経済学部

フィリップ・ヴァルテール氏が中央大学の2022年度外国人研究者として来日しました

2023年03月02日

中世フランス文学や比較神話学の分野で世界的に有名なフィリップ・ヴァルテール氏(フランス・グルノーブル=アルプ大学名誉教授)が来日され、3度行われた講演会の逐次通訳と司会を本学の渡邉浩司(経済学部教授)が担当しました。
フィリップ・ヴァルテール氏は公益財団法人日仏会館の「日仏学者交換プログラム」により、中央大学の2022年度外国人研究者(第3群)として、2023年2月20日(月)から2月26日(日)まで東京に滞在しました。

大の親日家であるヴァルテール氏は、2015年までに21回来日され、比較神話学組織(GRMC)の国際シンポジウムで毎回報告をし、日本の各地の大学で講演を行ってきました(中央大学では人文科学研究所主催により公開講演会を計6回、1999年9月8日、2007年9月4日、2011年8月29日、2012年8月29日と8月30日、2013年8月28日に開催しました)。
今回は8年ぶり22回目の来日にあたり、1週間の滞在期間中に、中央大学で2回、恵比寿の(公財)日仏会館で1回、講演会が開催されました。講演会の日時とタイトルは以下の通りです。

1)2023年2月22日(水)14時~16時半、中央大学多摩キャンパスForest Gateway Chuo 403教室
「日本版シンデレラ『鉢かづき』(国際民話話型ATU510A)―ユーラシアに伝わる「曙の女神」神話の日本的特性」

2)2023年2月24日(金)18時半~20時半、(公財)日仏会館ホール
「女神がとる異類の身体―メリュジーヌとトヨタマヒメ」

3)2023年2月25日(土)14時~16時半、中央大学多摩キャンパスForest Gateway Chuo ホール
「クレティアン・ド・トロワ作『グラアルの物語』に隠された民話―国際民話話型ATUでは何番にあたるのか?」

 

 

2月22日(水)の講演では、室町時代の『御伽草子』が収録する「鉢かづき」と、フランスのペローの『童話集』が収録する「サンドリヨン」が比較され、シンデレラ譚が冬至から春分にいたる時期の話であり、シンデレラが「曙の女神」の化身にあたる妖精であると結論づけられました。

2月24日(金)の講演では、日本の『古事記』や『日本書紀』が伝える女神トヨタマヒメと、14世紀後半にフランスのジャン・ダラスが著した物語の主人公・妖精メリュジーヌが比較され、両者がとる異類の姿が女神の本質そのものであると指摘されました。

2月25日(土)の講演では、「聖杯伝説」の出発点となったクレティアン・ド・トロワ作『グラアルの物語』(12世紀末)が、アファナーシエフのロシア民話や、中世ラテン語作品『アーサーとゴルラゴン』と比較され、共通する枠組みとして国際民話話型910B型を確認することができました。

以上の講演会には、中央大学の教員、学部生、大学院生、人文科学研究所の研究員だけでなく、国際アーサー王学会日本支部、日本ケルト学会、日本口承文芸学会、日本民話の会(外国民話研究会)などの複数の学会・研究会の会員、他大学の教員や学生、さらには一般の方々も参加し、講演後にはヴァルテール氏と参加者との間で有意義な質疑応答がなされました。

 

「どの講演でも世界初の説が披露され、参加者はみなヴァルテール氏の博識ぶりに驚嘆していました。日仏の架け橋として、ヴァルテール氏には今後ともますますご活躍いただきたいですね。」(経済学部教授 渡邉浩司)

フィリップ・ヴァルテール氏の著作