2026年6月15日(月)、商学部の「スモールビジネス論」(担当教員:砂川和範 教授)において、株式会社81プロデュース・声優 吉岡茉祐 氏による特別講義を実施しました。
中央大学商学部では、幅広い企業や団体からの協力を得て、各業界の最前線で実務に携わるビジネスエキスパートの講師から、直接指導受けれる機会として、ゲストスピーカーによる特別講義を実施しています。
演じる、書く、続けるー創造を仕事にする個人の戦略
実施目的
「スモールビジネス論」は、小規模事業および個人による事業活動の理論と実態を主題とする科目であり、その後半においてサブカルチャーおよび創造性(クリエイティヴィティ)と経済活動との関係を扱う。本招聘は、この後半部の教育内容を、現に創造産業の第一線で活動する実務者の証言によって補強することを目的とした。声優という職能は、個人が固有の資質を市場における価値へと転化させ、事務所という組織との関係のなかで自律的に活動を営む点において、個人事業の一典型をなす。多数の同業者のなかでいかに自己を差別化し、いかなる基準で仕事を選択し、収入の不安定性と向き合いながら創造的キャリアを持続させるか——これらの問いは、本科目が扱う差別化、ポジショニング、事業の多角化、キャリアの持続可能性といった論点に直接対応する。そこで、本学法学部出身の声優・吉岡茉祐氏を招き、講演および担当教員との対談を通じて、抽象的な概念と創造産業の現場の実態とを往復的に理解させることをねらいとした。
実施結果
当日は、吉岡茉祐氏による講演と担当教員との対談の二部構成で実施した。前半の講演では、大学在学中から現在に至る職業選択の過程を軸に、声優という職能の実態が語られた。多数の同業者が存在する市場のなかで、自己の声質や演技をいかに差別化し、オーディションを通じて仕事を獲得していくか、また事務所との関係のなかで個人としての裁量をどのように確保するかといった、個人事業としての声優業の具体的な戦略が示された。あわせて、演じることにとどまらず「書く」という創作活動をキャリアに組み込むことで、表現の場と収入源を多角化し、活動の持続可能性を高めていく実践が紹介された。後半の対談では、本科目が扱うポジショニング、事業の多角化、キャリアの持続可能性といった理論的論点と登壇者自身の経験とを照らし合わせて議論を深めた。あわせて、事前に応募した熱心な学生3名が代表質問者として壇上に登壇し、登壇者との直接の対話を通じて論点をさらに掘り下げた。これに続いてフロアからも活発な質疑応答があり、受講生と登壇者との間で双方向的なやり取りが交わされ、声優というジャンルに対する学生の関心の高さがうかがえた。
受講生にとって本回は、創造産業における個人事業の可能性を、統計的概観や教科書的記述によってではなく当事者の生の証言を通じて具体的に理解する機会となった。抽象的な概念と現場の実態とを往復的に捉えるという本科目のねらいに即した、教育上有意義な回であったと評価できる。