経済学部

「国際開発論(林 光洋)」で経済学部OBがJICA稲作プロジェクトについて特別講演

2024年10月22日(火)、経済学部の科目「国際開発論(担当:経済学部教授 林光洋)」にゲストスピーカーとして招かれた鈴木隆裕さまが特別講演を行いました。

鈴木さんは本学部国際経済学科の卒業生で、林と同期・同ゼミの出身です。国際協力のいくつもの現場に、さまざまな組織・立場から携わってきた方で、直近ではJICAのガーナ稲作生産性向上プロジェクトの業務を終え、帰国されています。この日は開発途上国の農業開発の現場からというテーマで、その豊富な知見・体験談をお話くださいました。

鈴木さんは自己紹介をするとともに、これまで所属あるいはかかわってきたNGO、国連の専門機関、民間組織(社団法人)、JICA、大学などの国際協力を行う組織の概略を説明してくださいました。また、近年、民間企業が国際協力に積極的に参画するようになってきた傾向などについても解説されました。

続いて本題となるJICAのプロジェクトの現場について、具体的なエピソードを交えてお話くださいました。
「ガーナ稲作⽣産性向上プロジェクト」に従事するメンバーの構成を説明する中で、鈴木さんは、「プロジェクトを現場で直接動かしているのはJICA専門家と呼ばれる人たちであり、多くの場合、JICAの外からリクルートされている。JICAの職員は、プロジェクトの企画や管理が仕事であって、現場で手を動かすことは少ない」と教えてくださいました。

次に、2009~21年まで2段階のフェーズで行われたガーナでの天水稲作持続的開発プロジェクトについての解説。鈴木さんは、その後継の、2022~27年まで実施のフェーズ3、ガーナ稲作生産性向上プロジェクトにJICA専門家として従事。
そのプロジェクトの中では、現地の人に農業研修に集まってもらうために交通費や弁当を支給するが、JICAの活動費用は公金(税金)なので交通費の根拠となる距離の扱いや弁当の数量などに厳しかったというエピソードがありました。また、全般的に土木・農業系のプロジェクトは、現場までの道のりが非常に過酷(赤土の道、ぬかるみ、荒れ地)だということを、数々の写真・動画を見せながら説明してくださいました。

鈴木さんのキャリアのスタートは、国際協力分野の日本のNGOの中では歴史があり、規模も大きく、影響力のあるOISCA(オイスカ)で、フィリピンの地方の農業研修センターに住み込んで農業開発の協力を行ったことだったそうです。電気も水道もなかった当時の暮らしぶりの写真を並べながらお話くださいました。

この講演は全体を通して、各組織やプロジェクトの形式ばった解説ではなく、さまざまな国際協力の現場に立ってきた鈴木さんの回想録のようなものでした。資料や教科書には書いていない「国際協力を人生の中心に据えて生きていく」上での仕事ぶりや生活ぶりがそこに見えるようで、今後同じ道を志す学生にとって、その実態を知るまたとない機会になりました。

Q&Aタイムに入ると、フロアーの学生から、農業開発分野の国際協力で心がけること、途上国のカウンターパートとの間で信頼関係を構築する方法などの質問があり、鈴木さんは1つ1つに丁寧に説明・回答していました。学生たちはもう少し質問をしたかったようですが、時間がきてしまい鈴木さんの講演は終了しました。

「国際開発論」の授業後の4-5限は、林ゼミのゼミ室で3年生の研究プロジェクトの中間報告があり、鈴木さんと林ゼミOBの大塚さん(卒業して中学校の教員を経験し、英国の大学院に留学し、修了したので10月に帰国)が参加くださいました。

本年度の林ゼミ3年生はフィリピンを対象国として、貧困や格差といった問題の現状や解決法を、さまざまな観点から研究しています。「サリサリストア(フィリピンに多数存在する小規模零細小売店。食品から日用品まで少量で販売する「よろずや」)店主への経営教育の効果」、「ストリートベンダー(露天商)の組織化の役割」、「ストリートチルドレンの精神的自立とNGOの役割」、「インフォーマル地域における参加型コミュニティ開発プロジェクトの継続性」をテーマにした4チームが順に発表を行い、鈴木さんはフィリピンでの駐在経験から多くのアドバイスや、現地でのエピソードをお話くださいました。大塚さんは、中学校教員や英国留学の経験をベースにして、ゼミの後輩たちにコメントをしてくださいました。