元経済学部教授 長谷川聰哲氏(中央大学名誉教授)が、ダグラス・A・アーウィン著『米国通商政策史』の邦訳を文眞堂から刊行しました。なお長谷川聰哲氏を監訳者とする翻訳者グループには本学経済学部准教授 小森谷徳純も参加しています。

概要
本書は、米国の通商政策の特徴を南北戦争と大恐慌で区切られる三つの時代に大別し、各時代を象徴する税収、輸入規制、そして互恵主義を優先する時代へと重心が移ってきた歴史を繙く。
通商政策の変遷,政策立案者に直面し,制約を与えてきた歴史的状況,政治的プロセスから生まれた政策結果,およびそれらの政策の経済的帰結に影響を与えた経済的利害関係と党派的立場を、著者アーウィンは冷静に描き出している。現在の私たちが米国について知りたい内容の全てが書かれている。(文眞堂書籍紹介)
本書の構成
序文
第1篇 税収
第1章 | 独立のための闘争1763~1789年 |
第2章 | 新国家のための通商政策1789~1815年 |
第3章 | 党派間の衝突と危機1816~1833年 |
第4章 | 関税の安定と南北戦争1833~1865年 |
第2篇 輸入規制
第5章 | 関税改革の失敗1865~1890年 |
第6章 | 保護主義の定着1890~1912年 |
第7章 | 政策転換と漂流1912~1928年 |
第8章 | ホーリー=スムート関税と大恐慌1928~1932年 |
第3篇 互恵主義
第9章 | ニューディール政策と互恵通商協定1932~1943年 |
第10章 | 多角的貿易体制の生成1943~1950年 |
第11章 | 新しい秩序と圧力1950~1979年 |
第12章 | 貿易衝撃とその対応1979~1992年 |
第13章 | グローバリゼーションから分極化へ1992~2017年 |
結論
長谷川聰哲氏(監訳者)のコメント
本書は、米国の通商政策形成の道程を繙くダグラス・アーウィンの渾身の大著の完訳です。
二人の建国の父であるアレクサンダー・ハミルトン(初代財務長官)とトーマス・ジェファーソン(初代国務長官)が政治的理念の違いから袂を分かち、今日の二大政党が成立してきた歴史は、連邦国家として法の支配を具現化する歩みそのものでした。ワシントン大統領の就任後、初めて成文化された連邦法が「関税法」であり、建国期米国の財政の屋台骨となりました。建国期の米国の旧世界との通商協定締結の努力は、連邦国家の存立にかかわるものでした。本書のテーマである通商政策の形成は、経済学独自の対象だけではなく、法律、政治学、税法、米国史、国際関係、等と密接にかかわる分野でもあります。
書籍情報
- 《タイトル》『米国通商政策史(ダグラス・A・アーウィン著)』
- 《著者》長谷川 聰哲(中央大学名誉教授)<監訳>
- 《出版社》文眞堂
- 《初版年月日》2022/2/14
- 《ISBN》978-4-8309-5113-8