国際情報学部長・教授 平野晋が総務省から寄稿依頼を受けた論文が、同省の研究雑誌に掲載されました。
平野の専門分野は、インターネットの法学研究(サイバー法)、製造物責任法・不法行為法、及びアメリカ法等です。平野は近年、AI・ロボット法の研究を中心に活動し、内閣府「人間中心のAI社会原則会議」の構成員を務めつつ、総務省でも「AIネットワーク社会推進会議」の副議長や「AIガバナンス検討会」の座長等を通じて、日本政府によるAIのルール作り(「AI開発ガイドライン」「AI利活用ガイドライン」及び「AI事業者ガイドライン」)や、国際機関である経済協力開発機構のAIルール作り(「OECD AI原則」)にも貢献してきました。
その平野が総務省で会長を務めるもう一つの有識者会議である「情報通信法学研究会・AI分科会」において、2023年9月に、「AIの判断に対するヒトの最終決定権の限界」と題する研究発表を行いました。
この度、その発表内容を更に進化させた論文を、総務省からの寄稿依頼を受けて平野が起案し、同論文が同省の研究雑誌に掲載・公表されました。
「AIに不適合なアルゴリズム回避論:機械的な人事採用選別と自動化バイアス」
『情報通信政策研究』第7巻2号I-1頁(総務省2024年3月)
同論文は、人事採用に於いて応募者を評価する際にAIやアルゴリズムの予測、推奨、又は決定を用いる慣行が、欧米では制定法等により規制され始めており、かつ法学者達から厳しく批判もされている現状とその理由・根拠を紹介。特にAI/アルゴリズムの予測や推奨等をたとえ最終的にヒトが意思決定する場合でさえも、「自動化バイアス」という偏見に左右される危険性が欧米では広く指摘・規制されている事実も紹介。他方、「自動化バイアス」とは真逆なヒトの偏見である「アルゴリズム回避論」に基づいて、AI利用を推進させようとする反論が海外では出現し始めた状況を平野は紹介しつつも、やはり人間の評価に於けるAI/アルゴリズムの安易な利用には問題が残ると指摘・分析。その上で、日本でも蔓延し始めている人事募集への応募者達に対するAI/アルゴリズムに基づく選別も、慎重かつ謙抑的であるべきと説いています。