国際情報研究科

より深く探求するために:国際情報学部から国際情報研究科へ

2019年に新設された国際情報学部に1期生として入学した西あやのさん。2023年4月に新設された国際情報研究科の1期生として入学し、学部生時代に見つけた社会課題に関する研究を進めています。
国際情報学部から国際情報研究科へ進学しようと考えたきっかけや、学部の学びと研究科の研究の違い、今後の展望について指導教員の平野晋教授も交えてお話を伺いました。
大学院でより深い知見を得つつ研究をしたいと考えている皆様のご参考としてください。

——— 西さんは国際情報学部の1期生ですね。国際情報学部を選んだ理由を教えてください。

西  高校生のときに電車の広告で国際情報学部が開設されるのを知り、新しい学部でITに関する最先端の勉強をしたいと思い選びました。また文系と理系の両方を学べることにも魅力を感じました。

——— 国際情報学部の授業科目で印象深かったものは何ですか。

西  情報分野ではSNSの構造や社会的影響について学べた「SNSとコミュニケーション」の授業が印象的でした。
法律分野ではAIやロボットと共生するために必要な法整備を学んだ「AI・ロボット法」にとても興味を持ちました。

——— 大学院への進学を考え始めたのはいつ頃ですか?きっかけも教えてください。

西  大学院への進学を考え始めたのは2年次の夏頃です。AI・ロボット法分野を学修すればするほど奥深さや課題などを発見し、より専門的な知識を平野先生のもとで学び研究したいと思ったのがきっかけです。
2023年の春、国際情報学部卒業後すぐに国際情報研究科が開設され専門的な知識を学び研究する 機会をいただけたことを大変うれしく思います。

——— 学部の「AI・ロボット法」は平野先生の科目ですね。大学院では「AI・ロボット情報法特論」を担当されていますが、学部と大学院の科目ではどのような違いがあるのでしょうか。

平野 学部では教科書である拙書『ロボット法(増補版)』(弘文堂)を中心に、主に日本語の文献を使いながら講義しています。他方、大学院では、同じ教科書も使いますが、加えて英語の資料(米国の法律論文や欧州の報告書等)を使う頻度が増えて、これにより最先端の国際動向も理解してもらいます。

——— 大学院での研究テーマについて教えてください。

西  大学・大学院を通してゼミの研究テーマは「自動運転車による事故の責任の所在と被害者救済の在り方」です。自動運転車による事故は既存の日本の不法行為制度や損害賠償制度では被害者救済が難しく、または不公正になることが予想されています。AI技術及び自動運転が社会に受け入れられ運用が活性化されていくためには、法的基盤の整備が不可欠です。
法的紛争を予防するための「予防法学」の検討や自動運転車に法人格を付与するなど、新たな法制度を模索する必要があると感じ研究しています。

——— 学部を卒業してそのまま大学院に進学したいわゆる新卒大学院生の場合、西さんのように学部時代の研究テーマを引き続いて研究する学生、学部時代とはテーマを変えて研究する学生、様々かと思います。新卒大学院生にどのようなことを期待しますか。

平野 先ず学部は、主に各科目・各学問分野の基本や理論を〈学ぶ場〉という性格が強い教育機関です。他方、大学院・研究科は、学ぶよりも〈研究する場〉という性格が強い研究機関です。ですから新卒大学院生には社会人大学院生と同様に、各院生が持っている特定の課題やテーマについての研究を深く深く探求して、その課題やテーマについての知見や考えについては誰にも負けない位の専門家になってくれることを期待しています。
その為には、通常、学部時代に扱った卒論・卒業制作を更に深化させる手法がとられます。しかし卒論・卒業制作を土台にしなくとも、もし新卒大学院生が特定の課題やテーマについて深く探求する意思を持っていて、かつ深い探求の為の素養も既に身に着けていれば、当研究科に入学し、修士号を取得して専門家になることも十分可能です。

——— 授業の雰囲気など学部生のころと違いを感じるところを教えてください。

西  先生方からは専門分野における最新のニュースや動向を教えていただくことができ、それらを「情報の仕組み」と「情報の法学」の双方の観点から考察できるというのが、この研究科ならでは。学部よりも1ステップ2ステップ専門性の高い授業を受けられていると感じています。
また、研究指導は法律系分野の3名の先生が担当してくださるので、より学際的な視点で研究を進められます。
社会人大学院生の存在も大きいです。
授業時間は平日夜間と土曜日が中心で、平日はオンラインでも受講可能で働きながら学べるため社会人大学院生も在籍しています。普段は社会人として働いている方たちからの実務経験をもとにした意見や考察はとても参考になり、研究の内容をより充実させることができます。
学部生の頃もゼミの仲間や先生からの意見や質問によって知識が深まったと感じていましたが、社会人大学院生の存在により、考察の幅が広がったと感じています。

——— ときどき、キャンパス1階のホールで、昼食時間に西さんが社会人大学院生と交流されている様子もお見受けしています。

西  土曜日は午前と午後を挟んで授業があるので、社会人の方ともよく昼食時間を一緒に過ごすことがあります。授業での専門的な意見交換から離れて、一般的な話題で盛り上がっていますね。
1年次前期中には、大学院生と先生方との懇親会も実施していただき、そこでも輪が広がったと思います。

——— 新卒大学院生と社会人大学院生が机を並べる授業の運営は、大変さもあり面白さもあると思いますが、いかがでしょうか。

平野 大変さは、それぞれの学生の持つ知見や素養が多様である点です。多様なので、それぞれの学生の違いを理解しながら、授業をカスタマイズしていく必要があります。尤も大学院は学生数が少ないので、カスタマイズすることも可能です。他方、面白さは、やはり学生の多様性に見出すことができます。
つまり多様な知見や素養を持っているので、各学生の強いところは他の学生に意見や知見を披露してもらえます。そして各学生の強みは異なりますから、互いに知見・素養を共有し合うことができますし、これにより一人では得ることのできないアイデアや発想に気付かされます。このアイデアや発想は、各学生が探求する研究の深化に繋がります。

——— 大学院での研究発表や就職など、今後についてもお聞かせください。

西  研究テーマは大学と大学院で共通しているので、学部で執筆した卒業論文で研究したことに加えて、さらに深く詳細な事例を研究し発表したいと考えています。
特にAI・ロボット法学に詳しい有識者の方々だけではなく、もっと多くの方にこの分野について知ってもらえるような論文を執筆し、日本国内でこれから起こる可能性のある完全自動運転車やAIの法的問題の議論活性化につながれば良いなと感じています。 また大学院修了後は研究を生かせる企業もしくは公務員として働くことで、将来的に安心してAIや自動運転車を利活用できる社会の法整備に貢献したいと考えています。
学部生、大学院生ともに1期生として培ったチャレンジ精神や新しいことに前向きに取り組む姿勢は自身の大きな成長につながりました。この経験を今後にも生かして学んでいきたいと思います。