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西川 可穂子ゼミ 見学調査報告

調査日:2015年9月15日
参加学生数:3年生6名
調査先:中部電力 浜岡原子力発電所、御前崎風力発電所、メガソーラー清水、東清水変電

調査目的

日本はいま電源構成比の転換期を迎えている。経済産業省によると2030年の電源構成比は、現在7-8割を担っている火力発電を5割程度に抑え、現在それぞれ1割前後である原子力発電および再生可能エネルギーをそれぞれ2割強とすることを目標にするとのことである。そこで、今後重要となる原子力発電および再生エネルギー(風力・太陽光発電)について見学調査を行った。

調査結果

中部電力株式会社のご協力により、浜岡原子力発電所構内の見学に加え、御前崎風力発電所、メガソーラーしみず、東清水変電所の現場を訪問した。
再生エネルギーについては、基本的なコンセプトや利点などを前もって学習して見学に臨んだ。見学調査で訪れたメガソーラーしみずでは、一面に並んだソーラーパネルが壮観であった。事前学習では、太陽光発電は再生エネルギーの中では最も実用的であるとの印象であったが、実際の発電現場では様々な問題があるとの話を伺った。質の良い発電方法であるためには安定的に発電できることが要件の一つであるが、太陽光発電は、気象条件に発電量が大きく左右される点で良質とは言い難いようだ。雲が太陽の前を横切るだけで発電量が大きく低下する事や、日中しか発電できない上に、太陽が発電パネルに当たる角度によって発電効率が変わる事例など、実際の現場での諸問題について学んだ。
非常時にも電力を安定して供給するためには、東日本と西日本の間で電力を融通することが必要となる場合もある。東清水変電所は、東日本50Hz、西日本60Hzと周波数の異なる地域の境界に位置する。東日本大震災の際、首都圏の電力不足を解消するため、60Hz地域からの電力供給を要請された当時の話は興味深かった。60Hz地域から50Hz地域に電力を供給するため、設備能力のぎりぎりまで利用して周波数変換し送電したとのことであった。また、変電所では常時電力供給を監視しているとのことであった。このような努力があっての電力の安定供給であると改めて感じた。
浜岡原子力発電所は稼働していない状態であったが、近い将来の稼働を目指して安全対策のための工事を行っているところであり、その内容などについて講義を受けた後、発電所内の見学を行った。東京電力福島第一原子力発電所で起きた事故の教訓から、電源喪失に対する対策が二重、三重にも施されており、参加した学生からは「これほどの対策が必要なのか疑問なほどに高度な対策が施されているのに驚いた。」といった感想も出たほどである。原子力発電の魅力は、大量の発電を24時間安定的してできることで、この点が太陽光発電とは大きく異なる点である。実際に見学する機会を得たお陰で、ニュースでは報道されない詳細を知る事ができた。
その後、御前崎風力発電所を見学したが、残念ながら風が弱く発電施設の羽が回っていなかった。風力も発電の選択肢の一つとはなり得るものの、自然利用エネルギーに共通して言えることであるが、地域や気象状況が発電に大きく影響することは、メイン電源として期待することには現状では不安があるという印象が残った。

参加した学生の感想

特に私が考えされられたのはメガソーラーしみずと浜岡原子力発電所である。
メガソーラーしみずでは、日本でも最大級の敷地や太陽光パネルを見学し、静岡県は日本の中でも日照時間が非常に長く太陽光発電に適していること、またソーラーパネルの設置角度が非常に重要であることを学んだ。私はこれまで、太陽光発電はどこにあっても良いと思っていたし、ましてやパネルの設置角度によって発電量が大きく異なるとは知らなかったのでとても勉強になった。
浜岡原子力発電所では、再稼働に向け様々な準備をしていることを学んだ。特に、東日本大震災を受けて、さらに危機管理の意識が高まっていることが分かった。震災では想定外の高さの津波が押し寄せた事実から、22メートルまで防波堤を高くしているとのことであった。また、発電所に海水が浸水した時の対処も知ることができ、地域住民に対して安全面における理解を広めるための広報活動を行っていることも分かった。
効率性やコスト面などを考慮しながら事業を行う意識、常に最悪のケースを予測しながら対策を立てる慎重さなどを間近で感じ取れたことは私にとってとても大きかったと思う。

商学部経営学科 3年 男性

四か所の施設を見学して特に印象的だったのが、メガソーラーしみずと浜岡原子力発電所であった。メガソーラーしみずでは、太陽光発電を実際に見学した。わたしは今まで太陽光発電は極わずかな発電量しかないであろうと思っていたが、メガソーラーしみずの実際に発電量は1日に約8000kW、年間で約840万kWであり、これは一般家庭230世帯分の年間電力消費に値するもので、意外にも発電量が大きく、規模の大きさがうかがえた。また、太陽の向きに合わせてパネルの角度を変えて、より太陽が正面からあたるように工夫されていて、再生エネルギー普及に向け企業努力は欠かせないものだということを知った。
浜岡原子力発電所では、現在、発電は停止しているものの、再稼働したときのために様々な安全対策がなされていた。例えば、再び大震災が起こった時に、津波による被害の拡大を防ぐために、大きな堤防が築かれ、原子炉建屋内も厳重に管理されており、入り口の扉も爆発にも耐えられる厚さとされるなど、細部にわたって安全対策がなされていた。これらを見学して、原発は危険だという先入観が覆された。

商学部金融学科 3年 男性