理工学研究科

外国人研究者講演会等の記録

2023年度

氏名 国名 所属機関 受入区分 職名 講演会開催日 テーマ 参加人数 概要
Feng Maria Qing アメリカ コロンビア大学 第2群 教授 2023/5/11 From Sensors to AI: Innovations Shaping the Future of Our Built Environment 50  橋梁や建物等の構造物のヘルスモニタリング技術について、その歴史からIoTやAIを用いた最新技術に至るまで、興味深い実例を多数取り上げて分かりやすい説明がなされた。また、自身のこれまでの研究成果の中から、カメラを用いた橋梁の振動解析および異常検知に関する技術や、構造物の非破壊検査技術、赤外線カメラによる建物断熱性検査技術などについて紹介があった。質疑においても多くの質問やコメントが寄せられ、活発な意見交換が行われた。
Mittal Sanjay インド インド工科大学カンプール校 第2群 教授 2023/5/26 スポーツにおける空気力学 25 ゴルフ、フィールドホッケー、サッカー、野球、テニス、クリケット、バレーボール、バドミントンなど、さまざまなスポーツで使用される発射体の空気力学を実験と数値シミュレーションの両面から解明している。低速風洞での実験を行い、異なる速度での力の測定と抗力係数について詳細に研究している。クリケットのボールスウィングにおける縫い目の役割や、シャトルコックの変形が流れや抗力に与える影響についても詳細に検討している。また、クリケットのナックルボールの空気力学と、フリスビーを通過する流れに関する予備的な知見について示された
Magnani Valentino イタリア ピサ大学 第2群 准教授 2023/7/7 斉次群内の部分多様体の面積 10 斉次群内の部分多様体の面積公式に関する講演が行われた。この講演ではMagnani氏のこれまでの研究成果を与えられるとともに、今後の研究に関する問題点も提示された。セミナーでは参加者と活発な議論が展開され大学院生にはかなり刺激的なものとなった。
Meigniez Gaël フランス エクスーマルセイユ大学/マルセイユ数学研究所 第1群 教授 2023/9/4 Γ構造の分類空間の基礎 35 葉層構造のホモトピー論における中心的対象である分類空間 BΓ_n のホモトピー型と、葉層構造の特性類、Bott の消滅定理、及び、Mather-Thurston 理論などについて、微分トポロジー一般についての高水準の知識は仮定したうえで、初等的な水準から始めて解説がなされた。特に、近年 Meigniez 氏が進めている h-原理の観点からの理解の仕方の大きな進展が解説された。
Peter Hannaford オーストラリア スウィンバーン工科大学 第2群 特別教授 2023/10/12 ボースアインシュタイン凝縮を用いた時間の結晶化 15  ボースアンシュタイン凝縮体を用いた離散的時間結晶について理論的および実験的の両面から幅広い知見によりわかりやすく講演された。近年ノーベル物理学賞等でも話題になった時間反転対称性のやぶれとも深い関係のある、状態の時間軸での結晶化は、冷却原子気体を用いた精密な実験により実現され、空間欠損である量子渦や多体系の局在化、またトポロジカル物理にも大きく貢献してきたが、時間結晶の実現により、これまで空間で用いられたこれらの物理現象を時間軸へ発展する可能性を詳細に説明された。現在、離散的な時間結晶実現に向けての実験手法の紹介と研究進捗状況にも触れ、さらなる発展を示唆された。学内の教員および大学院生に加えて、学外からも複数名参加された。特に、本学学部生および大学院生も質疑応答に参加し有意義な講演会となった。
Brandl Roland ドイツ マールブルグ市 フィリップス大学 第2群 名誉教授 2024/2/9 動物群集の環境要因への応答における機能形質の役割 25 生物の機能形質の定義や分類、定量化に使われている指標について説明し、近年の研究について講演をいただいた。機能形質の概念を用いた研究から得られる知見とその社会問題の解決に向けた活用について、活発な議論が行われた。

