法学部
【活動レポート】川村 碧 (国際企業関係法学科2年)
「やる気応援奨学金」リポート(63) イギリスとスウェーデン留学 英語力向上と環境問題調査で
私は、この度「やる気応援奨学金」に応募し、30万円を支給していただいてイギリスとスウェーデンの2カ国に行ってまいりました。私の今回の留学の目的は大きく分けて3つです。1つはもちろん語学学校に通い、自分の英語能力を向上させること。2つ目はイギリスで環境ボランティアに参加すること。そして3つ目はスウェーデンの3都市を訪問し、環境問題への取り組みを自分の目で確かめることです。私は以前から環境問題に興味があり、実際に環境問題への取り組みが盛んな国を訪問して調査をしたいと考えていました。北欧の国々は環境政策に早くから取り組み、技術も進んでいると聞いていたので、かねてから興味のあったスウェーデンを訪問することに決めました。スウェーデンであればイギリスからも近いので都合が良いというのも理由の1つです。そのようなわけで私はあこがれの国、イギリスとスウェーデンに五週間滞在することを決意したのでした。
イギリス・語学学校
イギリスでの目的は語学学習が主だったため、ロンドンの中心部にある語学学校(British Study Centre)に通いました。メールに対する親切な対応と日本人留学生の少なさが決め手でした。午前中はグラマーの授業で午後はスピーキングの授業を取り、クラスは10人程度の少人数だったので、かなりアットホームな雰囲気の中で英語を学ぶことが出来
ました。スピーキングの授業では人種の全く異なった人々の中で発言しなくてはならず、そういう場ではなかなか自分の意見を言うことが出来ない自分がいました。意見を言いたくてもどういうふうに言って良いのか分からず、自分の英語力のなさをもどかしく思いましたが、ほかの生徒はたとえ文法が間違っていても自分の言いたいことはどんどん言っていたので、その勇気には励まされました。誤った使い方をしている場合は先生がその度に直してくれたので、それはとても役立ったと感じています。大学の授業では同じ日本人同士で話しますから自分の英語が本当に正しいのか不安に思うこともしばしばあったのです。
またロンドンは世界的に優れた作品が集まる芸術の都市でもあったので、ナショナルギャラリーや大英博物館に毎日通って、辞書片手に絵画の説明文を読んだりしました。4週間ほとんど活動しっぱなしで、家に閉じこもっていたことはありませんでした。とにかく限られた時間を精いっぱい活用して出来るだけ英語を聞き、使うということが今回の留学の目的でもあったからです。イギリス人は冷たいという話をよく耳にしますが、決してそんなことはないと思います。最初の1週間はどこに行くにもまだ慣れなくて道を聞くことが多かったのですが、どんな人も丁寧に教えてくれましたし、むしろ日本人よりも親しみを覚えました。
環境ボランティア
2週目の週末に環境団体(British Trust for Conservation Volunteer…BTCV)のボランティアプログラムに参加してきました。はっきりいえばイギリスはそこまで環境活動に熱心な国ではないので、環境団体を見付けるのには苦労しました。私はインターネットでこの団体を調べ、Valley Mires and Bonfiresというプログラムに参加しました。私たちはロンドンから車で約2時間の所にある自然公園へと向かい、2泊3日で整備の仕事をしてきました。具体的にいえば雑木林になって土地が荒れるのを防ぐために木を切る仕事です。ヘルメットやのこぎりなど本格的な装備をさせられ、伐採の作業に当たりました。海外からの参加も受け付けていたので、さまざまな国籍の人がいるのかなと期待を膨らませていたのですが、私以外は生粋の英国人の皆さんでしかも年齢層が高めだったので、なかなか会話に交じるのが大変でした。しかし作業だけでなくたき火でジャックドポテトを作ってみんなで食べたり、夕食にカレーを作ったりとお楽しみもあったので、終わるころには結構打ち解けることが出来良かったです。私が日本人だからといって特別に気に掛けるふうでもなく、当たり前に一人の大人として接してくれたことはうれしいことでもありました。
スウェーデン・バックパッカー
