国際情報学部

国際情報学部_iTL_がペンシルベニア大学の学生とその指導教授からの訪問を受けました

2019年11月18日

2019年11月13日、ペンシルベニア大学の学生とその指導教授が国際情報学部_iTL_を訪問し、iTLの教員・学生と交流しました。

ペンシルベニア大学は、「UPenn」の愛称で知られる米国アイビーリーグ校で、iTLに来校したのは、ロボットやAIの技術と法・倫理・政策に関する学際的な日米比較を研究する学生とその指導をするEric A. Feldman教授です。
iTLからは、学部長・教授の平野晋をはじめとする7名の教員と有志の学生が意見交換会に参加しました。

意見交換会に先んじて、平野からペンシルベニア大学の学生に対し、中央大学とiTLの紹介、OECD理事会勧告として採択された「AI Principles」とこれに大きな影響を与えた総務省による「AI開発ガイドライン」や「AI利活用ガイドライン」、内閣府による「人間中心のAI社会原則」の紹介と解説を行いました。

その後の意見交換会では、平野、教授 石井夏生利、准教授 中村真利子からそれぞれの研究分野における事例紹介や問題提起があり(以下参照)、これらについて意見交換を行いました。

 


●平野からの事例紹介・問題提起
AIは医療分野においてもその活用が進み、AIによる病状分析も行われているが、AIの開発者等はその分析結果の採用の可否の最終判断は人間の医師が下すことを要求している。
しかし、人間の医師がAIの分析結果に反した診断を下し、これが結果として医療過誤に繋がった場合、その医師が賠償責任を負わされる可能性があるため、人間の医師はAIの分析結果に反する診断を下しにくい問題が発生し得る。
医療分野におけるAIの活用と医療過誤の責任からある程度免責される所謂「善きサマリア人法」に類するような法の制定について、今後議論の余地がある。

●石井からの事例紹介・問題提起
日本の大手就職支援サイトにおいて、AI技術を活用し、学生のサイト閲覧履歴から算出した内定辞退率を企業に販売していた問題が発生した。
これに対して、個人情報保護委員会では当該企業に対して是正勧告を出す等の対応に追われた。
今回の事案は「プロファイリング」の問題を提起するものであり、それを契機として、消費者から個人情報を取得する各企業は、個人情報の取り扱い方に関する適切な説明方法、これに対する消費者からの同意の取得方法について、改めて見直す必要が生じている。

●中村からの事例紹介・問題提起
刑事法の分野においてもアルゴリズムの活用が議論され始めている。
アルゴリズムを活用すれば、機械的に再犯の可能性を予測し、量刑や保釈の許否を決定することができるが、アルゴリズム生成に活用されるビッグデータの内容によっては、結果として性別や人種等によりこれらが左右される危険性も孕んでおり、ブラックボックス化しているといわれるAIの判断過程を検証することには困難が伴うことも考慮すると、刑事裁判におけるアルゴリズムの利用には慎重な議論が必要である。


 

これらの事例紹介・問題提起に対し、ペンシルベニア大学の学生から日本における各種法律やその解釈等の質疑があり、iTLの教員がこれに応えつつ、Eric A. Feldman教授も交えた議論が展開されました。

今回の訪問は、ペンシルベニア大学の学生にとっては、日本の研究者の考えを知る機会となりましたが、同時に、iTLの学生にとっては、今後自身の選択する専門分野の研究を深めていくことの意義を実感する好機となったはずです。

iTLでは、「情報の仕組み」と「情報の法学」に関する知識を修得し、その専門性をもって国際舞台で活躍することを目指す皆様のご入学をお待ちしています。