商学部には、ゼミと連携したグローバル教育「グローバル・フィールド・スタディーズ(GFS)」があります。
商学部「国際教養演習(担当教員:小田悠生)」の学生がGFSの活動として、2025年1月29日(水)~2月6日(木)でアメリカ・ニューヨークを訪問し、ゼミ生の研究テーマである〈今〉に関する実態調査を行いました。*本調査は中央大学商学部「特色ある学部教育補助」により、渡航費用の一部補助を受けております。
国際教養演習は、世界の言語、歴史、文化等に関する知識を深め、それらと関連があるビジネスや社会活動について学習し、将来、多様な言語・文化背景を持つ人々と協働するために必要な能力の習得を目標とします。
調査報告
調査目的
本ゼミでは、植民地期から現代までのアメリカ合衆国の歴史と文化について学んできた。本調査では、ニューヨークとその近郊を対象に、主に次の二つの点について調査を行った。一つは、都市における移民コミュニティの形成について。もう一つは、コミュニティとしての大学と、大学と地域コミュニティの関係構築についてである。
調査結果
<都市における移民コミュニティの形成>
全米有数の移民都市であるニューヨークでは、総人口880万人のうち約三分の一は外国出身者である。さらに同市で生まれる新生児の半数以上が移民の親を持つ。今回の実態調査では、ドミニカ系に次いで、同市における第二の移民集団であり、その増加率が最も高い中国系移民と、中国系コミュニティについて学んだ。中国からニューヨークへの移民の歴史は長く、およそ180年前に遡ることができる。現在は、新旧の中国系移民・中国系アメリカ人によって市内に9か所のチャイナタウンが形成されている。なかでも、本実態調査で訪れたマンハッタンのチャイナタウンは19世紀以来の歴史を持ち、異なる時代・出身地の中国系が脈々と築いてきた歴史が重層を成している。隣接するリトルイタリーが、イタリアからの移民の減少とともに縮小の一途を辿っているのと対照的に、いまなお拡大を続けるエリアである。本調査では、地区内の様々な建物や看板を観察することで、どのようなエスニックビジネスや相互扶助ネットワークが展開されているのか調査した。また、全米華人博物館(Museum of Chinese in America, 1980年設立)を訪れ、19世紀以来現在までの中国系アメリカ人の歴史や、チャイナタウンの果たしてきた役割について貴重な歴史資料を通じて学んだ。さらに、ニューヨークパブリックライブラリーを訪れ、ニューヨーク市全体の歴史や他地区の歴史を学ぶことで、それぞれの地区の特色についての知識を深めた。
<大学コミュニティ>
ニューヨーク市から2時間ほど離れた、隣州のコネチカット州ニューヘイブンに位置するイエール大学を訪れた。同大の特徴の一つは、イギリスの大学に倣いカレッジ制を敷いている点である。各カレッジでは1年生から4年生までが寝食を共にし、大学生活の核となる場である。1960年代末までの同大は女子学生の入学を認めておらず、白人プロテスタントの男子学生が大半を占める、極めて同質性の高い大学であった。今日では入学者選考において様々な観点から多様性を確保するともに、各カレッジには専攻やバックグラウンドの異なる学生が割り振られ、多様な学生が4年間を通じてコミュニティを形成することを重視する方針をとっていることが分かった。大学内では強固なコミュニティが形成されている一方で、地域コミュニティとの関係が大きな課題である。イエール大はアイビーリーグの中核を成す全米有数の私大であり、学生の多くは全米でも最富裕層の出身である。他方、同市が位置するニューヘイブン市民の25パーセントは貧困層であり、同市における貧困率は全米平均の2倍にのぼる。人口13万5千人の中都市内には著しい格差が存在する。こうした問題への取り組みの一貫として、イエール大は、地元の公立学校の生徒向けのプログラムを提供するといった取り組みのほか、大学による地元住民の雇用、大学発のベンチャービジネスによる地域経済の活性化を図っていることを学んだ。