経済学部

成田国際空港株式会社様をお招きして特別講演が行われました。経済学部「交通経済論」の特別講義(第3回)

2024年7月8日(月)、経済学部の「交通経済学(担当:後藤孝夫)」にて、成田国際空港株式会社執行役員 戦略企画室長の片山さまによる「インバウンド6,000万人時代に向けた成田空港の取り組み~更なる機能強化と『新しい成田空港』構想~」と題した特別講演が行われました。
片山さまは運輸省(現国土交通省)入省後、観光・海運・自動車行政等に携わり、港湾局、鉄道局、総合政策局の課長職を歴任するほか、国土交通大臣秘書官や成田市副市長も経験されたという方です。さまざまな立場で交通分野を見てこられた経験から貴重なお話をくださいました。

前半では成田空港の概要やこれまでの歩みとして、施設・ネットワーク(路線数)・取扱量などの数字と、空港の収益構造・ビジネスモデルなどを、開港(計画)からの変遷とともに、また羽田空港や世界の空港と比較しながら説明してくださいました。 その中には空港の位置決定をめぐる動きや管制塔の襲撃事件などの反対運動の話に始まり、思うように進まなかった滑走路の整備(新設)、羽田空港の国際化(成田空港との需要の取り合い)、コロナ禍による需要の激減といったいくつかの危機についてのお話がありましたが、片山さまはこれまでの成田空港の歩みについて「国際線専用空港として開港し、危機はあったけどもまだまだ成長中」と総括しました。

後半はインバウンド需要の受入れと人材確保についてでした。 コロナ禍からの需要の回復をグラフで示したのち、今や日本で3番目の産業となったインバウンド産業の重要性や政府による観光立国推進基本計画、更なる機能強化、について、旅客ターミナル・貨物地区・空港アクセス等を検討する『新しい成田空港』構想と多面的に解説をいただきました。また、エアポートシティ構想については海外の実例を挙げながら、その概念から展開のポイントまでの非常に詳細なお話をいただきました。

インバウンド6,000万人受入れという目標については、業界全体でグランドハンドリングの人材確保が大変重要とのことですが、特に成田空港は立地的に通勤が大きな問題になることから、空港への就業と周辺への居住をセットで訴求するための採用統合サイトを立ち上げるとともに、周辺地域の居住環境改善を自治体と連携して進めているということです。それ以外にもグランドハンドリングに焦点を当てた短編映画「空の港のありがとう」の制作やeスポーツ大会の開催といった施策もご紹介くださいました。
従業員定着の観点からの従業員のモチベーション維持向上にも空港全体でさまざま努めていることが奏功したのか、コロナ禍後に成田空港がSKYTRAX社の評価で5つ星(5スターエアポート)を獲得したということで、片山さまは「成田空港は人員不足で苦しんでいるが、その接客などスタッフの質は非常に高い」とお話になり、講演を締めくくられました。

時間に限りがあるなかで非常に濃い内容にまとめてくださり、学生から寄せられた質問にも数多くお答えくださいました。前回・今回と通して空港の実態に多く触れることができ、近い未来に航空業界や観光業界に携わりたい学生にとって、これ以上ない学びの機会となりました。