商学研究科研究科TOPICS

現実とのレリバンシーを大切に

 私は1996年に修士課程に入学し2002年に博士課程を出ました。当時はバブル崩壊後の経済低迷が「失われた10年(20年)」と呼ばれ始めた時期で、銀行の不良債権問題とその背後にある企業再建問題を研究して博士号を取得しました。約10年に渡り不良企業や不良銀行を扱ったので、国際競争力ある日本企業に興味が沸いて、その後の10年間は、グローバルに展開する輸出企業の貿易建値通貨選択と為替リスク管理の研究をしました。日本企業が貿易取引に用いる通貨をどのように選択して為替変動リスクを管理しているのかを企業へのインタビューとアンケート調査を用いて解明しました。最近は、日本企業によるM&A、特に大型の海外企業買収の研究を進めています。日本企業のM&Aは2000年代から急増し、世界金融危機後も趨勢的に増加し続けています。実は、失われた10年(20年)の背後で、クロスボーダーのM&Aの世界シェアにおいて、日本企業は米欧企業を凌駕するメインプレーヤーとなっていたのです。

 これまでの研究を振り返ると、その時々の現実経済の重要問題を、標準的な金融経済学の枠組みを用いて、データによって検証してきたと言えます。「現実とのレリバンシー(関連性)を考えて」という言葉は、学部卒業時に当時のゼミの先生からいただいた言葉ですが、図らずもその言葉の方向性で、約10年ごとに新たなテーマを取り込んで研究してきたように思います。

 中央大学大学院商学研究科は、現実問題を、会計・商業・経営・金融・経済の5分野のそれぞれの専門性に基づいて研究できる大学院です。大学院進学を希望される皆さんが、現実を観察して自分なりの研究テーマを見つけだし、標準的な理論と分析手法によって新たな知見に辿り着く体験ができるよう、一緒に努力することを楽しみにしています。

商学研究科
教授

鯉渕 賢

専門分野:

コーポレートファイナンス、マクロ経済学

担当科目:

演習Ⅰ・Ⅱ(企業金融論)、企業金融論Ⅰ(Fundamentals of Corporate Finance)、特殊研究Ⅰ・Ⅱ・Ⅲ (企業金融論)

主要著書・論文:

Managing Currency Risk, Edward Elgar,2018年(共著)(第62回(2019年度)日経・経済図書文化賞受賞)、「日本企業の海外企業買収と事業パフォーマンス」経済分析(内閣府経済社会研究所), 2019年(共著)、"The Decline in Bank-led Corporate Restructuring in Japan: 1981-2010," Journal of the Japanese and International Economics, Elsevier, 2018年.(共著)、"Exchange rate exposure and risk management: The case of Japanese exporting firms," Journal of the Japanese and International Economics, Elsevier, 2016年.(共著)