商学部

「Jリーグ・ビジネス論Ⅰ(明治安田生命寄付講座)」に水戸ホーリーホック 経営企画室の瀬田元吾氏が登壇しました

商学部の『スポーツ・ビジネス・プログラム』の科目の一つである「Jリーグビジネス論Ⅰ(明治安田生命寄付講座:担当教員 渡辺岳夫)」に、6月1日(木)、水戸ホーリーホック(以下、水戸HH)の経営企画室の瀬田元吾氏が登壇しました。


「Jリーグ・ビジネス論」では、主としてJリーグの各クラブの経営者・経営管理者が講師として登壇し、地域特性、スポンサー特性、スタジアム特性、サポーター特性を踏まえて、どのようなクラブ経営を行っているのかをご講義いただいています。

 61日の授業では、クラブのミッション、ビジョン、バリューの上位概念としてのブランドプロミスについて、最初にご説明いただきました。すなわち、「新しい原風景をこの街に」であり、その意味は「ふと人生の節目を迎えたとき、同じ時代、同じ町で共に育ち成長できたあの日々、幸せを感じられたあの瞬間、感情を揺さぶられたあの場所、それらすべてが水戸HHと関わる日々によって記憶された風景であったと気づく。歴史を継承し未来の誰かの心に刻まれる。新しい原風景を一緒に創っていくことを約束します。」ということでした。

 次に、水戸HHの現在地についてご説明いただきました。まず、日本のスポーツビジネスで最も市場規模が大きいのは、約1,5002,000億円(個別で最大はソフトバンクで300億円超)のプロ野球であり、二番目は1,300億円程度(個別では神戸が100億円超)のJリーグであり、内訳はJ1800億円強、J2400億円弱、J3100億円強であると説明されました。その後、J1に昇格するようなJ2のクラブは20億円強の売上規模があり、水戸HH10.24億円(2022年度)であるが、年々売上は漸増してきていると付言されました(10年前は売上5億円)。J2内で比較してみると、その上位9クラブの売上は20億円を超え、J2平均は17.2億円という状況の中、水戸HHは下から6番目の売上規模であり、今後いかに売上を増やしていくのかが非常に重要な課題であるとされました。

 最後に、今後の水戸HHの生存戦略について言及され、それを「最高の通過点戦略」という言葉で表現されました。水戸HHは若手中心のチーム構成を目指し、Jリーグの60クラブの中で2番目に若いチームであり、平均年齢は23.5歳(Jリーグ平均26.2歳、ラリーガ27.9歳、プレミア27.1歳、セリエA26.7歳、ブンデス26.2歳、リーグアン26歳)であるとしたうえで、水戸HHの戦略としては、経験値よりも若さとポテンシャルにかけ、高卒・大卒の優秀な選手を積極的獲得する方針であると説明されました。水戸HHからは、U 20 代表に2名選出されており、Jリーグの中でも屈指の選手育成クラブとの認知を得ているとのことでした。実際に、多くの選手が、J1J2の上位クラブに移籍しているとのことでした(2019から2021年の間に9人がJ1クラブに移籍、移籍者の33%、これは他クラブの22%を大きく超過)。J1や海外に行きたいと思っている優秀な若い選手は、ステップアップのための通過点として、また人間教育をしっかり行ってくれるクラブとして、水戸を魅力的に思ってくれているとのことでした。そして、そのことに水戸HHは価値を置いており、現実として、移籍金収入も多く得られていると説明していただきました(2021年の売上規模8億円のところ1億円)。

 戦略上重視しているもう一つの視点は、グローバル化であるとも言及されました。ローカルの視点から、ホームタウンを大事にしたり、上述のように日本人選手のタレント発掘をしたりしてソフト面を充実させるとともに、インフラ整備事業にも力をいれつつ、グローバルも視野に入れているので、水戸としてはグローカル戦略を採用しているとのことでした。グローバルの視点として、ドイツのブンデスリーガ2部所属のハノーファー96と育成業務提携を結んだことの意義を熱弁されました。

 非常に論理的なご説明に学生は集中して聴講し、最後には活発な質疑応答が行われることになりました。

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