2022年度

氏名 国名 所属機関 受入区分 職名 講演会開催日 テーマ 参加人数 概要
SOHN Woonyong 韓国 忠北大学 第2群 助教授 2022/6/29 水分解材料とその応用 40 孫先生が行っている光触媒水分解材料についての研究紹介を行った。複合磁性酸化物を光触媒材料として展開した材料の開発過程とその材料の分析評価方法について講演を行っていただいた。さらに、ヘマタイト材料を例に、光触媒材料の評価方法として、光照射インピーダンス測定法の原理・適用例について紹介され、会場からも活発に議論が行われた。
Behr Marek アメリカ アーヘン工科大学 第2群 教授 2022/10/6 Space-Time有限要素法の新展開 25 Moving-boundary flow simulations are an important design and analysis tool in many areas, including civil and biomedical engineering, as well as production engineering. Interface-capturing offers flexibility for complex free-surface motion, while interface-tracking is very attractive due to its mass conservation properties at low resolution. We focus on these alternatives in the context of flow simulations based on stabilized finite element discretizations of Navier-Stokes equations, including space-time formulations that allow extra flexibility concerning grid design at the interface.
Space-time approaches offer some not-yet-fully-exploited advantages; among them, the potential to allow unstructured space-time meshing. New methods for generating simplex space-time meshes have been developed, e.g., allowing arbitrary temporal refinement in selected portions of space-time slabs. The resulting tetrahedral and pentatope meshes are being used in the context of cavity filling flow simulations, such as those necessary to design injection molding processes. A related approach allows for robust and accurate handling of topology changes, as often encountered in free-surface flows and in fluid-structure interaction with dynamic contact.
Assogbadjo Achille ベナン アボメカラビ大学 第2群 教授 2022/10/13 ベナンにおけるSDGs残課題と解決に向けた挑戦 150   ① 梅田学部長 ご挨拶
  ② アソクバッジョ教授 (Univ. of Abomey-Calavi)
  ③ Carlos Oba (Dots for, CEO)
  ④ Hotes Stefan教授 (Chuo Univ.)
  ⑤ パネルディスカッション(ベナン大使館職員を含めての)

