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商学部
林田 博光ゼミ 実態調査

調査日:2016年9月5日
参加学生人数:14人
調査先:JETROシンガポール事務所

調査結果

 JETROでは、ダイレクターの勅使河原純一様より、シンガポールの歴史や政治、経済状況、国民の生活や、日本企業の進出動向などについてお話しいただいた。
 まず、簡単なシンガポールの歴史についてである。シンガポールは第二次世界大戦後、日本から独立し、イギリス領になった。だが、国内で独立の機運が高まり、1955年に自治が、1959年には完全自治が認められた。その後、1963年には悲願だったマラヤ(マレーシア)との合併が成立するが、華人が大半を占めるシンガポールはマレー優遇政策と相容れず、1965年にマラヤ連邦から離脱し、シンガポール共和国が誕生した。その当時の首相がリー・クアン・ユーで、シンガポール建国の父と呼ばれている。そして、2015年に建国50周年を迎えた。
 次に、シンガポールの概況である。シンガポールは建国以来、リー・クアン・ユーが属していた政党である人民行動党(PAP)と呼ばれる政党が、建国から現在に至るまで政権を握っている。国の面積は東京23区よりやや大きいくらいで、人口は554万人(2015年)である。民族は中華系が74%を占め、その次にマレー系19%、インド系9%と続いている。また、宗教も仏教、イスラム教、ヒンドゥー教、キリスト教など多様で、公用語は英語、中国語、タミル語、マレー語などが用いられている。シンガポールの一人当たりGDPは52.888USDで日本の約1.6倍である。国全体のGDPは2,927億USDで東京都のGDPよりも低い数字だ。在留邦人は36,963人(2015年10月現在)だといわれているが実際には5万から6万人はいると推測されている。また、日系企業も856社(2016年6月、日本商工会議所会員数)となっているが、実際には2000社くらいはあるといわれている。
 そして、シンガポールの政治、経済の状況である。シンガポールでは上述の通り、人民行動党と呼ばれる政党が建国以来政権を握っており、一党独裁体制が続いている。独裁といってもネガティブなものではなく、国民の支持率は高い水準を維持している。だが、近年、その支持率が下がってきている。その理由は、政府がこれまで取ってきていた外国人優遇政策に対する不満の表面化である。政府は、国土が狭く、資源が乏しい国を発展させるために、海外の優秀な人材を積極的に取り入れるために、外国人優遇政策をとり、外国人が働きやすく、企業も進出しやすい国を作り上げてきた。それが、シンガポールの急成長につながっている。だが、急激な外資の流入により、不動産の高騰や物価の上昇、外国人労働者による雇用の減少などが問題となり、国民の不満が募っている。そのために、政府は外国人労働者の規制などを進めている。経済の面においては、2010年に一人当たりGDPがアジア最大になるなど急激に成長してきたが、97年のアジア通貨危機や08年のアジア通貨危機のあおりを受けて現在は緩やかな成長に転じている。また、不動産価格が高騰しており、上昇を続けているが、日本のバブルの崩壊の二の舞にならないように政府がしっかりと管理し、抑制しているというが、それでも上昇しているという現状がある。またシンガポールは、経済成長を続けるには人口の増加が必要だと考えており、それを実現するために、2030年までに、国土を2010年の710平方キロから760平方キロに拡大する計画を打ち出している。また、それに対応するための、住宅や大量高速鉄道(MRT)、病院などのインフラを充実させるために整備を進めている。
 最後に、日系企業の進出状況についてである。日系企業がシンガポールに進出する際のメリットは非常に多い。政治・社会の安定性、公用語が英語である、駐在員の生活環境などがあげられる。そのほかにも法人税の安さがあげられる。シンガポールの法人税率は17%となっており、アジアの主要国の中では、香港の16.5%に次ぐ2位である。このようなメリットのより、日本の対アジア投資先として、多くを占めている。シンガポール日本商工会議所の業種別推移では、観光・流通・サービス部門の増加が著しい。また、法人税の安さから日本から本社移転する会社も少なくないという。近年、アジアという市場が重要視される中で、シンガポールに地域統括拠点を設置する会社が増加している。シンガポールの消費市場については、シンガポールは共働きの家庭が多く、平均月収は8666SDと非常に高い。共働きが多いことから、食事を外食で済ませることが多い。それに加え、日本食が人気なこともあり、日本の飲食チェーンも多く出店したが、飽和状態となり現在は撤退する企業も出てきている。ファッションにおいては、ファストファッションが好調で日本からもユニクロが出店している。シンガポールはネットの普及率が非常に高いので、ネットショッピングが普及している。日本企業がシンガポールに進出する際の課題は、労働力不足や、人件費の高騰、地価の高騰などがあげられる。人件費や労働力の問題は、外国人雇用規制の強化があげられる。また、シンガポールの対日投資はアジア最大で、大型投資では、シンガポール政府系企業による不動産関連の投資が多い。近年では、リゾート運営や飲食関連の投資も目立っている。シンガポールの対日訪問客も拡大しており、2013年以降3年連続で過去最高を更新しており、2015年には、30万8,783人を記録している。このように日本とシンガポールは相互に非常に大きな関係性を持っている。
 ゼミ生からの質問では日本企業の信頼度などがあげられたが、シンガポールにおいての日本企業への信頼は高いそうで、企業の制度がしっかりしていることや、労働環境の良さ、日本人のまじめさなどがあげられる。それに加え、リー・クアン・ユー元首相が日本の高度経済成長を手本に成長していく方針を打ち出したという背景がある。だが、歴史的にシンガポールは日本の統治下にあり、反日感情があってもおかしくないが、リー・クアン・ユーのこのような政策もあり、日本に対して好意的に受け止めてくれていることを忘れてはいけないということだった。
 このようにシンガポールの概況や日系企業の進出動向を、その最前線にいる方にお話を聞かせていただくことで、これらに関する知識を深められたことはもとより、異文化ビジネスに対する理解を深められたと思う。