ゲストスピーカー実施報告
中央大学法学部との交流協定(主幹:法学部渋谷雅弘教授)に基づき、ミュンスター大学法学部のヨアヒム・エングリッシュ(Joachim Englisch)教授をゲストスピーカーとしてお招きし、商学部 阿部雪子 教授が担当するベーシック演習において、「VAT/GST Treatment of Crypto Assets(暗号資産に対する付加価値税/売上税の取扱い)」と題する講演が、10月21日(火・4時限)にオンライン併用のハイブリッド形式にて実施された。講演の司会および和訳は阿部教授が務めた。
エングリッシュ教授の講演では、暗号資産の発行形態・取引構造・利用目的が多様化するなかで、従来型の付加価値税(VAT)を一律に適用することの限界が指摘された。さらに、その検討にあたっては、財政中立性、最終消費課税、仕向地課税といったVATの基本原則に照らし、個々の取引の技術的・経済的実態を踏まえて判断すべきであることが論じられた。
講演後の質疑応答では、日本の暗号資産取引に係る課税関係を中心に、EU制度との比較法的観点から活発な議論が展開され、予定時間を超えて充実した意見交換が行われた。
阿部雪子教授 コメント
本講演は、ハイブリッド形式で実施され、ベーシック演習の受講生のみならず、大学院生や学外研究者の方々にも多数ご参加いただいた。EUの共通付加価値税制度(EU VAT)を参照しつつ、暗号資産取引に適合する課税の在り方を多角的に検討する貴重な機会となり、デジタル化・グローバル化の進展を踏まえた将来の税制上の課題を考える上でも重要な示唆を得ることができた。わが国における暗号資産取引の課税関係の検討にも大いに資する内容であった。