に対し安定した質の小売サービスを提供することは大きな課題となる。CP ALLでは、1つに、フランチャイジーのオーナーの教育に3カ月という長期の時間をかけ、2つに、商品発注はコンピューター経由で行い欠品を減らすことで品揃えの安定化を実現し、3つに、安定供給の一環に自社傘下のPB商品を位置づけている。これらの取り組みを通して、同社では小売ブランドの均一化と強化を図っている。
今回の調査を通じて、CP Allがタイにおいて初めてのCVSの会社であるという自負、近代化の進むタイで先頭を行こうとする志とエネルギーが強く感じられた。また、日本で身近なCVSであっても海外における運営方法は日本との相違点が多く、その国の文化、現状に合わせてローカライズされていることが分かった。多くの国でグローバル化が急速に進んでいる現代において、世界経済の動向により一層注目し、今後の活動に役立てていきたい。 最後に、今回、ご丁寧に対応くださったNatinee Potigul様、Nirada Jutagasut様をはじめCPAllの皆様に心からお礼申し上げます。
(文責:黒木美香)
CP ALL 会議室・オフィスにて