2022年11月17日(木)3限、経済学部の近廣昌志(ちかひろ・まさし)准教授が担当する「金融論Ⅰ」において、環境省の環境金融推進室の方々をお招きし、ESG金融についての特別公開授業が行われました。
お越しくださったのは室長補佐の稲村さまと、脇さま、下野さま、三井さまの4名で、それぞれ日本銀行、京都信用金庫、山口フィナンシャルグループ、愛媛銀行から出向されている銀行員の皆さまです。
まずは三井さまより、出身の愛媛銀行を例に銀行業務についてのお話が。預金・貸出・為替のいわゆる三大業務というところに始まり、銀行の組織やキャリアパスなどなど仔細に教えてくださいました。
営業店での1日と題した、銀行員の一般的なスケジュールの解説は特に具体的で、就職を考える学生にとって、内実を詳しく知るまたとない機会となりました。
続いて稲村さまより、本題のESG金融についての講義が始まりました。
環境(Environment)社会(Social)ガバナンス(Governance)の頭文字をとった「ESG」は持続可能な社会の実現のために配慮すべき観点です。近年、企業へ投資する際には、ESGに 対する姿勢が重要な評価項目となっており、日本においても直接金融市場ではグリーンボンド等の発行残高は伸びています。一方で、日本の金融の8割を占める間接金融(銀行を介する融資)においては、対応が遅れている中小企業向け融資が大半を占めているため、地域金融機関が中心となってESG金融を推進していく必要があるとのことでした。
稲村さまは「信用リスクや市場リスクといった既存の融資リスクのほかに、現代は気候変動によるリスクも考えなくてはならないのでは?」という考え方を示し、「例えば物理的リスクとして、豪雨で工場が浸水したり流されたりというケースも有り得る」など、例を挙げながらESG金融の必要性を銀行の社会的責任の観点からわかりやすく説明されました。
また、資料の中で「気候変動の一丁目一番地は『脱炭素化』」とし、2015年のパリ協定など歴史を振り返りつつ、「グリーンプロジェクト(環境問題の解決に取り組む事業)に資金が集まるような金融メカニズムを構築して、環境と経済の好循環を実現する」と、環境省・環境金融の取組みについて話されました。
冒頭での「ESG金融を知っているか」の問いかけに挙がった手は2、3と少なく、学生にはまだ耳慣れない言葉なのかと感じられましたが、学生たちは資料を読みながらときおり用語を検索するなどして、熱心に講演を聴いていました。
なお稲村さまは「この講演内容は、あくまで私観に基づくもの」としており、「その分野をすべて知るということはそんなに簡単なものではない。YouTubeの社会問題の解説動画などで妙に納得してしまったときは、一歩引いて『自分の知識は大丈夫かな(足りているのかな)』と振り返ろう」と、物事の安易な理解や判断に注意を促して講演を締めくくられました。
最後の30分は近廣准教授が進行役でのパネルディスカッションとなりました。学部時代に物理を専攻していらした稲村さまと近廣准教授とで「経済は物理現象として捉えられるのでは?」といった専門的なお話が。
また近廣准教授は「なぜ銀行員になったのか」「営業店の人間として支店長や本部の人との付き合い方」など、特に銀行への就職を目指す学生が興味を持つような質問を投げかけ、下野さま、三井さまがこれにお答えくださいました。京都信用金庫からご出向の脇さまは信金ならでは体験談を求められると「信金は地域を支えているという自負がある」と語られ、「お客様のことのみならず、そのお店、先代のこと、業界のことなど深く積み上げたデータがあるから、一般的な融資では無理難題とされるような貸付も行える事がある」と、驚きのエピソードを教えてくださいました。
学生からの質問など授業時間に収まりきらなかった分も、環境省の皆さまは教室の外でも真摯に対応くださり、名刺を受け取った学生もいました。