経済学部

経済学部科目「金融論I」にシティバンク等で勤務経験のある斎藤修氏が登壇

2024年10月10日、「金融論I」(担当:近廣昌志(ちかひろ・まさし)准教授)にゲストスピーカーとしてシティバンク等で勤務経験のある斎藤修さまが登壇しました。

斎藤さまは米系シティバンクから始まり、英系→日系→オランダ系と、ときには会社の浮沈とともにさまざまな金融機関を経験し、最終的に米系大手の資産運用会社で金融畑のキャリアを終えられました。その後日本語教師や難民向けの学習支援、また大学での金融の講座を受け持つなど、定年退職後も幅広くご活躍されています。

この日は、1.資産運用業界を取り巻く法令環境、2.資産運用におけるリスクとは、3.ESG投資・ESGファンドの潮流、の3章建てで投資による資産運用の全体像からESG投資といった近年の潮流をたっぷりとお話ししてくださいました。

初めに資産運用会社の事業の中で大きなウエイトを占める投資信託と投資一任契約について、斎藤さまは概略から関連機関・資産の流れなどを図で示しながらご説明。続いて資産運用会社の組織図(社員40名程度の外資系の例)が示され、どの部署がどういった業務に当たっているのか等を詳細に解説されました。
全体像を俯瞰することで理解が進みやすいよう、これらの図は以降も関連するワードが出た際に度々表示されました。

今後無関係ではいられない投資の話というだけあって、学生の多くは教室前方に座り、スライドを見つめながら熱心に聞いている様子でした。

 

コンプライアンス部門の説明から、法令・監督上の環境変化に話が移り、特に2007年9月施行の金融商品取引法について詳細な解説がありました。
顧客本位の業務運営に関する原則を、金融庁の資料に基づいて7つのポイントに沿って解説され、「適合性の法則」を「お年寄りにあまり難しい商品を勧めない」といったように、具体的な例への言い換えで分かりやすく教えてくださいました。
また利益相反についても時間を割いて典型的な例などを図解され、近年の金融庁による行政処分事例集も紹介してくださいました。

続いて「資産運用におけるリスク」の章は、株価変動をはじめ6つにカテゴライズされたリスクを、新聞の切り抜きなど実例とともに見ていくというものでした。簡単な利息計算など手を動かす時間もあり、3限で少々眠気の来た学生たちもその数字の動きに納得した表情を見せていました。
斎藤さまはここで「リスクを抑えながら高めのリターンを追求することは可能か?」と題して、株式のロング・ショート戦略を伝授してくださり、仮の株価と4つの市場変化のパターンに対する具体的なリターンの金額を例示して、その有効性を説明されました。

 

残り時間を気にしながら、3章の「ESG課題、ESG投資」に移り、ESGとは何かという基礎からESG投資手法の実例、またそれによって起きた問題として「キャノンショック」などを教えてくださいました。
最後にESG投資・ESGファンドが直面する問題点として反ESGの政治勢力拡大について解説があり、「それでもESG投資・ファンドは必要か」という問いの一文で講演は締めくくられました。
斎藤さまはこの章でESGに対応するための見せかけの配慮である「グリーンウォッシング」の横行や、物価高・住宅難といった若者の不満(未来より現状)から、欧米を中心に反ESGの動きが高まっていることなども挙げながら、最後に「それでもESG自体は考えていかねばならないものだと思う」と私見を述べられました。

残り時間が少ないなかも学生からは質問が途切れず、終了時刻をオーバーしても斎藤さまは一つ一つ丁寧にお答えくださいました。