法学部法学部長挨拶

猪股 孝史 中央大学法学部長

中央大学は、1885年に英吉利法律学校として創設され、法学部は、その精神を受け継ぐものとして、法学教育と研究に力を注いできました。

「社会あるところ、法あり」といわれるように、法は、私たちの社会、そして日常生活において、実のところ、きわめて身近な存在なのであって、朝起きてから夜寝るまで、意識するとしないとにかかわらず、さまざまな法的規制のもとで生活をしています。たとえば、水道や電気、ガスといった社会インフラ、通学や通勤におけるバスや電車の利用、ゴミの分別やリサイクル、受動喫煙防止やDV防止など、そこかしこで法的規制が張りめぐらされ、私たちの生活の安定を確保し、安心を与え、秩序を維持しようとしています。

このような社会を「法化社会」という言葉で表すことがあります。とりわけ現代では、いわゆるグローバル化が高度に進み、そうした社会にあっては、法的規制は、国内の場面だけでなく、グローバルな場面にまで広がらざるを得ず、「グローバルな法化社会」とよばれたりします。人権、環境保全、生物多様性、消費者・労働者保護、たばこ規制など、世界中の多くの国々の人びとがさまざまな法的規制のもとにあり、国境を超えて、国際司法裁判所や国際刑事裁判所、あるいは世界貿易機関で扱われる紛争や問題も増加しています。

「社会あるところ、紛争あり」ともいわれますが、「グローバルな法化社会」で生じる紛争や問題をいかに法的に分析・検討し、公正・適切で法的な解決を与えるかは、現代にあって喫緊の課題であるといわなければなりません。それに資する人材を養成すること、つまり、地球的な視野に立った法的問題意識と法的問題解決能力を備えた人材—いわば「グローバルなリーガルマインド」を身に付けた人材—を養成すること、これが、法学部が養成したいと考える人材です(ディプロマポリシー)。

そうした人材を養成すべく、法学部における学修は、「グローバルなリーガルマインド」の涵養を目指します(カリキュラムポリシー)。つまり、「グローバルな法化社会」を読み解き、適正な解決を与えるための基礎的な法律的・政治的な専門知識と、自立した地球市民として必要な批判的・創造的な考え方ができる資質と能力を涵養することを目的とします。そのために、法律や政治などの基本的な知識に加えて、外国語能力や実践的能力が必要となることから、法学部では、独自の留学プログラムやインターンシップ(国際、行政、NPO・NGO、法務)、やる気応援奨学金を利用した留学等への支援を用意しています。

法学部の卒業生は、法律学科でいえば、法曹資格を取得するほか、公務員として、または民間企業で、国際企業関係法学科については、外交官や外務省専門調査員として、また国際企業の法務部門などで、そして、政治学科については、公務員、NGO・NPOの専門スタッフ、ジャーナリストとして、ほかに、小説家、芸能人、スポーツ選手として、実にさまざまな分野で活躍しています。どのような分野であれ、法学部で培われた「グローバルなリーガルマインド」が役立つ能力であるのはたしかなことでしょう。