経済学部

経済学部「国際協力論」(林光洋)で卒業生の石川渚さん(開発コンサルタント)が「アフリカの農村開発プロジェクト」について講演しました

6月20日(火)1時限目の経済学部「国際協力論」(林光洋担当)では、株式会社JINの開発コンサルタント石川渚さんと永石諒さんにお越しいただき、「国際協力の現場から ―北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト―」というテーマの特別授業が行なわれました。

石川さんは経済学部林ゼミのOGで、2019年にもゲストスピーカーとして特別授業にご登壇くださいました(※1)。2015年から(株)JINにおいて開発コンサルタントとして、主にサブサハラ・アフリカ地域の国々の技術協力プロジェクトに携わっています。

最初に永石さんより、(株)JINについてのご紹介がありました。
(株)JIN は、JICAのアフリカ諸国向け技術協力プロジェクト案件を多く実施しているが、永石さん自身はインドネシアの南スラウェシにおける「マングローブの保全・植林についての環境調査」を担当しているという説明から始まりました。マングローブ林の保全とエビの養殖事業などについて、ドローンの空撮映像なども見せながらお話しくださいました。授業の冒頭でしたが、このマングローブの話が印象に残ったようで、学生は、Q&Aコーナーで永石さんに質問を投げかけていました。

続いて経済学部OGの石川さんの「北部ウガンダ生計向上支援プロジェクト」の話となりました。ウガンダの北部は肥沃で豊かな降水量のある広大な土地を持ちながら、20年以上続いた内戦により「農業」についての知識、技術、経験の蓄積がなく、首都カンパラのある南部と比べて貧困者の割合が多くなっています。自家消費のためだった現地の農業を市場志向型農業に変えていくことで現金収入を増やし、貧困の解消を目指すのがこのプロジェクトです。

石川さんは、まず、プロジェクトの紹介用動画を流してくださいました。その動画と石川さんの説明から、売ることを意識した市場志向型野菜栽培のための技術だけではなく、作物を適時に適量売るために必要な家庭の備蓄管理、家計管理、食生活の改善、ジェンダー配慮といった生活技術までをカバーした農家の生計向上を狙ったプロジェクトであることを学生たちは理解することができたはずです。プロジェクトが終わったあともウガンダ北部のこの地域に「生産の向上と生活の向上を通じた生計向上」という考え方を確実に根付かせ、その実現を持続させる、という熱意が感じられるものでした。

プロジェクトの動画に加えて、北部ウガンダ・アチョリ地方の人々の暮らしの動画も見せてくださいました。360度カメラで撮影された動画には、日干し煉瓦を積んだ壁に草を葺いた屋根の素朴な家や、電気のない暗いキッチン、その傍らに置かれた備蓄食糧(メイズ)なども映っていました。
このプロジェクトに参加する際、「パーマネントハウス(草葺きではなく、トタン屋根の家)にしたい」、「牛を飼いたい(農作業を楽にする)」といった目標を設定する農家世帯が多いという説明がありましたが、なぜそのような目標を持つのかが、実感を持ってわかる映像でした。

石川さんは動画や写真を多く用いながら丁寧に説明してくださいましたが、その中で現地の人々がどのような考え方をするのかについて触れる場面がたびたびありました。
先進国の考え方をそっくりそのままトレースさせる技術移転ではなく、生活を共にし、現地の文化を尊重し、現地の考え方と無理なく融合させるような農業・農村開発を目指していました。そこにはやはり、「プロジェクト終了と同時に技術が失われないように」という願いが込められているのだと感じとることができました。

 

石川さんと永石さんは、4~5時限目の林ゼミの授業にも参加してくださいました。
林ゼミの3年生は、フィリピンを対象にした1年間の研究プロジェクトを実施中で、夏に予定している同国での現地調査を目前に、研究計画を精査している段階です。石川さんと永石さんに向けて研究背景や研究概要を3つの班が発表すると、お2人はメモを取りながらじっくり聞いたうえでさまざまな指摘やアドバイスをするなど、熱意のこもった指導をしてくださいました。

5時限目には、林ゼミ卒業生(2010年3月卒業、FLP林ゼミ第1期生)の山岡幸司さんが英語科の教鞭を執る品川女子学院の高校生5名が合流しました。この時間は、「国際協力」や「途上国」を軸にして、林ゼミの学生と品川女子学院の高校生から、思っていること、考えていること、疑問に感じていること等を自由に話し、(株)JINのお2人がそれらに対してコメントをしたり、回答をしたりする、フリー・ディスカッションの時間となりました。

これまでのキャリアや言語の壁、国際協力の心構えなど、「途上国で働く」ことについてのさまざまな考えや疑問が飛び交いました。中には、現場主義の石川さんの仕事を知ったうえで、「自分は石川さんのように途上国の現場で長期間活動することはできないかもしれないが、現場から離れたところで国際協力に携わるとしたらどのようなキャリアプランがあるのか」といった自身のキャリアの選択を真剣に考えていると思わせる質問もありました。

授業の最後に、石川さんと永石さんは、その場にいたゼミ学生と高校生に向けてメッセージをくださり、この日のプログラムは終了しました。たいへんに実りのある時間になったことは、学生たちの顔が物語っていました。

石川 渚さんからのメッセージ

たいへんなことも辛いこともゼミ活動ではあるでしょうけれど、仲間とともにそのような困難に挑戦し、そのプロセスを楽しんでください。その経験は、皆さんの能力を伸ばし、皆さんを大きく成長させますし、最後にはよい思い出になり、卒業後もずっとつながる仲間を作ることができます。ゼミで大いに学び、ゼミを大いに堪能してください。

 

永石 諒さんからのメッセージ

研究計画を発表してくれた3年生の各チームが抱える課題や悩みは、私たち開発コンサルタントが抱えているものとまったく同じです。研究の途上で何かあればいつでも相談してください。最終的に研究の結果が論文としてまとまったらぜひ読ませてください。楽しみにしています。

 

 

※1 経済学部ニュース 経済学部「国際開発論」特別授業「途上国開発の現場:ウガンダ、ナイジェリアにおける技術協力の事例から」が実施されました