四週間の語学研修を終え、スウェーデンへ渡りました。私は限られた時間の中で自分の目的を達成するために、6日間で3都市を回るというスケジュールを決行しました。1泊しては次の街へ向かうというスタイルでしたからスーツケースはヒースロー空港に預けて、バックパック1つでの旅となりました。空港を出ればそこは別世界。スウェーデンは国民のほとんどが英語に堪能であるとはいえ、日常語はスウェーデン語なので周りでは知らない言語が飛び交っていました。スウェーデン1日目、空港に降り立ってすぐに私はまず最大の目的地でもあるバールベリという街に列車で向かいました。バールベリはストックホルムから列車で4時間ほどの所に位置する街。風力発電のほか、街から20キロ離れた所にあるパルプ工場の熱水を街まで引き、電力として再利用するという面白い取り組みをしていました。私はスウェーデンには知り合いが全くいなかったため、事前準備の段階でありとあらゆる手段を使い、訪問都市を見付けようと試みました。インターネットで見付けたNGO「持続可能なスウェーデン協会」のレーナ・リンダルさんという方にメールをしたところ、今回のバールベリの情報とそこの市議会議員であるコニーさんを紹介していただけました。そして早速コニーさんと連絡を取り、訪問が実現したのです。私はバールベリのエネルギー事情、リサイクル、市としての環境政策について知りたいとメールをしていたのでそれに合わせてコニーさんがプランを立てていてくださいました。
まず始めにコニーさんのオフィスで市職員が環境に対してどのような取り組みをしているのかの説明を受け、その後、都市設計課、自動車整備工場、リサイクル場、電力会社の順に訪問しました。バールベリでは市の工場や会社に対し定期的に視察を行っているということで今回は自動車整備工場への視察に同行させていただきました。洗車後の洗浄液をろ過する機械を見せてもらったり、整備の際に出る廃棄物の分別の様子を見せてもらいました。工場の裏側を見せてもらうなんて小学校の社会科見学以来だったので新鮮でした。
リサイクル場は市内に10数カ所設置されており、住民はそこにごみを持ってきて分別して廃棄することが出来ます。紙類、プラスチックを始め、ガラス、色付きガラス、金属、家具、土(!?)に至るまで、これでもかというほど徹底されていて正直驚きました。日本にもこういうリサイクル場があることはありますが、結構小規模で市内からは離れた所にあるのが現状です。そういう意味では市内に位置するこのリサイクル場はアクセスもしやすく、大いに活用されているのかなと思います。
また、最後に訪問した電力会社(VARBERG ENERGY)ではバールベリの電力供給の仕組みについて、パワーポイントで分かりやすく教えていただきました。スウェーデンでは自分が使う電力の発電方法が選べるのです。風力、太陽光が主なものですが、ここバールベリでは選択肢にパルプ工場の熱発電も加わっています。この電力を使うにはパイプを引っ張ってくるための工事が必要なのですが、長期的に考えればほかの電力よりも安くなるそうです。またバールベリには風車が多く設置されていたので、特別にその中にも入らせてもらえました。風車の真下に立つと羽が回る音が聞こえて圧巻です。風車はすべてコンピューター制御されていて風向きによって羽の角度が変わり、効率良く発電出来る仕組みとなっています。
2日目に私はヨーテボリというスウェーデン第2の都市に向かいました。ここでの目的は環境施設(エコセントラム)に見学に行くことです。ここも「持続可能なスウェーデン協会」のホームページで見付けた施設で、日本でいえば環境問題をテーマにした博物館のようなものでした。食料、エネルギー、温暖化、リサイクルというふうにテーマごとに部屋が分かれていて展示がされています。実際に新エネルギーの発電装置が展示してあってとても面白いのですが、残念なことにほとんどの解説がスウェーデン語で書かれていてすべてを理解することは出来ませんでした。しかしトヨタの取り組みがクローズアップされていたりと日本の技術を感じることも出来、大変有意義な訪問だったと思います。
