経済学部

経済学部准教授 村上弘毅が経済理論学会の第10回経済理論学会奨励賞を受賞しました

2019年10月25日

経済学部准教授 村上弘毅が2019年10月19日、経済理論学会の第10回経済理論学会奨励賞を受賞しました。
題目と講評は以下のとおりです。

 

第10回経済理論学会奨励賞

論文題目

(1) “Existence and uniqueness of growth cycles in post Keynesian systems”, Economic Modelling 75, pp.293-304, November 2018.

(2) “A two-sector Keynesian model of business cycles”, Metroeconomica 69(2), pp. 444-472, April 2018.

講評

村上会員の論文は、ケインジアン的視点から、景気変動に対して投資の役割が重要である点を考察した一連の研究である。

  第1論文では、期待の役割が景気循環を引き起こす点を解明し、第2論文では、2部門モデルに拡張することで、投資財部門が景気循環を引き起こす点を指摘した。

  第1論文では、景気変動を生み出す要因として、期待の役割に焦点を当てている。従来のポストケインズ派は、期待利潤率の代わりに実現利潤率で代替する傾向があり、期待利潤率の役割を明示的に考慮していなかった。本稿では、この点に着目し、期待利潤率に投資が依存すると定式化した。その結果、期待利潤率の変化が投資に強い影響を与えるならば、景気循環を生み出すこと、そして期待の修正速度が十分に早い場合に一意のリミットサイクルが存在することが明らかとなった。本研究は、ケインズの考えに忠実な定式化を行い、高度な数学を用いて立証している点で、非常に重要な研究である。

 第2論文では、マクロモデルを1部門モデルから、消費財と投資財の2部門モデルに展開し、景気循環の発生メカニズムを考察した。その結果、ケインジアン安定条件の成立に、景気循環の発生が依存することが明らかとなった。すなわち、景気循環がケインジアン安定条件が成立しないときに発生しうることを示した研究である。それとともに、投資財部門が、時期・量的にも、景気変動を引き起こす要因であることを示した。このような帰結は、2部門モデルにより初めて明らかにできることである。

  当然のことながら、景気循環には、様々な要因があることは言うまでもない。しかしながら、ケインズが指摘した点を、数学的により緻密に高度に展開し、再度光を当てることが出来たという点で、奨励賞に値する研究である。