10月11日(火)の3限、経済学部の授業「国際開発論」(林 光洋)において、認定NPO法人アジア・コミュニティ・センター21(ACC21)の辻本紀子さんによる講演が行われました。ACC21はアジアの貧困削減に取り組む国際協力NGOです。
アジア・コミュニティ・センター21(ACC21)の辻本紀子さん
辻本さんは高校生のときに、授業でカンボジアの貧困を知ったのがきっかけで国際協力に関心をもち、大学で同分野について学びました。卒業し、いったん民間企業に就職した後、ACC21に入職されました。広報担当と両輪で、2014年までカンボジア助成事業を担当し、その後現在までフィリピン事業を担当されています。
まずACC21について、アジア12か国に100以上の現地NGOとのネットワークを有していること、またアジア途上国の経済発展に寄与する事業に対して助成をする「公益信託アジア・コミュニティ・トラスト(ACT)」の管理・運営をしていることを説明してくださいました。
ACC21が現在手掛けている事業は、「ACTの事務局活動」や本講演のような「アジアの今を伝える活動」を含めて6つがあるとのことでしたが、この日はそのうちの「ストリートチルドレンへの支援」、特にフィリピンでの事例に絞ったお話しでした。
いわゆる子どもの路上生活者「ストリートチルドレン」について、住居や家族との関係を基準に細分化されていること、最近では彼らを「Children in Street Situations(路上の状況にある子ども)」と表現するようになってきていることに触れながら、辻本さんはその子どもたちの悲惨な現況を写真や動画を使って見せてくださいました。
現在も、将来も、さまざまなリスクを抱える彼らを救済すべく取り組んでいるのが、路上で暮らす若者の自立支援プロジェクト。マニラの路上で暮らす16~24歳の若者に、ライフスキルや職業技術を学ぶ機会を提供して自立を支援するというもので、日本でもフィリピンでも身近な「竹」から、「Bamboo Project」と名付けられました。
フィリピンの貧困問題とストリートチルドレンについて説明する辻本さん
縁起の良さ、成長の早さと、そのしなやかな強さにあやかって名付けられた「Bamboo Project」では、金銭管理教育、職業技術や就職活動に必要な証明書類の取得方法、自立のための心構えやカウンセリングなど、技術面から精神面までを細やかにサポートしており、修了した若者は4年目の2022年10月現在で109名を数えるということです。辻本さんは、プロジェクト修了生の中で飲食店を興した少女のビデオメッセージを紹介してくださいました。
説明に使用したグラフのデータによれば、プロジェクト参加者の失業率は下がり、就職率や起業率が上昇し、収入も増加しているなど、目覚ましい成果となっていました。最近では、ビジネスを起こした若者と起こそうとしている若者たちをつないで、大きな動きにしようと考えているということです。
そのほか、コロナ禍で学習の機会を奪われた子どもたちへオンライン教育の環境整備を施した事例(フィリピンの現地NGO「Child hope」との協働)などもご紹介くださり、フィリピンの路上の状況にある子どもたち、若者たちを知って、自分にできることは何か考えてほしいというメッセージで講演を締めくくられました。
講演後、学生から次々に質問の手が挙がりました
4限以降、辻本さんは経済学部およびFLP国際協力プログラムの林光洋ゼミに参加くださいました。この日、林ゼミの3年生は、フィリピンの開発問題をテーマにした、1年間を使っての研究プロジェクトの途中経過を報告しました。3限の講演の際、辻本さんは、大学時代にカンボジアの現地NGOのネットワークについて研究し、現地に滞在して調査を行ったことも紹介されていたので、林ゼミの学生たちは東南アジア地域の経験が豊富な方と話すことを楽しみにしている様子でした。
ウェイストピッカー(ゴミ拾いに従事する人々)の組織化を研究する班、農村ツーリズムによる地域活性化を研究する班、低所得者層のためのマイクロ保険を研究する班それぞれが研究の概要と進捗を報告すると、辻本さんは、多くのコメントやアドバイスをしてくださいました。
ゼミ生たちは、辻本さんとのやり取りを通して、自分たちの研究を改善するためのヒントを得たり、3限の講演では聞くことのできなかったより詳しい情報を得たりするなど、有意義な時間を過ごすことができました。
林光洋ゼミにご参加くださいました