日本学生経済ゼミナール大会とは、全国の経済学部・経営学部・商学部の学生による日本最大の学術大会であり、第70回大会では、予選はオンライン形式、決勝は東北学院大学を会場とする対面形式で開催されました。今大会には、全国から85のチームが参加し、参加者数は350名でした。
その中で、渡辺ゼミの3年生の2つのグループが、決勝の分科会1と分科会2で、それぞれ最優秀賞を獲得しました。
第70回日本学生経済ゼミナール大会
最優秀賞
題目名:「ライト層の再観戦意図に及ぼす影響に関する実証的研究 -スタジアムで得られる感動体験に着目して-」
発表者名:加藤千佳子、加藤夏実、石垣柚乃、須田雄也、都文音(商学部 渡辺ゼミ 3年)
発表内容の概要:
Jリーグの多くのクラブは、スタジアム観戦回数が1,2回以下のライト層を、いかに3回目の観戦に導くかを課題として認識しています。3回目の観戦をした人は、その後、継続してスタジアムで観戦をする傾向がありますが、そこに到達する前に、つまりライト層の段階で多くが離脱してしまうからです。本研究では、その点を問題意識として、ライト層の3回目以降の観戦を促すメカニズムを解明することを目的として行われました。そして、試合内容に加えて、スタジアムでのエンターテイメント、ホスピタリティ、応援、および施設の外観などを独自に概念化して、それらについてライト層の意外性の認知を促進し、感動体験を喚起することで、ライト層の再観戦意図を高めることを明らかにしました。そのうえで、意外性の認知を促進するためのオリジナリティの高い施策を提案しました。
最優秀賞
題目名:「アメーバ経営システムが首尾一貫感覚に及ぼす影響メカニズムに関する実証的研究」
発表者名:山部珠夢、森優人、福井春香、窪田真衣、南里咲花、松川拓真(商学部 渡辺ゼミ 3年)
発表内容の概要:
アメーバ経営システム(以下、AMS)は、日本的な管理会計システムとして、ここ20年間関心を集め、実務界での導入事例も非常に増加しています。AMSは組織の収益性を抜本的に改善する仕組みとして注目されていますが、他方でそれが組織成員の心理に及ぼす影響についても徐々にではありますが着目され始めています。しかし、実証的な解明を行っている先行研究は少ない状況です。本研究は、組織成員のストレスを軽減することにつながる首尾一貫感覚という心理的な概念に着目して、AMSの諸特性が、首尾一貫感覚を促進することを、徳島県の西精工㈱の全面的なご協力を得てデータを収集して、実証的に解明しました。さらに、同社を訪問し、参与観察ならびにヒアリング調査を行い、AMSが首尾一貫感覚を促進するメカニズムに関する洞察を得て、具体的なその促進策を提案しました。
教員コメント
渡辺 岳夫 教授|商学部 会計学科
多くのJリーグのクラブが悩み解決できずにいる,ライト層の観戦意図を促進するという非常に困難な課題に取り組んだグループは,まずはその促進のメカニズムを理論的に解明するために,スポーツビジネスに加えマーケティング領域に関して膨大な先行研究のサーベイを行いました。また,そのメカニズムが現実にあてはまるかどうかを検証するために,ライト層からデータを収集することに多大な努力を傾注しました。分析結果はJリーグのクラブ関係者にも提示され,さらに実践に対して具体的な提案も行い,大きな貢献をしました。
次に,アメーバ経営システムを研究したグループについてですが,同システムの心理的影響に着目したオリジナリティ溢れる研究です。首尾一貫感覚という組織心理学の文脈ではほとんど扱われないけれども,例えばアウシュビッツの強制収容所からの生還者の中で,その後トラウマに支配されずに健康に生活できた人は,この首尾一貫感覚であったということから分かるように,組織において健康的に仕事をしていくためには非常に重要な概念に着目したことは,非常に素晴らしいです。