国際情報学部
第1回iTLシンポジウム「人間の命は誰の手に委ねられるのか?」を開催しました
2022年07月08日
本シンポジウムは、「情報の法学」、「情報の仕組み」、「情報の国際文化(グローバル教養)」というiTLの根幹をなす各分野の学際的融合のあり方を分かりやすく学生に示すことを趣旨として開催されました
第1回目のテーマは、「人間の命は誰の手に委ねられるのか?‐自動運転技術に見る「命の選択」というジレンマについて‐」。
本学部教授 保坂俊司の司会・進行のもと、本学部教授・学部長 平野晋、同教授 松野良一、同准教授 矢島壮平、同准教授 吉田雅裕による各専門分野の視点からの講演とパネルディスカッションを行いました。
なお、本シンポジウムの内容は、本学部の紀要「国際情報学研究」に掲載予定です。
准教授 矢島壮平
准教授 矢島壮平。専門分野は哲学・倫理学です。
自動運転技術を語る上で切り離すことのできない「トローリー(トロッコ)問題」(*)。ここではいわゆる「道徳的ジレンマ」が問われますが、この文脈で語られる「義務論」と「功利主義」。哲学・倫理学の観点から、「道徳的ジレンマと直観」について、問題提起がありました。
(*)路面電車が制御不能となったが、その線路上には5人の作業員が作業をしており、このままではひかれて死んでしまう。ここで転轍機を切り替えれば5人を助けることができるが、切り替えた先には1人の作業員が作業をしており、この1人がひかれて死んでしまう。このような状況のときに、あなたはどのような判断を下すべきか。
教授 松野良一
教授 松野良一。専門分野はジャーナリズム論です。
松野はかつて、アジアで行われている生体腎移植の実態について調査、その成果を論文「アジアにおける日本人による腎移植ツアーの実態」や「臓器移植によって誰が助けられるべきか…?最大のドナー予備軍である若者が、理想とするレシピエントとは」等にまとめています。ハーバードメディカルスクール研究員時代に得た知見を踏まえて、医療現場での命の選択の実態や生命倫理的ジレンマ、性別・世代間の考え方の違い等について紹介がありました。
教授 平野晋
教授 平野晋。専門分野はアメリカ法、製造物責任法です。
平野はこれまで、総務省や内閣府の有識者会議、国外ではOECDのAI専門家会合(AIGO)に参画しており、AIの開発や利活用に関する議論に貢献し、今回のシンポジウムのテーマでもある自動運転の「トロッコ問題」についても、国際会議や法律雑誌にて取り上げてきました。技術の危険な利用による事故を抑制する法律家の視点から、技術とルールの両輪のあり方と現状について紹介がありました。
准教授 吉田雅裕
准教授 吉田雅裕。専門分野はIoT、AIです。
今回のシンポジウムで唯一、技術者視点の教員として登壇。前職での自動運転技術開発者としての経験を踏まえ、自動運転のプログラムがどのようなロジックで構築されているのかといった技術的な解説、技術者にも法律的・倫理的観点が求められている現状と技術者の苦悩が語られました。
講演の後には、教員間のパネルディスカッション。普段の授業を担当している教員同士が議論する様子は、学生にとっても刺激的な光景だったのではないでしょうか。フロアの学生からの質問も受け付けると多くの学生から挙手があり、学生の旺盛な知的好奇心を垣間見ることができました。
iTLでは、「『情報の仕組み』と『情報の法学』の融合」の理念のもと、下級年次から各専門分野の基礎理論を学際的に学びます。2年次後期からは各教員のゼミに所属し、各専門分野の内容をテーマにした研究を進めますが、その根底には、下級年次から積み上げてきた学際的な知識や視野があります。
昨今の発展著しい情報社会においては、今回のシンポジウムで取り扱ったテーマのように、単一の学問分野の視点では解決できない課題が多数私たちに突き付けられています。
iTLでは今後も、文系的思考・理系的思考の垣根を超え、複合的な視野で情報社会の諸課題を解決する人材の育成を目指し、教育活動を展開してまいります。