経済学部

JICA職員の松林美葉さん(経済学部卒業生)がFLP国際協力プログラムの期末成果報告会で講演しました。

2021年12月21日

2021年12月11日(土)、FLP国際協力プログラムの期末成果報告会が朝から開催されました。オンラインで用意された3つの会場では、FLP国際協力プログラムの各ゼミの各チームが、発表や事前にもらっていた質問への回答などを行いました。

堂々と成果を発表する学生や鋭い指摘をする教員など、各会場で真剣に討論する姿が見られました。学生たちの発表が終了した後、この期末成果報告会の一環として、経済学部OGで独立行政法人 国際協力機構(JICA)職員の松林美葉さんによる講演会が開催されました。

地球環境部水資源グループでの松林さんの業務

松林さんは、現在、JICAの「地球環境部 水資源グループ」に所属しており、SDGsの6番目のゴール、「安全な水とトイレを世界中に」に関連して、「上水道分野の案件形成・監理」を中心とした業務に就いています。この日は「国際協力を仕事にする -銀行・海外大学院・JICAの経験から-」というテーマの講演で、松林さんの現在に至るまでの経歴と、JICAの全体の業務と水資源グループの仕事について紹介してくださいました。

松林美葉さんの経歴

松林さんはFLP国際協力プログラム林光洋ゼミナールの第4期生で、2013年3月に経済学部国際経済学科を卒業。大学に入る前から将来的に途上国の開発に携わりたいと考えていた松林さんは在学中に一番力を注いだのがゼミ活動でした。研究計画書を作成したり、ゼミの代表としてチームビルディングをしたりした経験は今の業務に繋がっており、またフィリピンでの現地調査で「経済成長しないと貧困は解決しない」という現地の人々の考えを聞いたことは現在のキャリアの原体験だったと言います。

経済成長について考えたときに、経済活動をもっと肌で感じたい、金融機関について知りたい・学びたいと思い、就職先として三菱東京UFJ銀行(現在の三菱UFJ銀行)を選択。働く中で日本経済やメガバンクの考え方、融資関連分野について多くを学んだ後、国際協力に携わる夢を実現するために大学院へ留学することを決断。30歳前に大学院を終えているキャリアでいたいという考えから5年目に退職すると決め、4年目から受験・退職・留学の準備を計画的に進めて英国のイースト・アングリア大学大学院へ進学。開発経済学を修めたのちにJICAへ入職したということです。

銀行を辞めることがこれまでの人生で一番の大きな決断だったということ、留学中の楽しかったことつらかったことなど、その時々の心情を交えて語ってくださいました。

JICAについて

松林さんのJICAでの仕事は、途上国における上水道整備に関するもの。上水道分野の支援戦略の検討・策定から現地調査の実施、現地政府のカウンターパートとの協議、他のドナーとの協議、専門家のコーディネート、契約書の作成・締結、プロジェクト実施の監理、プロジェクトの評価に至るまで当該部門のプロジェクトの全体に関わっています。

ODA(政府開発援助)を通じて「国創り」を支援し、その国が掲げる目標やビジョンに向かって長期的に伴走する。松林さんはJICAの仕事をそのように説明しました。

JICAが実施しているODA事業のSDGsとの親和性の高さ、提供する協力メニューやプロジェクトの内容(インフラ整備から人的資源開発、法制度整備まで)の広範さなどの具体的な説明を通して、キャリアパスや人材育成制度、開発支援の全サイクルへの関与可能性といったJICA職員の醍醐味等を教えてくださり、JICAで働くことに興味がある若者にとって、大変有益な情報でした。

収益をあげることを第一とする民間企業とは違い、JICAの目的はどれだけ途上国の国創りに協力することができるのか、どれだけ貧困を削減したり、現地の人たちの生活を豊かにしたりすることができるのかということ。民間の銀行で勤務していた松林さんは、当初、組織のそのような行動原理や事業目的の違いに戸惑っていたものの、徐々に慣れてきたそうです。日本のODA予算が減り、ODA単独でできることが減り、国際協力に民間を巻き込んでいくことが求められている状況下において、自らの銀行での法人営業の経験が活きてくるであろうと語ってくださいました。

学生たちへのメッセージ

松林さんは、参加した80人前後のFLP国際協力プログラムの学生たちへのメッセージとして、現在に繋がるFLPでの経験および3つの重要なこと、1)仕事の分野専門性や職種の能力を磨くことも、人として成長することも、両方が重要であること、2)自分で自分を乗り越えることは難しいけれど、それに挑戦していくことは重要であること、3)特にコロナ禍以降、語学力はますます重要になってくること、をあげて講演を締めくくりました。

その後、Q&Aコーナーになり、学生たちから多数の質問が寄せられ、松林さんは1つ1つに対して丁寧に回答していました。海外現地調査のコツなど具体的な質問も飛び出し、いずれ国際協力に携わることを目指す学生たちにとって、実り多い時間になりました。