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木立 真直ゼミ 見学調査報告書

テーマ  :青果物卸売企業の新たな市場開拓戦略
調査日  :4月9日(月)
参加学生数:3年生19名 院生1名
訪問先  :東京青果株式会社
ご対応者 :東京青果 開発第二部 野村泰生様 清水 努様

調査の趣旨:

 青果物流通における卸売業者が果たす機能や今後の戦略について、日本最大の青果物卸売会社である東京青果㈱のケースから学ぶ。

調査結果:

 今回の訪問では、東京青果・開発第二部の野村様、清水様から、最初に大田市場を案内していただき、大田市場の内部の構造から、セリの仕組み、1日の青果物流通の規模などをお話ししていただいたのち、会議室にて、開発第二部の具体的な業務や戦略に関してお話を伺った。

 初めのご説明で、大田市場は1日の青果物の取扱量は約3600トンであり、業者数は卸売業者が4社、仲卸売業者が167社入っていると伺い、規模の大きさに驚かされた。施設を案内していただいた際、大田市場では、卸売業者が東京青果、東京荏原青果、東京神田青果市場、東京東梅食品があり、お互いに切磋琢磨し成長し合っているとのことであった。

 実際に施設を案内していただいた際に興味深かったのは、コールドチェーン機能を持つロジスティクスセンターをみせていただいたことである。安心、安全を保証するために鮮度や品質管理は需要者側から厳しくチェックされるが、そうした声に答えられるサービス提供のために5年ほど前に建設されたという。市場の安心、安全への関心が社会的に高まるなかで、食の安全・安心を強化する取り組みの一環として位置づけられている。

 鮮度訴求と品質管理を意識した取り組みとして、「いまは市場を介さず直接に青果を届けている部分もあるが、そこには課題がまだある」とのことであった。大量の青果物や鮮魚を効率的に扱うゆえで追求していかなければいけない課題がたくさんあり、生鮮食品流通に関わる方々の苦労を感じた。

 大田市場を案内していただいている最中、セリについての興味深いお話もあった。セリというと、購入者側が値段を提示し、購入を競り合う姿が想像されるが、実際は伝統的なセリといえる取引は1割に過ぎず、相対取引が9割に達している。相対取引とは、売り手と買い手が、1対1で直接売買内容について交渉し決定する取引方法のことである。私たちは、いまだ伝統的なセリが行われていると予想していたため、セリに対するイメージが180度変わった。セリ取引から相対取引に変化した経緯については、スーパーやコンビニエンスストアなどの小売業者の開店時間に関係があるという。現在、通常のスーパーなどでは午前10時から営業が始まることが多く、総菜やカット野菜の準備も含めて、従来のセリ売りだと、スーパー側の準備が時間的に厳しいため、相対取引へ移行していったのである。

 現在、国産青果物流通の85%は卸売市場を通じた取引になっている。生産者との直接行う取引が増えていると主張する人もいるが、実際のところは2割にも満たず、今後も市場を使用した流通は続いていくのではないかと感じた。

 開発第二部において、野村様、清水様は主に新規顧客開拓を担当されている。現在、全体の7割が大手スーパーとの取引で占められ、今年は約100社に営業を展開し商品を供給している。業務用では、主に食品メーカー、ファミリーレストラン、居酒屋などに営業をかけており、年間50~60社を開拓しており、売上の約5%に拡大している。青果物卸のトップ企業であっても、地道な営業努力の結果として売上を拡大しているのだと学び、興味深かった。

 営業に力を入れていることの間接的なメリットについてのご説明があった。1つに、直接営業を行うことで、市場の卸売業務だけをしていては気づかない、末端のニーズを確かめることができる点であり、2つに、これを踏まえて、どのような仕入れをするべきかという調達戦略に活かすことができる点を指摘された。これは、私たちが大学でのマネジメントやマーケティングの授業で学んだ、末端のニーズを把握し行動するという内容に沿っていると感じ、非常に印象深かった。また、市場取引においては、価格、数量、規格、期間が大切であり、その調整の責任を卸売会社が負っている。卸売会社が様々な情報を考慮して売買を行う上でも、顧客ニーズを直接把握できる営業という仕事が非常に重要な役割を担っているのだと感じた。

 営業で様々な企業と交渉するなかで、今特に注目をしているのがコンビニエンスストアであるとのことである。近年、即食のニーズの強まりより消費者のコンビニエンスストアの利用度が高まっており、これに伴ってコンビニエンスストアの店舗数と売上高が増えてきているからであるという。コンビニエンスストアでは、消費者のサラダ需要が増加しサラダの品揃えと取扱数が増えていることに加え、最近では、青果物自体を取り扱かう店舗も多くなってきている。そのため、コンビニエンスストアにおける青果物全体の需要が益々増加している。

 質疑応答の時間では、生産者の減少に関する次のような質問をさせていただいた。流通経路全体から見ると、生産者がいないと卸売市場や青果市場は成立しないと思うが、その生産者側の問題として、農業従事者が減少傾向で高齢化も進んでいる。そのような状況の中で業界トップである東京青果はこのような問題に対してどのように考えているのか、である。この質問に対しては、現在、出荷者はJAが主だが、今後は様々な出荷先を新規開拓していくことで、多様な生産者を支援する懐の深い会社を目指していくとのご回答をいただいた。

 この企業訪問では、卸売市場を実際に視察させていただいた上で、東京青果が今、力を入れている営業の具体的な取り組みのご説明に加え、学生からの様々な質問に丁寧にお答えいただいた。百聞は一見に如かず、ということわざ通り、実際に見て学ぶことで、市場の様子だけでなく、卸売企業の様々な戦略を学ぶことができた。ゼミが本格的に始まる前に、このように実際に市場や企業を訪問できる機会は大変貴重なものになった。これらの経験を、これからのゼミをはじめとする、流通・マーケティングの学習に役立てていきたい。

 今回は、ご多用の中、私たちのためにお時間を割いてくださった野村様と清水様に深く御礼申し上げます。ありがとうございました。

(文責 安部はるき、田中翔、常盤真菜、廣拓磨、赤野雅章、山口柊平)