国際情報学部
1月24日『日本経済新聞』の「経済教室」に国際情報学部長・教授 平野晋の「メタバース統治 法整備急げ」が掲載されました
2023年01月24日
国際情報学部長・教授 平野晋
国際情報学部長・教授 平野晋の専門分野は、製造物責任法、アメリカ法、サイバー法、及びAI・ロボット法です。著書に、『アメリカ不法行為法』、『ロボット法』、『体系アメリカ契約法』等があります。
また平野は、経済開発協力機構(OECD)の「AI専門家会合」の日本共同代表や、内閣府の「人間中心のAI社会原則会議」の構成員、総務省「AIネットワーク社会推進会議」の副議長等を務めて、AIのルール作りに携わってきました。
このたび、2023年1月24日日本経済新聞の朝刊「経済教室」に、平野の寄稿文「メタバース統治 法整備を急げ」が掲載されましたので、ご案内いたします。
同寄稿文で平野は、AIやメタバースなどの新興技術が、社会を改革してしまうほどの影響を与えるおそれを指摘。そのために予防法務的配慮やルールが必要である、と指摘しています。
なおAIについては、平野が参加する有識者会議を中心に、OECD「AI原則」のような国際ルールが整備されました。国内でも、内閣府「人間中心のAI社会原則」や総務省「AI開発原則」と「AI利活用原則」等のルールが整備されています。もっともこれらのルールは、AIの開発を萎縮させないために、法的強制力を伴わない指針(ガイドライン)となっています。そのため、今後は企業などがルールを順守している事実を、政府が確認・監督する必要性を平野は指摘しています。例えば採用活動において既にAI面接を行う企業もありますが、ルール上、AIによって不利な判断を下された者に対しても、透明性を伴う説明義務を果たすことが求められています。しかしその順守がきちんと政府によって確認・監督されなければ、せっかく作ったルールが機能しないおそれが懸念されます。
ところでメタバースについては、まだルールの検討が未発展です。しかし、インターネットに関する法学(サイバー法学)の先行研究が、今後のメタバースのルールの在り方の参考になります。例えば、当初はメタバース運営者と利用者との間の契約が支配的なルールになる、とサイバー法学の経験から予測できます。もっともその契約は、後日、有効性を巡る紛争・裁判を通じて、裁判所によって精査されることになるので、企業は既存の消費者契約法等の法律を順守して公正な契約を起案すべきです。さらに、現実世界とは異なるメタバースの特徴ゆえに、新たな法解釈や制定法の検討も必要になる、とサイバー法学の経験から予測できます。例えば、メタバースの構成要素は、仮想世界、アバタ―、インタラクション(相互作用)、仮想経済、及びAR(拡張現実)/VR(仮想現実)技術の利活用であるといわれています。従って、それらの諸要素が生む現実感、没入感、及び執着心が利用者に与える大きな心理的影響ゆえに、利用者の権利を保護するための新たな法解釈や立法が必要になるかもしれません。
仮想経済という要素についても、その基盤となる仮想財産権(仮想世界内の仮想的な土地やグッズの権利)を認める制定法の検討も進めるべきかもしれない、と平野は分析しています。
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