アソクバジョ教授からは、アボメカラビ大学の教育システムおよびSDGsに向けた西アフリカ大学連合の目指す姿についての紹介があった。
Carlos氏からは、DotForで実現するベナンの通信システムの普及展開および社会変革にむけた想いとビジョンについての紹介があった。
˚ホーテス氏からは、SDGs課題の解決にむけて、多様な専門家が協力することの重要性について、紹介があった。
パネルディスカッションでは、今後のベナンの社会課題の解決と、日本の大学生の世界での活躍などを目指して、新しい教育システムを協力して構築する方向について、議論された。
Peng Chien-Yu 台湾 中央研究院統計化学研究所 第3群 准研究員・教授 2022/12/16 劣化解析におけるプロファイル最適計画 18 劣化試験は、信頼性の高い製品の寿命情報を評価するために広く使用されている。劣化テストを実施する前に、設計変数に関する基本的な問題は、テストに必要な測定回数、テストの期間の長さ、等を決定することである。特に予算が限られている場合には大きな問題である。
コスト制約を使用して、製品の寿命分布の分位数の推定量の漸近分散を最小化することにより、穏やかな条件下で、設計変数に体系的な解決策を与えるプロファイル最適計画(POP)が、講演者より提案されている。
本講演では、POPの紹介とそこから導き出された理論的結果、及びそれらに基づく応用事例とその波及効果について紹介がなされた。
出席者全員が、英語で質疑応答に参加し、劣化現象に関する統計的アプローチの最先端の研究を知るだけでなく、英語の学習機会も得ることができ、有意義な講演会であった。
Laliotis Athanasios ギリシャ ソルボンヌ・パリ大学 第2群 客員准教授 2023/1/10 原子-表面間相互作用におけるレーザ分光研究 12 分子分光ようのセルサイズの微小化は量子センシング、周波数標準、基礎物理の応用への大きな足掛かりとなる。特に、ディッケ状態やカシミールポルダー相互作用の観測は基礎物理分野で重要視されている。多くの実験研究では原子気体を用いられてきたが、はるかに多くの内部状態を有する分子を用いることは今後の研究に大きな寄与を与えることが予想されているが、その遷移強度が微小なため実現が困難であった。このセミナーではパリ北大学の先端的分子分光の研究が紹介され、特に波長以下の領域の薄型セルを用いた部分反射分光実験について詳しい議論を行った。このグループではアセチレン分子の回転振動準位に着目し、その中で通信波長帯である1530nm光による分光実験および10.6μm光を用いたSF6分子とNH3分子の遠赤外分光実験についての成果が発表された。さらに高励起状態で原子半径がnmオーダーを超えるRydberg状態の原子を利用し、原子と表面との相互作用探索についての進捗状況を紹介した。これらの研究成果を主軸として、これまで明らかになっていなかった固体表面と分子との相互作用について発表され活発な議論が行われた。
Lynam Jason,M 英国 ヨーク大学 第2群 教授 2023/3/10 マンガンの触媒する反応の隠された経路に光を当てる 40  マンガンカルボニルから誘導されるマンガン錯体は、フェニルピリジンのC-H結合活性化と末端アルキンの挿入を鍵反応とする触媒反応を行う。この反応を高速赤外スペクトルを用いて触媒反応条件下で追跡すると、通常のNMR等の分析手段では検出できない各種の中間体が短寿命の化学種として観測でき、どのようにこの反応が進行するかを詳細に明らかにできる。この手法の利用の実際と、どこまでを明らかにできたかについて、詳しい説明をいただいた。また講演内容全体にわたって活発な討論があった
Lindsay Richard 英国 東ロンドン大学 第2群 環境学・保全生態学部長 2023/3/16 Making visible the invisible 16 At this seminar, we will discuss the challenges of living and working within the limits of the ecosystems around us, focusing on peatland ecosystems. Peatlands store large amounts of carbon. Depending on how water and vegetation are managed, they can continue to capture carbon, but they change to carbon emitters when they are drained. Maintaining peatland biodiversity and managing the role of peatlands in the climate system requires novel economic approaches to integrate sustainable resource management into business concepts. Transdisciplinary research involving scientists from all relevant fields as well as practitioners is needed to achieve this. This seminar provides a forum to explore these opportunities for collaboration.
Rau Pei-Luen Patrick 台湾 清華大学 第1群 教授 2023/3/17 会話機能を持つIoTとのインタラクションと文化による違い 30 モノのインターネット会話エージェント(IoT-CA)は、人間とコンピュータのインタラクションをユビキタスにしている。136人の参加者を2つのIoT-CA使用パターングループ(共同使用:2人でIoT-CAを使用、個別私用:1人でIoT-CAを使用)と、3つの相互作用条件(IoT-CA使用なし、会話内容に関連したIoT-CA使用;会話内容とは無関係なIoT-CA使用)の3つの相互作用条件を設定した。
その結果、IoT-CAを使用しない場合と比較して、IoT-CAの使用は会話体験に否定的な影響を与えず、パートナーにIoT-CAに対するより大きな親近感をもたらすことが示された。さらに、IoT-CAの共同使用はさらに、内容関連条件(IoT-CAが対人関係に関連したコメントをする)におけるIoT-CAの共同使用や、対人関係の自己開示を増加させるのに役立った。
氏名 国籍 所属機関 受入区分 職名 受入れ期間 研究者交流の内容
Vincze David ハンガリー UNIVERSITY OF MISKOLC 第3群 准教授 2022年7月15日~2023年3月31日 本教育・研究交流は申請者らが以前より取り組んでいる動物行動学に基づくソーシャルロボットに関する研究(Ethologically-inspired Robotics:Etho-robotics)に基づいている。Etho-roboticsはソーシャルロボットの自律的社会的行動を実現する新しいアプローチであり,動物行動学により明らかにされてきた犬の行動パターンをロボットの行動生成アルゴリズムに適用するものである。受入研究室は人とロボットの相互作用(Human-Robot Interaction)研究において豊富な経験を有している。特に,実機ロボット,及び人とロボットの位置,姿勢を観測する計測装置を有し,実機による人とロボットの相互作用に関する研究に実績がある。Vincze博士は動物行動学的知見に基づく犬の振る舞いの数学的モデリングを行い,ロボット制御アルゴリズムの開発,特にEtho-robotics として最初に愛着行動の数学的モデル化とシミュレーションを実現した実績がある。
Vincze博士は受入研究室にて研究活動に取り組み,研究室ミーティング,グループミーティングへの参加だけでなく,研究室の学生らと日常的に交流し,日々の研究活動において生じる技術的課題の解決に大いに貢献してくださった。特に自身も研究に活用された,ネットワークを介したロボットの制御,ロボット開発プラットフォーム(ROS),移動ロボット制御ボードに関する知識をはじめとし様々な技術的知識と経験を学生と共有し,学生らの研究活動が大いに促進された。