経済学部
経済学部「国際協力論」(林光洋担当)の公開授業で(株)JINの開発コンサルタントが講演しました
2025年06月03日
5月20日(火)の1時限目、経済学部の「国際協力論」(林光洋担当)では、JICAの主にサブサハラ・アフリカ地域におけるプロジェクトを実施する株式会社JINより、開発コンサルタントの石川渚さんと佐野耕至さんにお越しいただき、「サブサハラ・アフリカ向け開発協力事業 -ウガンダの生計向上支援および南スーダンの平和構築支援-」というテーマの公開授業が行なわれました。

学生たちに問いかける経済学部OGの石川渚さん
石川さんは経済学部林光洋ゼミのOGであり、JICAの青年海外協力隊(現在、JICA海外協力隊)の隊員としてザンビアでエイズ教育に携わった後、英国ロンドン大学衛生熱帯医学大学院の留学を経て2015年から(株)JINで活躍しています。2019年と2023年にも同様にご登壇くださいました(※1、2)。
経歴紹介と、同社の業務事例、ODAについての簡単な解説の後、「NUFLIP」と称されるアフリカ・ウガンダの北部農村地域における生計向上プロジェクトについてお話されました。
この地は作物の栽培に適した肥沃な土地ながら、人々は内戦による避難民としての生活が長く、農業の経験・知識の蓄積がありませんでした。そのため、農業技術を普及させて人々の収入向上と自立を促進するこのプロジェクトは、自家消費のための農業から脱却して「売るためにつくる」というマーケティングの考え方を取り入れることを主軸にし、その中で、「どのようにお金を稼ぐのか」、「どのように生活を豊かにするのか」という問いへの回答を求める現地の家族に石川さんは伴走し、家計管理の講習などに取り組んでいます。
動画で見た現地の暮らしぶりは豊かではなく、ある家族は家の藁ぶき屋根を長持ちするトタンに変えたいという目標設定を行いました。
生産性向上につながる農業技術の移転に並行して家計や栄養管理の講習も行ったプロジェクトは着実な成果を上げ、持続的な発展のために現地の人々を農業普及員に育成しているとのことです。
石川さんは開発コンサルタントとして「現地の生活習慣・文化を理解したうえで、現地の人々に受け入れられ、彼らの意識や行動の変容につながる活動をしていく」ということを大切にしていて、本案件はまさにそのとおりのプロジェクトなのだそうです。
続いて佐野さんが登壇されました。高校も、大学の学部も米国で学び、さらにコロンビア大学で教育人類学の修士課程を修め、他の開発コンサルタント会社勤務を経て、(株)JINに入社したというご経歴です。

佐野さんは南スーダンにおけるスポーツを通じての平和構築プロジェクトについて講演
JICAの事業について細かな分類を示しながら、ご自身が携わった南スーダンにおいてのスポーツを通じた平和促進プロジェクトの位置づけや意義を解説されました。
JICAのこのプロジェクトはNUD(National Unity Day:国民結束の日)と称される国内スポーツ大会の開催と草の根レベルの平和促進活動の実施を目標としており、佐野さんたちは、現場で、現地の人たちと話しながら実際にどうやればいいかを考え、実行するのが業務でした。
64の部族がある中で、公平を期し、交流で相互理解を深めるために、さまざまな工夫を凝らしたとのことです。選手は、縁故で選ばれないように、運営委員がモニタリングする予選会で選考したり、大会中の選手は学校を借り上げた宿舎で共同生活をして交流を促したりするなど、具体的な事例を写真とともに紹介くださいました。内戦の絶えない国で、佐野さんが滞在していたときにも銃声や武器庫の爆発などもあったと言います。
草の根レベルの平和促進活動としては、ほぼカリキュラムが存在しなかった体育の授業を整えたり、スポーツアカデミーで若年層の選手の保護者につながりを作ったりするなど、協調や団結の気持ち、相互扶助の精神を芽生えさせるという取り組みを地道に続けたそうです。 「平和構築」という抽象的な目標を「社会的つながりの構築」と再定義することで、具体的なアクションと成果につなげたということでした。

講演後、学生たちからの質問に回答する石川さん(右)と佐野さん(左)
講演後、3人の学生からのサブサハラ・アフリカの開発や平和構築に関連した質問に対して、石川さんと佐野さんは丁寧にお答えくださいました。アフリカを訪問した経験のある学生もいて、具体的な質問がでていました。
4時限目および5時限目には、お2人とも、経済学部とFLP国際協力プログラムの林光洋ゼミの授業を参観してくださいました。林ゼミの3年生はフィリピンの貧困層を対象としてチームで進める研究プロジェクトがあり、この日は3つのチームそれぞれがプレゼンテーション資料と研究計画書を携えて中間報告を行い、お2人からコメントやアドバイスをもらうという機会でした。

住宅班の報告に、石川さんと佐野さんが講評
2025年度は、インフォーマル居住地域における住宅の抵当事業に関する住民の組織化について研究するチーム(住宅班)、親向けの栄養教育と食行動の変化を研究対象にしたチーム(栄養教育班)、コミュニティで保健・医療分野の活動を行う住民ボランティアの役割とその機能の向上を探るチーム(保健班)の3つに分かれています。

保健班からの報告と講評

栄養教育班からの報告
石川さんと佐野さんは資料を丹念に読みながら報告を聞き、現地調査で調査すべき点から資料のさらなる集め方、研究のロジック、構成まで有用なアドバイスを多くくださり、ゼミ生たちにとって非常に実りある時間となりました。

ゼミ授業終了後の集合写真
※1 経済学部ニュース(2019年12月23日) 経済学部「国際開発論」特別授業「途上国開発の現場:ウガンダ、ナイジェリアにおける技術協力の事例から」が実施されました
※2 経済学部ニュース(2023年06月30日) 経済学部「国際協力論」(林光洋)で卒業生の石川渚さん(開発コンサルタント)が「アフリカの農村開発プロジェクト」について講演しました