中央大学附属中学校高等学校(中大附属)と経済学部およびFLP国際協力プログラムの林光洋ゼミナール(以下「林ゼミ」)は、2022年度末に「SDGs放課後プロジェクト」を実施しました。このプロジェクトは、SDGsを学ぶことに興味・関心と意欲をもつ中大附属および中大杉並の10数人の中学生と高校生が、メンターとして参加した林ゼミのメンバーとチームを組み、大学生の知識と経験を借りながら、SDGsに関連した社会的課題を見つけ、それを解決するための具体的な提案を検討するというものです。
中大附属の北島咲江教諭が企画し、林ゼミの学生たちが準備と実施の段階で協働しました。
プロジェクト発表後の集合写真
本プロジェクトの講座は、中大附属(小金井)と多摩キャンパスを会場にして、2023年1月から2月にかけて合計4回開催。各回1時間程度、SDGsの専門家から講義を受け、その後1~2時間程度、3チームに分かれた中高生と林ゼミの学生は、社会的課題およびその解決方法について話し合い、具体的なプロジェクトを形成していきました。
第1回(2023年1月28日)の講義では、経済学部教授林光洋が「SDGsとは―誕生の背景と目指すもの―」というタイトルで、中高生たちに対して、貧困問題に焦点を当てながら、SDGsが誕生した背景・理由、SDGsの概要と特徴、SDGsの17ゴールの相互関連性等について説明をしました。
第1回の講座で講義を行う経済学部教授 林光洋
第2回(2月4日)は、林ゼミの卒業生、三井物産の山田晃一氏が、「世界から電気のない村をなくそう―インドにおける分散電源の事例―」というテーマで、自身が手がけていたインド北部農村向けの太陽光の分散型電源事業を紹介し、低所得者が多く、電力へのアクセスの悪い地域に、環境にやさしい電力を供給するビジネスを通じてSDGsの複数のゴールに貢献していることを熱く語ってくれました。
さらに、第3回(2月11日)の「徳島県上勝町ゼロ・ウェイストセンターが行う取り組み」、第4回(2月25日)の「今、地球で起こっていること―環境問題とSDGs―」と講義は続き、中高生たちが社会的課題を見つけ、課題解決策を考えるための情報やヒントを提供しました。
講義終了後のグループワークで中高生を大学生がファシリテートする様子
各回の講義終了後に対面で、また、それ以外の日の放課後時間にオンラインで、3チームの中高生たちは、林ゼミのメンバーにファシリテートしてもらいながら、どのような社会的課題をとりあげ、どのような自分たちのプロジェクトを作ってそれを解決していくのかについて話し合いを重ねました。林ゼミの学生たちは3年生で就職活動中でしたが、そのようなことを忘れて、メンターとして、中高生たちにさまざまな情報を提供し、議論を促したり整理したりとサポートに努めていました。どのチームも自分たちが対象とするべき社会的課題の選定にもっとも苦戦したということです。
1つ目のチームは、自分たちの学校のゴミ箱に分別されずに食べ残しが捨てられている状況を変えたいという思いから、食堂の残飯をコンポスト化するプロジェクトを検討しました。2つ目のチームは、LGBTQへの理解が進んでいないことを社会的課題ととらえて、自分たちの学校の構内に性的マイノリティへの理解を促進する情報を掲示。その脇にキャンディを置くことで、舐めている間の読み物として目に触れるようにする工夫を行いました。もう1つのチームは、日本の伝統工芸品の知名度の低さをなんとかしたいという問題意識から、伝統工芸品生産者と消費者をつなぐ仕組みを考えることにしました。
最終回の第4回の講座では、3チームそれぞれがプロジェクトを発表しました。最優秀チームを選んだ後、講義を担当した講師から講評をしてもらいました。今後、中高生たちは、提案したプロジェクトをそれぞれの学校で実施できないか模索していくフェーズに入ります。
中高生たちの発表風景
「自分たちも中高生の意識や彼らの斬新なアイディアを知ることができたり、彼らに伝える目的で、自分たちが学んできたことや経験してきたことをまとめ、説明したり、また、議論のファシリテートの仕方を学んだりと貴重な機会になりました」と林ゼミのメンバーは感想を述べていました。この「SDGs放課後プロジェクト」は、中大ファミリーによる、高大連携の新たなモデルになったように感じられました。
最優秀チームに選ばれた中高生とメンターの林ゼミ学生