旅の後半はいよいよスウェーデンの首都ストックホルムへと向かいました。市内観光をしつつエコな部分を色々と発見。まず歩道に設置されているごみ箱が多いのです。ほぼ10メートル置きにはあってポイ捨てを防いでいるようですが、これはロンドンでもいえることでした。日本はテロ警戒のために最近はこのようなごみ箱もめっきり少なくなったように感じます。またスーパーマーケットを巡ることも目的の1つでした。それというのもスーパーはその土地の人々の生活に密接にかかわっていますし、外国のスーパーが日本とどう違うのか比較してみたかったのです。スウェーデンではCOOP, HOMEXというスーパーが有名なようでよく見かけました。私の予想どおり野菜売り場の野菜類はほとんど包装がされておらず、入り口にある袋を取ってその中に詰めていくというスタイルでした。土の付いたじゃが芋がそのまま山になって置いてあったりして、なかなか日本では見られない光景でした。またうわさでは聞いていたものの、ぜひこの目で見たかったのは缶・びんのデポジットマシーンです。大きめのスーパーには大抵置いてあって、使用済みの容器を機械に入れるとお金(65円程度)が戻ってくる仕組みです。このおかげかどうかスウェーデンの街で缶・びんのポイ捨てにお目に掛かることはありませんでした。
このように身近な生活の中に環境対策を採り入れて人々の意識を向上させることに北欧の国々は優れていると思います。風土、文化、人口が全く異なるスウェーデンのやり方を日本がそっくりそのまままねすることはもちろん出来ませんが、いかに国民の環境意識を向上させていくか、どうすれば人々を巻き込んで持続可能な日本を作り上げていけるかというメソッドの部分においては見習うべき点が多くあると感じました。またこの旅を通してバールベリのコニーさんを始めとするたくさんの見ず知らずの方々にお世話になり、人の温かさを実感することが出来ました。コニーさんはいきなりメールしてきた日本人学生を快く受け入れて1泊させてくださり、スウェーデンの現状についても色々とお話を聞かせてくださいました。ヨーテボリの駅のプラットホームで乗るはずの列車がこつ然と消えて衝撃を受けたり、列車が原因不明のまま1時間近く止まって疲労困ぱいしたり、信じられないほどまずい食べ物に出会ってしまったりとハプニングは数知れずありましたが、それもまた外国を旅するだいご味であり、ささいなことでは驚かない度胸もつきました。何よりも自分自身が頼りだという状況が私を強くしてくれたと思います。誰にも頼れない状況に自分を置くことで私でも出来るんだ、という自信がつきました。
この留学で得たこと
この「やる気応援奨学金」にエントリーしようと考えた時、すべて自分で計画を立て英語でエントリーシートを作成するなんて本当に出来るのだろうかと不安に思ったことを覚えています。まだどんな活動をしたいか分からなかった私は、先輩の活動報告を読むことから始めました。そこには本当に先輩の数だけ異なった活動が記されており、その多様さに驚きました。私にも私にしか出来ないオリジナルの活動があるはずだと一念発起し、そこから本気モードに突入したのです。実際に向こうで行った活動が実のあるものになったということはもちろんですが、私はむしろ行く前の準備期間に得たものの方が多いと感じています。語学学校との連絡、ボランティア団体の決定、航空券の予約まですべてを1人でこなすということはなかなか大変でした。しかもほとんどのやりとりは英語ですから、そのおかげで磨かれた英語スキルもあると思います。
そして私の場合はロンドンでの活動のほかにスウェーデンがありましたからこちらの調べを怠るわけにもいかず、準備段階で結構手いっぱいになってしまいました。スウェーデンの方は全く情報がなかったので、取りあえずインターネット、本、雑誌、イベントへの参加、人脈とあらゆる手段を使って情報を得ようと奮闘しました。結果的にこの時の経験がとても良い勉強になったと感じています。何もないところからどうやって計画を組み立てるか、いかにして自分の欲しい情報までたどり着くか。これは社会に出てからも必要とされるスキルだと思いますし、そのような経験を学生時代の早い時期に出来たということは必ずや自分にプラスに働いていくことでしょう。またこの奨学金に応募し、留学したことで出会った人々も私にとって掛け替えのない宝物です。行動すれば必ず得られるものはあるのだと私に教えてくれた留学でした。
草のみどり 237号掲載(2010年7月号)