商学部

「Jリーグ・ビジネス論Ⅰ(明治安田生命寄付講座)」に横浜F・マリノスの元代表取締役社長の嘉悦朗氏が登壇しました

商学部の『スポーツ・ビジネス・プログラム』の科目の一つである「Jリーグビジネス論Ⅰ(明治安田生命寄付講座:担当教員 渡辺岳夫)」に、6月8日(木)、横浜F・マリノスの元代表取締役社長の嘉悦朗氏が登壇しました。


「Jリーグ・ビジネス論」では、主としてJリーグの各クラブの経営者・経営管理者が講師として登壇して、地域特性、スポンサー特性、スタジアム特性、サポーター特性を踏まえて、どのようなクラブ経営を行っているのかをご講義いただいています。

 6月8日の授業では、 嘉悦氏が主として当時のマリノスで行った改革について、ご講演いただきました。すなわち、同氏が社長に就任した当時、親会社の日産に過度に依存する収益構造が常態化しており、親会社の経営状況の変化がクラブの死活問題に直結する状況であったとのことでした。実際に、2009年の嘉悦氏社長就任の前年にリーマンショックがあり、親会社の経営状況の悪化に伴って、マリノスの経営も悪化し、強化も十分に行えない状況でした。
 そのような中で就任した嘉悦氏は、持続可能な成長の基盤づくりをキーワードとして、マリノスの抜本的な経営改革に着手しました。最も重視したのは日産への依存度を下げ、自力で成長できる強い経営基盤を作ることでした。そのプロセスは三つの段階に分かれていました。
 第一段階として着手したのは「マリノスの再生」でした。マリノスが本来いるべきポジションに戻るために、まずは自力で収益を改善し、チーム強化の原資を生み出す。そして、その原資を賢く使い、強くて魅力的なチームを作ることを目指しました。自力で収益を改善する取り組みに関しては、日産のV字回復に大きく貢献したCFTというチーム活動を活用し、多様なアイデアを結集し、実行することで、クラブ史上最高の収益を達成しました。また、チームの強化に関しては、収益の改善によって生み出された原資を活用して、中村俊輔選手の獲得を実現するととともに、より費用対効果の高い強化を図るために、監督との議論を重ね、チームのスタイル(戦術)の確立を目指したそうです。結果として、収益もチーム成績もV字回復し、マリノスの再生はほぼ達成されました。しかし、クラブの総力を挙げた改革の成果をもってしても黒字はわずかであり、収益体質は依然として厳しいこと、さらにチームも最終戦で優勝を逃し、シーズンを通して盤石の強さを発揮できなかったことから、収益も強化も第一段階の改革だけでは限界があることも明らかになりました。
 そこで改革の第二段階、すなわち「マリノスの進化」を目指して、シティ・フットボール・グループとの資本提携に取り組みました。これにより収益面に関しては、同グループが有するグローバルなブランド力と、先進的なマーケティング戦略やツールを共有することで、飛躍的な収益拡大を目指すとともに、チーム強化に関しては、世界最高峰の知見やノウハウ、システムを共有することで、他を圧倒する強さを身に付けることを目指しました。
 そして、改革の最後の段階として、コスト面で非常に大きな負担となっており、経営上避けて通ることのできない難題であった「マリノスタウンの移転問題」の決着に取り組んだとのことです。
 以上の三段階、6年間にわたる改革によって、現在のマリノスの礎が築かれたといえるでしょう。

関連Webページ